第二部 第42話 浮上②
昨日はベッドに入ったところから記憶が無いけど、そんなことは大した問題ではないよね?
ラポルトのふかふかベッドでぐっすり眠った次の日、私は早速「我が戦場」に立っていた。
え? 魔物が出た? 違うよ?
私が戦う場所とは、ラポルトの厨房なのです!!
「まあ。旅先でこんな手の込んだ暖かいものがいただけるとは」
「姫様。我が国の一流ホテルでも、このような設備は」
「しかもこの建造物、空を飛ぶんですよね? ずいぶん大掛かりな魔法ですね?」
「しかしこの船は大きすぎます。いくらなんでも。‥‥これを風魔法で浮かすのなら、その魔法力は攻撃に割くのが良案では?」
「姫様が、カミヒラマの戦艦と手を結びたいとおっしゃった時には、父王様以下、みんな困惑したものでしたが」
「しかも、空に浮くなど」
「まさか、ここまで世離れした船だとは‥‥‥‥」
コーラ姫に随行する人たちも、全員女子だった。年齢はけっこうバラバラだよ。その人たちを姫様がたしなめる。
「この戦艦の凄さは、いずれ私たちの目にもふれます。それよりも、せっかくのお食事を、今は感謝を込めていただきましょう」
「「はい。姫様」」
食堂にはコーラ姫とお付きの御一行が来てたよ。彼女たちに出したのは、山菜のスープ。
「お、おいしいです」
「ありがとうございます」
そのお付きの人たちにも、ちゃんとお礼を言われた。喜んでもらえてよかった。
実は、みんなで夜明け前出発でひと狩り言って来たんだよ。
参加者は。
◇狩猟担当 仲谷(R)、と浜、桃山、折越、初島、来宮、の各隊員。
仲谷「いいですかみなさん! 私が得物を見分けます。魔物は退治して魔石、動物はハントしてください!」
来宮「うおっしやるっス!」
折越「朝からテンション高くないぃぃ~~? ちなみもっとラポルトのベッドで寝てたかったぁ~~」
浜 「も、文句ばっかり。コーラ姫におもてなしするのに」
桃山「そうよ折越さんがんばろっ! ラポルトのベッドは逃げないからね? 今日からずっと使えるんだし」
折越「ねぇむぅういぃい~~。まだ空が暗ぁいぃ~~」
初島「七道さんコッチの班のほうが良かったんじゃない?」
◇採取担当 姫の沢(R)、と岸尾(副R)、泉、多賀、網代、七道、の各隊員。
姫の沢「こんな朝早くからごめんね~~みんな」
岸尾「ひひひ。ウチは一向にかまわんよ。異世界暮らしで早起きデフォだし」
七道「どうせ私らDMTも無いし、ヒマこいてっから」
多賀「‥‥‥‥。朝の気分は気持ちいい」
網代「だね~~。まああのお姫様とアマリアのコーラさんの関係は、追々わかるってことで~~」
姫の沢「じゃ、いいかな? 近場の山に良さげな山菜あるから、取るのを手伝ってもらうよ? 種類に迷ったら、取りあえず私に訊いて」
泉 「姫の沢さん張り切ってるわね~~。まあ商人的な立場で言えば、あのコーラ姫様を歓待して好感度を上げるのは、得こそあれ損の無いことだわ」
岸尾「ひひひ」
ちなみに。附属中三人娘は艦の制御で多忙。愛依さんも医務室。
ぬっくん? ぬっくんはゆっくり寝かせてあげてよ? うふん。
異世界に来て以来、ずっと春さんと旅してたからね。異世界サバイバル女子の春さんから、食べられる魔物、非魔物(つまり動物)、野山の山野草はみっちり教わってる。
このダンジョンへ来る道すがらでも「あっ。コレ食べれるヤツ」、「あの枝の木の実採れそう」とかってなってるもん。
で、皆様のご協力で鶏肉と山菜、薬味をゲットした私は、即興で野菜スープを作ったのでした。ラポルト乗れなかったけど、食事担当として乗艦するつもりで本気の花嫁修業したからね。‥‥今‥‥その成果が花開くよ‥‥‥‥。
お味は?
「‥‥‥‥大変おいしゅうございます。姫の沢さんを王宮のコックとして連れて帰りたいくらいです」
コーラ姫にっこり。
「姫の沢さん! これおいしい!」
「あ~~。早起きのダルい身体にしみるわ~~」
「ひひひ。なんかひめっちの活躍のために、ウチら働かされた気が~」
「そんなこと言うなよ? 麻妃。‥‥でもさ、‥‥作ったのとか味付けしたのとかは、ひめちゃんひとりでやったんでしょ?」
「‥‥‥‥うん。そうだよ」
「すごいよ! すごくおいしいよ! ひめちゃん!!」
おわかりいただけただろうか? 皆さま。
今のセリフは、ぬっくんです。
そう。私の料理に口をつけて、このコメントをくれたのは、ぬっくんです。
大切なことなので2回言いました。
大切なことなので、2回言いました。
のそっと起きてきて、今食堂に入って来ていたのです。
「あ、味付けは私だけど、早朝クエスト受けてくれた、みんなの手柄だよぅ」
「確かにそうだけど、でもすごいよ。塩梅って言うの? ちょうどこれくらいがイイ感じ、っていう絶妙の塩加減、味加減なんだよ。すごいよひめちゃん!」
「‥‥‥‥でも‥‥でもやっぱりこれはみんなの‥‥」
予想外すぎるぬっくんの誉め言葉に、私は棒立ちになる。照れ隠しでついつい卑屈になっちゃうよ。あんまりこういうのもよくないよね?
「わかってるよ。コーラ姫のために二班に分かれてやったんだってね。でも味付けはひめちゃんの腕でしょ?」
ああ。
自分でわかる。このセリフを言った私の声は。
ありえないくらいに、震えていた。
※よかったねひめちゃん!
これでラポルトに乗れなかった件はチャラに‥‥(無理か)




