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第二部 第37話 壁の向こうには①





 新しく現れた下へと続く通路。全員集まってから降りていく。


 あ、そう言えばカミヒラマの軍人さん、医療部隊もいたんだった。彼らは私たちの邪魔をしないように、控え目についてきていたよ。


 階段は、ずっと下へと続いていた。今まではデパートの階段みたいに折り返しながら、一階層分降りれば次の階だけど、折り返しがずっと続いて終わらなかった。

 つまり、どんどん下へ降りているってこと。


 たまらず質問する。


「ねえ子恋さん。階段がずっと続くんだけど?」

「そうだねえ。うん」


「どこまで続くの? 附属中3人娘はこのダンジョンがどんな内容か知ってるんでしょ?」

「ん? どうしてそう考える?」


「だって。カミヒラマから軍人さんも来てるし、入り口ドアの開け方っていうか、誰がどの試練をやるか予定してたみたいだし」

「でもさっきはその予定が外れたけど?」


 なんだろう? 子恋さんちょっと冷たい感じ?


「あ、そうだ。今は逢初さんの中身が本人なんだけど、エイリア姫様だったら『試練』はどうなるの? それとも、逢初さんが復活したから、こうなったの?」


 そうなんだよ。このタイミングでの「ダンジョン攻略」。ぬっくんはベイビィのままだし。


「エイリア姫かどうかはあまり関係ないかな。まあ後は澪の地形把握スキル【8番から8番(レトロモラーパッド)】があるから、ある程度は把握はしてたよ。そして『試練』はこれで終わりだね。大広間に行って目的を果たせばダンジョンクリアだよ。うん」


 そっかやっぱり! 紅葉ヶ丘さんの【固有スキル】でやっぱり把握してたか。


 って、ん?



「試練が、終わり?」



「そうだね。うん」



 あれ? 確かまだ、私、愛依さん、ぬっくん、泉さんと(やよい)さんはやってないよね? 試練。てっきり全員均等に「試練」があるとばかり。

 子恋さんだって「ラポルトメンバー全員で試練に挑む」って言ってたよね?


 いや待てよ? 春さんは本来のメンバーじゃないのかな? 彼女のポジは? 


 あ、いえ。彼女が正式メンバーで、私が「ラポルト16」の員数外とか?


 うう。確かに共に旅した仲間じゃないけど、そうだったら悲しいよ。



 そんなこと考えてる内に、下の階についた。ずいぶん地中深くまで来たはずだよ。


「わぁ。広い」


 愛依さんが思わず感嘆の声を上げた。私もそうだ。


 階段を降りた先は、だだっ広い空間だった。鍾乳洞だよ。帝都ドーム何個分とかで言いそうな、そんな広い空間。


 はっきり見えないくらい高い天井には、石のつららみたいのがたくさん垂れ下がってて、ごつごつした壁には赤や黄色で反射する水晶みたいのが多面体を作ってた。


 空気が澄んでいる。同時に色とりどりの結晶についた苔の匂いもした。


「澪が捉えた船影の通りだね。ここが我々の目的地だよ」

「やっとついたわね。お疲れ様ね」

「つかれた~」

「澪は宝珠に乗ったままでしょ? 何時疲れたのよ?」

「‥‥‥‥」


 渚さんのツッコミを、紅葉ヶ丘さんは宝珠にへばりついたままスルー。

 その横で、子恋さんが先に立って歩き出した。彼女らも続く。



「地下に巨大空間とか、い、意外だし」

「そうね。こんなに広いと、大きな魔物の巣だったりして」


 その後を、「さいはて中コンビ」がついて行く。あと!

 桃山さん! それフラグ! 




「ほ~ん。しかも明るいのな?」

「‥‥‥‥。水晶みたいのが光ってる。あちこちで」

「あ~~。確かに。広いと歩くのダルいな~」


 さらに続くは「メンテ3人組」。




「ねぇ、見た? 見た? ちなみの活躍! 魔石ぱりーんって」

「確かに見たっス」

「でも私たちが駒操作してたから、折越さんが動けたんだからね?」

「でも魔石割ったのちなみだもん。活躍したのちなみだもん」

「「はいはい‥‥」」


 折越さんと「スポ中コンビ」は、まださっきの戦いの感想戦をしていた。




「うふふ。いよいよね。仲谷さん」

「そうですね。泉さんには色々お世話になりまして」

「いいえ。でも異世界での商売も楽しかったわ」


 泉さんは何か知ってる? そして仲谷さんは相変わらず生真面目。




 私とぬっくん、まきっちの「小屋敷小トリオ」と愛依さんは、一番最後を歩いてったよ。巨大空間ってだけあって、結構歩いてる。


 ちなみに「みなと一中トリオ」って言ったらメンバーは、ぬっくん、まきっち、愛依さんだよ。私はみなと二中だからね? 紛らわしいけど一応言っとく。


 そうか。上の階から降りる階段が長かったのは、この空間のためだよ。天井がそれだけ分厚かったってことだよね?


 でもさっきの桃山さんのフラグじゃないけど、これだけタテヨコに広い空間だと、大きな魔物の巣みたいにも感じじゃうよ。ドラゴンとか。


 う~ん。ドラゴンの巣テイストが強化されちゃった。子恋さんが歩く方向が、巣の奥っぽいんだよ。広大な空間は、歩いてみると縦長だった。


 その、高さ100メートル幅100メートルくらいの洞窟状の空間を、私たちがぞろぞろと歩いていく。水晶が散りばめられたような洞窟を。

 そしてみんなだんだん、無言になった。


 この先が目的地らしいけど、何も無いワケないもん。


 子恋さんのことだから、絶対中ボスとかいるはずだよ。



 そんなことを警戒しながら歩いて行ったよ。もう通常出会う魔物はいなかった。もうそれだけでも中ボスがいる疑惑、高まるんだよね。‥‥まさか、この辺でセーブポイントとかないでしょうね? (昔ぬっくんがやってたゲームの知識だよ)


 そしたら、終着地が見えてきたよ。洞窟の終わり、広大な空間を止める壁が見えてきた。こんな場所に何が――って思ってたら。



 みんなの。


 正確には、私以外のメンバーの表情が固まってた。洞窟の行き止まり。その水晶みたいな透明の結晶が壁を作っていて。


 ガラスみたいに透けた、その壁の向こうに見えたのは。




 見覚えのある形状(かたち)




 紘国の最新鋭空中戦艦、いえ、潜空艦。





 ラポルトが、幾万の水晶の中に埋まっていたよ。






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