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第二部 第39話 異世界は空中戦艦とともに。⑤

 





「ラポルトってさ、重力子回路で宙に浮くじゃん? だから資材とかたくさん積めるんだって。どうせ浮かせるから重さを気にしなくていいんだよ」


 ぬっくんは「ふれあい体験乗艦」の思い出を、楽しそうに語っていたよ。


「水もさ、普通に使い放題だったなあ。まあ、無駄使いするメンバーはいなかったとは思うけど。一応戦艦だから、そういうの厳しいかと思ってたんだけどね」


 うん。それは、まきっちも言ってた。「食」と「住」に関してはホテル暮らしみたいだったって。運営さんは、空中戦艦の能力を駆使して、乗艦した中学生の「余計なストレスの蓄積」を回避していたんだろう、って。


「いや~~。異世界暮らしもだいぶ慣れたけどね。またラポルトに住めるとすると、一気に不自由さから解放されるからな~~。あ、この設備、現地の人に見せたらそれだけで無双できそうだよね~~」


「なんか、それは村の人に悪い気がするよう。見せびらかしてるみたいだよ」


「‥‥そだね。なんか僕たちだけ美味しい物を食べるのも、紘国レベルの便利な暮らしをするのも申し訳ないんだけどな~~」


 ラポルトを発見した時のぬっくんは、こんな様子だった。他の子もだいたい同じだった。続く異世界暮らし。文句を言うほど不自由ではなかったけど、目の前にラポルトがあるなら、やっぱりこっちに住みたい、ってのが本音だよね。


 それで、みんな一気にテンション上がってた。これで、ボーイスカウトや青少年自然の家みたいなキャンプ生活とは、これでさよならだ、と思ったから。



 からの。




 子恋艦長からの「麦茶おかわり禁止令」。


 まさか、また水汲みをしなきゃいけない生活に逆戻り?

 冷蔵庫や洗濯機の無い生活に、逆戻り?




 ***




「やっほ~~。暖斗くん姫の沢さん。見えてるかい?」


 食堂の隅に据え付けの、テレビ電話の画面に映る子恋さんは、少しはしゃいでいたよ。



 体験乗艦の時には全員、軍からスマホとパッド型PCを配られてたから、通信や情報のやりとりは全部それでこなしていた。

 その設備が無い今、これが艦内の情報伝達の手段となる。


 このテレビ電話、私たちには逆に新鮮に感じるよ。


「まあ、色々余裕ができたら澪が動くと思うよ。ラポルトのメインコンピュータをホストにして、ローカルエリアネットワークを組めるかも、だし」


 ああ、「ふれあい体験乗艦」の時、電磁パルス(EMP)攻撃でスマホとか使えなくなったんだった。あれは不自由したよ。

 でも逆に、ラポルトではスマホとかが使用可だったんだよね。半径2キロくらいで、独立したシステムを構築したから。


 いっそ、異世界に基地局置いちゃうのとか、どう?


「いい案だね。魔物がいなかったら上手くいくかもね」


 ぬっくん。やんわり却下するのやめて。




「あ、コレ全艦放送に切り替えるよ。‥‥‥‥っと。これで聞こえる? え~~コホン。艦長の子恋です」


 そう言えば、艦長を子恋さんがやるとか云々、全然相談とかしてないような。ん、でもいいのか。そういうの一切しなくてもチームワークが乱れないこの「ラポルト16」。逆にスゴイかも。


「みんな、作業しながらでいいから聞いて。今、この艦のメインエンジン、予備回転(アイドリング)中なのね。だから、まだ電力供給が十分じゃありません。あと資材も。今みんなが確認してくれてて、ブリッジにどんどん情報が集まってるけど、やっぱり万端積載してはいないみたい。水にいたっては(エンプティ)の状態です」


 なるほど。それで麦茶も「おかわり禁止」と。


「そういえば旅の時も、出航時に満タン積んで、途中ハシリュー村で補充してたっけ。あ、でもそれは、森を燃やしちゃってその消火に大量に使ったからだっけ。‥‥や、その原因を作ったのは僕だった。恥ずかしいなあ」


 ぬっくんは照れ笑いをした。でもその表情でわかるよ。そういうのも、いい思い出なんだよね?


 麦茶のおかわりは諦めるよ。


 暖斗くんの乗った人型兵器(ディアメーテル)

 その主武器、回転槍(サリッサ)


 その刃部には重力子エンジンが組み込まれていて、敵を倒すためにドリルが回転する仕組みだよ。

 でもその槍は、十分な回転を得るために、敵に当てる前に予備回転を必要とした。


 それが重力子エンジンの特性。どうしても立ち上がりが遅いんだよね。


 戦艦のエンジンは巨大で重い。それがゼロから動くとなると、立ち上がりはとんでもなく遅いから、すっごい予備回転の時間が必要となる。逆に動き出したら無限に発電してくれるから、とってもつよつよなエンジンなんだけどね。


 今、このラポルトは航行システムを立ち上げて、みんなが各所で電気を使っている。準備運転中のエンジンが生み出す電気じゃあ、それをまかなうのでやっと、ってことらしい。


 しかも戦闘とかだと、比べ物にならないくらいエネルギー使うし。でもそのために全個体電池(バタリエス)に蓄電する余裕は、今は無いし。



 戦艦浮かすエネルギーも、まだ貯まらないね。これ。まだまだ時間がかかりそうだよ。



「ぬっくん。艦の案内をお願いします。今私たちができることって、あんまりなさそう。せめて、無駄な電気を使わないことくらいじゃない?」


「そうだね。じゃ、色々順番に廻っていくよ。ひめちゃん」



 と、いうことで、私たちは艦内をブラブラすることを再開することになったよ。ぬっくんは食堂を出て、右に歩いていく。





「じゃ、とりあえずあそこに行こう。ずっと気になってるんだよ」






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