第128話 光の暴力Ⅱ③
「あっ? ‥‥お兄sザザッ‥‥」
ラポルトからの音声に一瞬だけノイズが混じった。
「お待たせ! 光莉ちゃん! で、丹那?」
「はい。もう始まってます。遅かったですね」
「うるせ~よ?」
声がした。大きくて、よく通る男性の声が。この声は。
錦ヶ浦「遅参ご容赦! 殿下!」
殿下「本当に遅かったな?」
錦ヶ浦「申し訳ございません!」
やっぱり、錦ヶ浦さんだ。他の隊長たちもいる。
「ああちょっと、敵のDMTを止めてたのさ。海に落としてやったから、ここに来るまで時間が作れたろう」
これは後で聞いた話。団長さん達は通信が出来ない中、5機だけで連携して敵を止めていたそうだ。レーダーから機影が消えたのは敵DMTの電子迷彩の渦中で戦ってたから。
敵の目的は、今迫りくる本命2発目の隕石を確実に当てること。1隻目の艦から射出したDMTで攪乱すること。
だから隊長たちは、皇太子殿下が先に隕石に対処するだろうと読んで、DMTの侵攻を遅らせる「タイミングずらし」の役を買って出ていた、と。
そして、それは以心伝心で皇太子殿下もそう予想していた、と。
「丹那。認証コードを咲見くんへ」
「はっ! 既に送っております。隊長各機、セプタシオン=ラポルトと連結してください」
え? また? 今度は何だ!?
丹那「咲見くん。隊長機が間に合ったから、ラポルト同様彼らのエンジンも君の主要兵装にするよ」
「へ?」
大洞台「君は動かなくていい。俺らが咲見機のコーヌステレスコープに接続するだけだから」
錦ヶ浦「ラポルトのエンジン、プラス、セプタシオン5機! 全部咲見くんの能力でブーストすんだよっ! スゲーだろ!?」
丹那 「騎士団機の各エンジン、出力132パーセント!」
錦ヶ浦「うぉわっ! いきなりコレかよ。お前ら‥‥こんなに回したことある?」
大洞台「あるワケないですよ!」
岩雀 「無事家に帰れっかな‥‥ヨメが‥‥」
般若院「ヒュ~♪ ヤバいっスね」
魚見崎「我の死地はここと定まった」
大洞台「魚見崎さん、また団長に怒られますよ?」
丹那 「あの、まだ上がります。150は超えそうです‥‥」
錦ヶ浦「ふ~ん。‥‥まだ上がるんだってさ。お前ら。大丈夫かな?」
インカムには騎士団の音声が入ってきていた。たぶん丹那さんがアノ・テリアに入れたんだ。
そしてラポルト側の声も聞こえてくる。
子恋「見てなよ暖斗くん。ラポルトが誇る超絶最新鋭装備のお披露目だ。重力砲身を用いての超収束砲! 最初は糸のように細いビームだけど、エネルギー密度は通常砲の軽く10倍だよ。うん。超重力のトンネルで光すら圧縮する技術。君の、出鱈目なマジカルカレントあってこその芸当だ」
渚 「でもその砲身も一回で熔けそうなんだけど」
子恋「‥‥そこはその‥‥。壊れたら整備班の方々に‥‥‥‥」
七道「子恋! うおぉい!」
子恋「うん。差し入れくらいは、させてもらうよ。ごめんね七道さん」
七道「結局ケツ持つのは整備なんだよいつも!」
桃山「いつもありがとね七道さん‥‥まずは敵の排除を‥‥だもんね?」
多賀「‥‥‥‥。師匠。今回は私たちがやるワケじゃないし」
網代「そうそう。港湾のドッグだからね~。あ~しはダルくない」
さっきから何か色んな人の声が聞こえている。
この期に及んでまだ「奥の手」を持っている子恋さんに呆れもする。
紅葉ヶ丘「じゃ、頃合いだ。凸って来る敵性戦艦の画像をモニターに出す。最大望遠プラス画像解析。対象長測定器起動。逢初女史!」
愛依「はいっ」
その画像は、僕のDMTにも送られてきた。暗い色の戦艦だ。大気圏突入で、所々が赤く蓄熱してる。
わかってる。みんなわざと僕に対して語りかけていた。部活みたいな軽いノリだったり。兄弟みたいな親近感で。
マジカルカレント最大出力への下準備。
だから、今はスッキリした気持ちで、リラックスが出来ていた。
その上で。
僕は現実を見る。
事態は重かったんだ。この街目がけて、戦艦が宇宙から襲いかかってきている。
「‥‥まあ、あれだ。‥‥みんなわかってんだよ。暖斗くんが本気だせば、何とかなるんだろうってな。何とかならないなら、ラポルトが体当たりで軌道曲げりゃいいんだし、きっとティムールも動く」
七道さんの言う通りだけど。
僕は。
愛依の声が脳髄に響いてくる。
「暖斗くんの‥‥優しいあなたの‥‥戦う理由の原点‥‥‥‥それは」
「誰の涙も見たくない、という気持ち」
「それを壊してくる敵への、理不尽な暴力への、怒り」
「ね? 暖斗くん」
ああ、そうだよ。愛依。
この街を守るってことに関して。
みんなを守りたいってことに関して。
僕は。
どうしても。
どうしても!
自分の拳で!
ぶん殴りたい!!
人を傷つけようとする悪意に対して。
俺は!
一歩たりとも許容しない!!
「うおォ!」
腹の底が、そして身体が。一気に熱くなった。
まほろ市民病院の時も思ったけど。
ふざけるなよ‥‥!!
こんなものを、俺らの街に落とそうってか? そんなこと。
誰が、させるんだよ?
誰が、許すんだよっ!?
やれるんならやってみろ!! このクソ野郎がッ!!!!
紅葉ヶ丘「エンジン出力補正。現在156.8パーセント‥‥。暖斗くん、わかりやすすぎだよ‥‥」
子恋「また上がったね」
渚 「ラポルトのメインエンジン後部から風が出てるわ‥‥‥‥」
紅葉ヶ丘「嘘だ‥‥!? そんな機構無いよ‥‥」
子恋「移動。面舵。みなと市の市街に万一被害が出ないようにね」
泉 「了解。面舵。はたやま湾中央へ微速前進」
逢初「‥‥‥‥暖斗くん。あなたの属性は『優しさ』だわ、きっと。でも、他人に危害を加えようとする悪意、理不尽に触れた時、あなたは覚醒する。してくれる。ね? みんな?」
その後、インカムの奥で小さく「せ~~~のっ!」って聞こえて。
逢初「‥‥マジカルカレント後遺症候群の回復については、私のラクトンで知見を得た。でも攻撃面については‥‥? マジカルカレント効果の増大の、その因子は‥‥」
幾重にも重なった、女の子の声たち。
女子全員「「がんばって!!」」
女子全員「「助けて! 私たちを、この街を救って!」」
女子全員「「暖斗くん!」」
女子全員「「暖斗くんっ!!」」
「うおおおおオオォォ!!!!」
僕は「右手」を握りしめる。
そして。
この旅で、生まれてはじめて、マジカルカレントで何か‥‥「手ごたえ」を感じた。
僕の脳波、いや思念ってほうが感覚的に正しい。
それがラポルトのエンジンにまとわりついて、光を帯びていく触感‥‥!
渚 「旭光、続いて旭雷」
紅葉ヶ丘「ひっ! ぴいぃっ! 動脈が光ってるぅ! ‥‥プラズマ?」
子恋「総員対ショック!」
でも、もう、僕には関係無かった。
ただ、俺の怒りを、みんなの思いを。
ぶつけるだけだ!!
「‥‥‥‥最終計算、終わりました。誤差修正を」
少し疲れたような、愛依の透き通った声がした。紅葉ヶ丘さんのアナウンスで、主砲の発射角度が微調整される。
「この艦を。みんなを。僕が守るんだ!!」
「‥‥‥‥主砲、撃て!」
ラポルトから放たれた、幾条もの青白い光が、視界の雲を細く切り裂いた。
麻妃の「暖斗くんはもう、雄叫び、躊躇ったりしないんだゼ☆」って声が。
遠くで聞こえた。
※「この艦を。みんなを。僕が守るんだ!!」
↑最初期のあらすじにあった、暖斗くんのセリフです。(現在は変更してますが)
あらすじと第一話の「雄叫び」の、伏線回収ですね。




