第128話 光の暴力Ⅱ①
「余の権限でエンジンのリミッターを解除する。好きに暴れろ。余が許可する」
はい?
皇太子殿下、丹那さん、ラポルト勢。
敵の電磁パルス攻撃で、このメンバーでしかコンタクトが取れない状況下で、僕の脳の処理速度の遥か上のほうで事態が動いていく。
「咲見くん。皇帝警護騎士団のDMT「セプタシオン」には、その全てに『御機』と言われるエンジンが搭載されてるのは知ってるね?」
丹那さんだ。
「はい。僕の機体も実はそうだと‥‥」
「うん。それでね。皇太子殿下の御聖断を頂いたから、マジカルカレントの上限制御が今現在から無くなるんだ。『御機』を建造したのって、他ならぬ皇太子殿下ご自身だからね」
‥‥‥‥はいぃ?
「『青天井システム』、真の解放だ‥‥! 余のエンジンが、果してどれだけ回るのか?」
後で三人娘に聞くことになる。紘国はそもそも技術立国。テクノロジーでのし上がった国。
この国を興した初代皇帝以来、皇帝一族はみんなエンジニアなんだって。
特に現皇太子殿下は、「御機シリーズ」と言われる超々高性能の重力子エンジンを生み出す天才技術者であらせられる、と。
なんかこの国が「ナカナカな技術革新をちょくちょくやる。まわりから戦争ふっかけられるくらい、ぶっ飛んだヤツを」。
その理由がよく解った気がしたよ。
「まあ『御機』って。『そのDMTで敵に遅れを取った時には責任取って自爆必須』ってルールがちょいキツいんだけどね‥‥。僕は操縦者じゃ無いから関係無いけど」
うん? 今、誰かの呟きが聞こえた気がするけど?
‥‥‥‥もはや、僕の脳が理解を拒んだみたいだ。
***
急遽、カタフニアの代わりで、ラポルトを移動砲台として使うことになった。
自機とつなげて、僕のマジカルカレントでエンジンを高速域に持って行く。
UO-001とラポルトのエンジン、その両方をだよ。
動脈と呼ばれる懸架兼エネルギーケーブルは、カタフニアのそれより短かった。僕は、横づけしたラポルトの左後方、エンジン部近くに移動する。
マジカルカレントでラポルトの重力子エンジンまで増幅するなら、このくらいの距離まで近づかないと。
「紅葉ヶ丘学生。エネルギー発生状況確認!」
「異常無し。UO-001、セプタシオン=ラポルトの膨隆から若干の吹雪」
艦橋から聞こえるいつものメンバーのいつもの会話。
「そもそも膨隆からの風は、エンジン出力の余剰を背部空間に逃がすためのものだものね。でも吹雪は良くないわ」
「吹雪って何かしら?」
あ、泉さんの声だ。ちょっと珍しい。
「風と似たものよ。でも不安定であまり良くない風のことなの」
「岸尾さん。頼めるかな?」
「おっけー。今麻妃ちゃん号のKRMが行くよ。行きつつ出力の微調整は済ませちゃうゼ☆!」
「同時だと。ふむ、いいウデだ。丹那?」
「はッ!」
「ウルツサハリ=オッチギンの、あの少年のセプタシオンは随身のKRMに任せよう。‥‥認証をくれ」
「御意! UO―001とウルツサハリ=オッチギンのものをお送り致します」
「よし、咲見くん。今殿下が『御機』のリミッターを解除される。特にセプタシオン=ラポルトはエンジンの吹き上がりに注意してくれ。君のマジカルカレントだと、一体何が起こるかわからん」
「わ、わかりました」
「ウチが見るからぬっくんは安心して~」
「オッケー麻妃」
「殿下。『あれ』の使用の御許可、御聖断を賜りたいのたいのですが‥‥」
また子恋さんが皇太子殿下に直で話してる。しかも「あれ」って? まだ何かあんの?
「良きに計らえ。そなたら中学生を戦艦に乗せた時点で、もうそれはそなたらの艦だ。‥‥‥‥学生の時分でありながら、過酷な旅をさせた。誠に相済まなかった」
「身に余るお言葉でございます殿下。ですが元よりUO計画は私めの籌作。他のメンバーにこそ、そのご厚情をおかけいただきたく」
「そうであったな。ケラメウスの少年含め、ラポルトの一同よ。余の不徳ゆえ大切な夏季休暇を使わせてしまい、危険な目にもあわせた。その中でそなたらは旅をやり遂げた。まこと大義であった」
今まで「感極まった」風だった子恋さんの声音が、涙声に変わった。
「で、殿下、い‥‥‥‥今‥‥何と?」
「そなたたちの艦の名であろう。この『ラポルト』は。そう、呼んでいるのであろう」
――なんか、テンションが上がらないネーミングだから――
――第二回女子会(議)だ! みんなで艦名を考えよう――
――咲見くん。この艦唯一の男子だけど、何か意見ありますか? ――
あの、食堂での景色が蘇る。ついに、「ラポルト」という名前は皇太子殿下までが認知、承認するまでに至った‥‥‥‥!
「ラポルト主砲露出、展開。設定は収束砲」
現実に戻る。殿下の許可をもらった子恋さんが、叫んだ。
「『あれ』をやる。収束率をMAXに! 暖斗くんのマジカレ次第で砲身溶けるかもだけど、やるよ!」
「じゃ、冷却システムも極大でないと。今回は上空で冷やす時間が無いよ」
「ラポルトエンジンも今回は高回転になるわ。余剰を冷却に回せるはずよ」
「やってみる」
「突入軌道、計算終わってます。位置と速度も」
「隠蔽の形跡あった。捉えたよ。さすが逢初さん」
「うんっ。10回検算したからねっ」
「10回‥‥‥‥さすがギフト」
「うん、予定通り。順調だ。全員焦らずやろう」
「「はい!」」
僕が浮遊するそのすぐ後ろ、動脈と呼ばれたエネルギーケーブルをたどると、戦艦ラポルトの巨大な腹が見えた。
カタフニアとサイズ感は近いんだけど、厚みが全然違う‥‥!
上部甲板から収納してた主砲を出して、虚空に向けて照準を合わせている。
「しかし本当に、本当にラポルトを動かし慣れておるのだな。この少女たちが」
「御意ッ!」
「現時点、我が紘国軍の誰よりも」
「‥‥はい‥‥恐悦至極にございます。殿下!」
涙の気配が消えた子恋さんの、元気な声が響いた。




