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第126話 領(し)らす者②






「噴煙のせいで鬱屈しておったのだ。やはり青空はいいな」



 みなと市の沖合いに浮かぶ金銀の装飾のド派手なDMT、皇帝機ヘクタシオン。


 その隔壁操縦席(ヒステリコス)からこんな声が聞こえてきた。


「この竹取山のせいで、帝都はずっと曇天のままだ。いや、爽快だ」



 えっ? これ誰に話しかけてるの? まさか僕? 皇太子殿下が?

 えっと‥‥相づちとかしたほうがいいのかな? シカトしちゃまずいよね‥‥?


 だけど、「帝都が曇天」ってのはホントだそうだね。

 僕らの「ふれあい体験乗艦」が始まってすぐに竹取山が噴火した。噴火シミュは防災訓練でさんざん教わったから知ってる。

 竹取山火口から舞い上がった火山灰は、偏西風に乗って帝都を直撃するんだ。

 逆に山から西南西方向にあるこのみなと市は、よっぽど風向きがおかしくならないと、灰はこちらには降らない。


 昔の記録だと、帝都で灰が10センチ積もった、なんて話もある。


 僕たちは「ふれあい乗艦」でガンジス島という南の島を旅していた。

 だから、知らなかった。この国の首都圏がそんなことになってるなんて。

 この「紘国」という国は、戦争が終わってもまだ色々問題山積みなんだよ。



「問題だな。錦ヶ浦」

「はッ!」


 そうだよね。噴火の後処理とか大変だよね? と思ってたら、違った。


「衛星軌道にいた敵性艦艇は、2隻」


 ええ!?


 みなと軍港からの唐突な情報だった。そうか。衛星軌道の敵艦だって当然隠蔽(コンシール)は使うか。

 そしてその艦もこのみなと市を狙っている。


「ティムール、残存エネルギーはどうか?」

「殿下、先ほどの砲撃で砲身が蓄熱しております。再射撃にはまだ」

「殿下、1隻目が殿下を誘引させる役目。2隻目が本命の可能性が」

「そうだな錦ヶ浦。だとすると余は、まんまとおびき出されたというところか」

「恐れながら」


 何かスゴイ会話が全体回線に入ってくる。「ティムール」は皇帝の居ます船。紘国総軍の旗艦だ。それがこの上の雲まで来てるなんて、びっくりなんだけど。

 残念ながら驚いているヒマはないよ。


 もう1隻「隕石(メテオリティス)」が来る!

 あの巨大揚陸艦の、衛星軌道からの降下突撃!



「侵入角出ました。みなと市上空です!」


「‥‥‥‥なんだと?」



 皇太子殿下の、怒気をはらんだ低い声だった。僕も状況を理解する。


 通常の戦争は、敵を殺して降伏させたら勝ちだ。でも絶対じゃないけど「これはやっちゃいけない」ってルールがある。


 それはあからさまに民間人を狙うこと。戦争は軍服を着た軍人同士が行うもの、っていう不文律があるはず。‥‥まあ、負けそうになったほうの国がゲリラ戦に移行したり、人間を盾に使ったり。結局ルール無用になりがちだけどさ。


 一隻目の揚陸艦はみなと市の沖合いに落としてきた。まあ常識の範囲だ。

 けど、二隻目のこの攻撃は異常だった。揚陸艦をわざわざ人口密集地のみなと市に狙いをつけて落としてくるってことは「そこに住んでる人たちは死んでも構わない。むしろ故意に狙った」って言ってるのと同義だ。


「咲見君。カタフニアの砲撃はダメだよな? もう副砲まで使っちまった」


 錦ヶ浦さんは「一応確認な?」と言いながら話しかけてくる。


「あ、はい。ホントは上空に上げて砲門冷却したいんですけど、僕を吊り下げてるから出来てなくて」


 僕の機体は、飛行ユニット代わりのカタフニアから、2本のエネルギーケーブルに吊るされたままだ。


「俺らも駄目、ティムールも駄目」


 錦ヶ浦さんが独り言つ。僕が飛行ユニットの補助無しに、この海域上空に浮遊できていれば、もっと早くカタフニアを上空で冷却することもできたのに。


「是非も無し。ティムール。航路に割り込んで敵揚陸艦を止めよ」

「お待ちください。殿下! 栄えある紘国旗艦に損傷が」

「ひかえよッ! 錦ヶ浦!」

「はッ!」


 うおお。皇太子殿下が怒ってる‥‥?


「戦艦など、壊れたらまた直せば良い。若しこのみなと市に人的被害が出てみよ。『また直せば良い』と言えるか貴様!」


「しかしそれでは、敵の思うつぼです」

「だが余の目の前で、国内に居る紘国臣民が犠牲になるなど、許容はできぬぞ?」


 すごい現場に来てしまった。敵の隕石(メテオリティス)もヤバい。

 皇太子殿下や紘国旗艦、ティムールに何かあってもまずい。

 かと言って‥‥。



「それならば。我々皇帝警護騎士団が突撃をします。どうかお下知を」

「死ぬ気か? 錦ヶ浦?」



 錦ヶ浦さん。決死の突撃?



 でも「ふれあい体験乗艦」の講習で習った。衛星軌道からの揚陸艦突撃には2種類ある。


 1個はさっき落ちてきた艦みたいな「戦術突撃」。地表に降りる時にブレーキをかけて空中停止。そのあとBOTとかDMTを放出して攻撃するタイプ。

 ガンジス島戦役でもラポルトがやったよね。ラポルトのヤツは落下スピードが異次元なんだけど。


 で、もう1個がヤバい。「殲滅突撃」だ。これから来る揚陸艦はブレーキをかけずにみなと市に落ちてくる。そしてたぶん、大量の火薬を積んでいる。

 嗚呼。さっき言った、「最低限の戦争のルール」なんか無視した攻撃‥‥!

 特攻。無人艦が地面に突撃(アサルト)して爆発するヤツ。


 敵艦の目標がみなと市の中心、って言ってたから、嫌な予感がしてたんだ。



「ティムールが航路を塞げば事足りる」

「その役目、騎士団に。どうか!」


 皇太子殿下と錦ヶ浦さんが言い合いになりそうなところで。



「ティムールが検出、DMT数機! 大きいです!」

「えっ‥‥‥‥!?」





 騎士団のKRMからの通信だった。





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