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第二部 第37話 壁の向こうには②





「え? これって?」


 洞窟の奥に眠るそのシルエットに、みんな固まる。


 ぬっくんが子恋さんに視線を向けた。



「うん」



 たぶん、今まで観測した中で最強のドヤ顔だよ。子恋さん。両脇のふたりも悪い顔で口角を上げている。


「澪の能力で船影は捉えてたんだけどね。実際見るまでは確信が無かったよ。うん。みんな驚いたと思うけど、私たちの船、ラポルトだよ」


 全員着の身着のままで来たはずの、異世界。


 どうしてここで紘国が誇る最新鋭潜空艦が埋まってるのか? ツッコみたい気持ちはあるけど。

 あ、いや、姿が似ているだけでニセモノ? だってこの異世界に空飛ぶ戦艦‥‥。



「いや、本物だよ。私たちがよく知るあのラポルトだ」



 誰かが、「本物?」って訊いたみたい。子恋さんが答えていた。一斉にみんなざわざわしだす。


「ほ、本物?」

「だってウチら、着の身着のままでコッチ来てんだゼ☆」

「そうっス」

「ス、スマホとかも持って来てないし」

「そうだとして。アレ動くの? あ~しらがメンテするとか?」

「そうだよね。メンテ班はいつも残業多いから。ごめんね」

「だったらぁ。シャワー室ある? ちなみシャワー浴びたいぃ」

「‥‥‥‥。どっちみち水晶の中じゃあ」

「オイ。説明しろ子恋」



 と、まあ。一瞬騒然としたんだけど、すぐ収まった。これが「ラポルト女子」だよね。「このまま混乱してても進展しない。子恋さんの言葉を待とう」って誰かが言いださなくても、自然とその流れが作られる。


 あ、ちなみに私は、頭が追いつかずにぽかんとしていたよ。


「うん。間違いなくラポルトなんだけど、ご覧の通りこの壁の向こうに埋まってるんだよね。だから、これをまず何とかしないと、なんだけど」


 私も附属中3人娘と一緒に行動して、だいぶ彼女たちがどんな子かはわかってきてるよ。


「さっき子恋さんは『試練は終わり』って言ったけど? まだこのダンジョンの攻略は終わってないよね?」


 そう。愛依さんの言う通り。子恋さん達がここまで来て無策なワケが無い。


 そんな会話が終わるくらいで、ズゴゴゴゴ‥‥ って、なんか地響きがしてきたよ。


 これ。昔ぬっくんがやってたゲームを後ろから見てたけど、これだ。


 ボス戦が始まる時にこんな感じになる。


「やっぱりそうか。ここへ来て、すんなりラポルトに乗せてもらえるとは思ってなかったけど」


 子恋さんの解説が始まった。


「みんな、このダンジョンはね、おそらく私たちが来訪する前提で作られている。『試練』もそう。強大な戦闘力を持つ戦艦を封印して、私たちが訪れるまで保持するためのダンジョンなんだよ。何故ラポルトがこの異世界にあるのか? それをどうして封印したのかは未だわからない。ただ、カミヒラマの古文書が示す通り。ここにラポルトが存在して、発掘されないように門番が置かれているのは確かなんだ」


 門番?


 私が訊き返す前に、その疑問は解消したよ。洞窟の壁を形成してた水晶みたいな鉱物が、どんどん宙に浮いて、人型の魔物になってく。全高は15メートル。


 私たちの世界の人型兵器、DMT(ディアメーテル)と同じくらいの巨体だよ。




「みんな戦闘準備を! こら! 澪!? あなたも戦うのよ?」


 渚さんの掛け声に反応して、みんな一斉に身構えた。


 その魔物は全身が半透明で、ガラスで出来てるみたいだったよ。武器は無く、人の身長くらいの大きな拳で殴ってくる。


硬化体(カンファーキノン)】!

無敵の盾(リミネラリゼイション)】!


 浜さんと来宮さんが前衛盾役になってくれた。水晶の拳を受け止める。

 ちなみに浜さんの盾は、愛依さんが【次元収納】から何とか引っぱり出して新調したよ。


 各スキルを活かしたパーティ戦。この辺は、(やよい)さんとの旅で学習してる。他のみんなも附属中3人娘から教わってるし。


「ひめさんは回復を」


 その春さんに言われてはっとした。そっか。

 今エイリア姫様が不在で愛依さん人格が発現してるから、治癒役がいないんだ。

 複数属性使える春さんと、ふつつかながら私がやらなくちゃ。


 盾役に回復を入れながら、残りのみんなは魔法で射程攻撃をした。う~ん? 効いてる?


 ちなみにぬっくんはベビー状態、愛依さんはそれを抱いていて。魔力が少ない泉さんと一緒に後方に下がってるよ。


「澪!?」

「‥‥今やってるって」


 渚さんから叱咤されて、紅葉ヶ丘さんがぶ~たれてた。彼女のスキル【8番から8番(レトロモラーパッド)】は周囲の地形を把握するスキル。

 地形を把握した渚さんの指示で、全員で場所移動する。良さげな高台があった。ここなら敵に魔法が通りやすいし、敵は反撃しづらそう。さすが附属中学、戦術科!




「ぜんぜん効いてないね。うん。彼は魔法耐性ありすぎだ。でも宝石みたいな鉱物系魔物だから、剣撃も弾かれるよ」


 とは、【君の名は(ダイヤグノーシス)】で敵の情報を読み取った、子恋さんの弁。


 そうみたいだった。


「【無敵の矛(パーフォレーション)】」!!


 初島さんが魔物の足に刺突したけど、割れたりしてないもん。


「なんかコアみたいな弱点ないの? ウチの【追従性(ハンドリング)】で攻めるけど?」


 まきっちの提案にも、子恋さんは否定的。


「今までの門番魔物みたいに、魔石は存在する。けど、この水晶魔物の体内深くで露出してないんだ。今までの『試練』は『試すため』。この魔物は『守るため』。性格が違うんだと思う」



「うぐぐ!」

「そろそろ厳しいっス」


 しまった。盾役の子が削れてきちゃった。桃山さんが自分の魔力をふたりに【リンク】で供給して、フォローしてくれた。【硬化体(カンファーキノン)】は盾の強度を、【無敵の盾(リミネラリゼイション)】は盾の修復を、魔力で賄うスキルだからね。


 でもこのままじゃ打つ手がない。そもそも「試練」に参加した子は魔力消費してるんだし。


 私が何とかしなくちゃ!? って思ってたら、ぬっくんを抱いた愛依さんが。



 すっと前線に出てきた。





「わたしも、ひとつやってみたいことが」






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