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第二部 第36話 出た! ダンジョン。攻略実況する?⑧






 附属中3人娘のほうは、何とかなったよ!


 急いでもう一方の部屋へと戻る。


 周防(すほう)中学、通称「スポ中」でフェンシングに青春を捧げた初島さんと来宮さん。

 七道さんに「商業科だから」と言われてしまった折越さん。(これはあくまで七道さん個人の感想だよ)


 彼らの「試練」はどうだったのか? 騎士とか魔法使いとかの駒を動かすシミュレーション的なゲームは、明らかに分が悪そうだった。


「そうね。それでどうかしら?」

「がんばって~! 今のところ互角よ~!」


 声を張れば窓から試練の部屋へと届く。この声は泉さんと桃山さんだった。



 チェスみたいなマス目に乗る駒は、よく見れば6種類。さっきの「実戦演習」と同じ駒だ。

 盾士、騎士、盗賊。それの後衛に回復師と魔法使いがふたり。6人ひと組で固まって、さっきと同じ感じで陣形を作ってる。


 そこに、窓からの応援で泉さんと桃山さんが駒操作のアドバイスをしていた。基本、敵と同じ感じに配置して、バスケットゴールの位置にある王様ゴーレムには敵を行かせない方針だよ。

 私もアドバイスしなきゃ。


「あっちも同じ駒だった。やっぱり一隊6人で同じ陣形だったよ」

「助かるわ姫の沢さん。じゃあこちらもこの陣形を堅持ね」

「泉さんはこういうの得意なんですか?」

「いいえ。取りあえず桃山さんと即興で色々考えてるだけよ」


 なるほど。泉さん桃山さんは勉強も得意らしいし。「兵棋演習」がどんなものか想像して指示を出してたんだね。


 あ、でも?


 それが通るって、この「試練」、条件ゆるくない?



 初島・来宮さんは王様ゴーレムに触れて、駒操作に注力していた。


「なんか、この低い目線で駒の配置見るのムズいっス」

「そう! 上から指示くれると助かる」


 駒の大きさは人間と同サイズ。確かに駒と同じ目線だと、ボードゲームみたいにはいかずに見えにくそうだ。

 しかも、私たちが部屋を見降ろす窓は2階くらいの高所にある。あっちの試練の部屋と違うのは、チェスみたいなマス目が周囲から50センチくらい高くなっていて、いかにも「盤上」って感じなところ。


「えぇ~。ちなみやることないぃ~? じゃ何してよっかな~?」


 ちなみにちなみさんは、あっちの部屋の「附属中3人娘」ばりに通常運転だった。

 その盤の外の低い場所を、手持ち無沙汰で歩いていた。


「あっ。駒が動いた!」


 敵の駒は一定時間が経つと動く。数体ずつ。こちらも動かせる駒が王様ゴーレムに触れていればわかるので、都度都度相談して行動を決める。


 駒の行動は「移動」→「攻撃」、とか「移動」→「防御」だよ。あと「攻撃」→「攻撃」みないなのもアリ。

 桃山さん泉さんが移動の指示を出して、「メンテ3人組」がこのゲームのルール解析をしていたよ。


「やっぱ。一定時間が経つと駒を動かせるタイミングが来るみたいだな」

「あ~~師匠それ。あと、『攻撃』とか『移動』にコストの概念がありそう」

「‥‥‥‥。勝利条件は? 王様ゴーレムの魔石破壊? だったら敵の守りを剥がさないと」


 ここで七道さんが反対側、「附属中3人娘」の入った部屋を仰ぎ見た。


「これって結局、チェスとかシミュレーションゲームみたいなモンだろ? 紅葉ヶ丘だったら知ってそうじゃね~か? こういうの」


「だったらさ、紅葉ヶ丘さん、ってか3人娘呼んじゃおうゼ☆ あっちはもうカタついてんだし」


 そう言って「いいね」ポーズの手の親指で指差したのは、まきっちだった。


 おお。我が親友。それグッドアイデアでは!?



「だめ。無理みたいだわ」


 すぐに愛依さんの声がした。「実戦演習」の試練が終わったことによって、3人娘は部屋の中に閉じ込められてしまったみたい。部屋が暗くなって姿が見えなくなってた。




「まずいわね」

「う~~ん。初動が遅れたからかな?」


 指示役のふたりが焦っているよ。


 こちらの防御の要、盾士が倒されてしまった。4つある6人パーティーのひとつだけど。同じユニット構成で同数なら、先に攻撃をしかけた向こうが一手早いよね? それが現れてしまったみたい。


 予想してたけど、盾士が居なくなったパーティーは脆かった。後衛の魔法使いとかが騎士に詰められちゃうと、切られて大ダメージを負う。回復師がやられるともうリカバリーできない。


 敵の6人パーティーをふたつ倒したけど、こちらは3パーティーを失った。


 彼我戦力差は、6人パーティ 2組対1組。ほぼもう負けが確定だ。


 みんなこちらを見にきた。心配そうだ。



 あ、そうだ。ギフト持ちの天才、愛依さんなら?


「‥‥ごめんなさい。わたしは『記憶力』と『計算力』のギフトなの。将棋とかで棋譜を本気で憶えればどうにかなるかもだけど、初見のボードゲームは‥‥」


 そっか。愛依さんも同じ人間だ。万能じゃないってことだね。



 そうこう言ってるうちに、試練部屋の盤面も進行していた。敵2パーティー、11体(1体は既に倒してる。盗賊だよ)の内5体を破壊。

 その時点でこちら側の盤上兵力は尽きたよ。あとは王様ゴーレムが残るのみ。


 ちなみに王様ゴーレムに戦闘力は無いみたい。本当に駒を動かすための、指示するためのユニットだった。ちなみにマス目を「移動」して逃げることもできない。



「ああ、残念ね。せめて先にゲーム内容がわかってたら」

「でもみんながんばったよ。これで負けたらどうなるの?」


 残った敵兵が王様に迫る。自分の行動ターンが来たらだけど。だから一定時間は6駒とも動かずに固まっている。

 泉さんと桃山さんが悔しそうだった。


「‥‥その辺の事情を知ってる子恋たちがあっちの部屋だもんな。どうすんだ。これ?」

「あ~。師匠の【光学印象(スキャニング)】でこの部屋の構造把握して、ゆずの【切削形成(プレパレーション)】で窓枠を広げたら? ワンチャンあるかも?」

「‥‥‥‥。もう今からやりますか? 最悪あっちの部屋も開かないかもだし」


 そうか。「メンテ3人組」にはその手があった。この迷宮に入った時みたいに。


「そしたらあ~しの【積層重合(レイヤリング)】で、下に降りる階段か何か出しますよ」


 それで何とかなるかも。‥‥いや、それしかない!!




 敵ユニットが動いた。騎士を先頭に、後衛を引き連れて。騎士のほうが「移動」が得意なのか、少し先行して王様ゴーレムに迫った。もう剣が届く距離だよ。


 一定時間が経って次の騎士の行動ターンが来れば、胸の魔石が割られて勝敗がついてしまう。


 そう思って固唾を飲んで見ていたけど。




 ‥‥‥‥‥‥‥‥あれ?


 気のせいかな。

 敵のターンがなかなか来ないんだけど? こういう「時間が止まって欲しい」時って逆に経つのが早く感じるよね?


 なのに、敵駒が動かない。さすがにみんなざわざわしだした。





「‥‥‥‥‥‥おかしい。どうなってるの? これ?」






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