第二部 第36話 出た! ダンジョン。攻略実況する?⑥
「敵の総戦力は不明。この地点を制圧されたら負け確。‥‥じゃあ拠点防御の持久戦ね」
向かって右側のお題「実戦演習」の試練。
附属中3人娘が立つ部屋の反対側、地面から、ぞろぞろと土人形がせり出してきた。あ、デザインがあっちの部屋の「駒」と同じ。まさにチェス。欧圏の彫刻とかみたいだ。
魔法使いとか戦士とか、良く見ると職業とか持ってる武器が特徴ある。
まず大盾を構えた大柄の鎧が前へ出て、その左右に剣士っぽいロングソードの人と素早そうな短剣使いが配置についた。盗賊とかかな?
後列は中央に回復役、その左右に魔法使いっぽい人が現れて。
現実世界の人間のパーティー陣形みたいだった。
「今見えてるので終わりかしら? どのくらい湧くか不明だから、これで行くわ」
まず動いたのが渚さんだった。両拳をバチバチと光らせて敵へ吶喊した。
最初に現れた、その6人組へと駆け出していく。他にも同様のパーティーが3組、計24人が地面からせり出して来ていたよ。
24人! あっち「兵棋演習」の駒数と同じだ!
「とぅ!」
流れるような身のこなしで、土製の駒を割っていく。光る拳のみでだよ。確か渚さんは「雷属性」持ち。両手がバチバチしてるのは、雷魔法を纏わせてるから?
「はっ! はぁ!」
渚さんは敵前衛の剣を寸前で躱し、間合いに入った相手に拳撃を叩き込む。かと思えば、隣のパーティーにも手を出して、陣形を乱していく。
平然と剣を躱し、後衛の魔法も避けてくんだよ。
「うわ。渚さんスゴイな!? ラポルトにいた時はずっと艦橋だったし知らなかったゼ☆」
まきっちも驚いていた。対する愛依さんは思案顔。
「ね、麻妃ちゃん。わたしがハシリュー村に行った時、付き添いが折越さんと渚さんだったの憶えてる? 渚さんは副艦長で「艦長の名代」だったんだけど、子恋さんが」
「何か言ってた?」
「うん。『いざとなったら渚学生を頼って。すごく強いから』って言ってた。小声で」
「へ~~!? そんなことが」
「あと、あのハシリュー村の敵兵も。『一緒に風呂に来た娘は、ふたりとも武術をやっている。あの足運び、あの筋肉の付き方はね。でもどうだ? 君の服の下は、女性らしい皮下脂肪だけだね』って」
「あ~。あの露天風呂を望遠で覗いてた変態か。セリフがいちいちエロいな!」
「うん。さらっと覗いてたことカミングアウトしたから、逆にいやらしい感じはなかったけど。『仕事でやむなく』って言ってたし」
「いや~。ソレぬっくんには言わないほうがいいよな‥‥。‥‥愛依はあの敵兵に取り込まれたようなモンだし」
「うん。異世界に来てびっくりしたよ。この世界のさる国の王子様がゼノス君で、わたしとの相性診断が70億人にひとりの確率って」
「全人類の中でイチバンくらいに相性がいい、ってコトだからな~。まあ、愛依がハシリュー村でのあれこれを話せるようになったのは、いいこったゼ☆」
「うん。気持ちがだいぶ吹っ切れたから。暖斗くんやみんなのおかげ」
まきっちと愛依さんのガールズトーク。情報量多過ぎ。
でも待って! 今は渚さん!
ふたりの会話に思わず聞き耳だったけど、改めて渚さんの戦いぶりを見る。異世界を旅してきた私の観点で。
えっ!? これって? 折越さんより強くない?
渚さんも含む「附属中3人娘」、その通う「国防大学校附属中学」は、私たちの国を守る軍人を養成する専門の学校だよ。
だから当然、こういう武道は色んな意味で、修めていてもおかしくないけど?
折越さんの武術は古流で、実際の戦場、刃物を持った相手を想定していて、その練習に真剣が使われたりもするそうで。
だから彼女は、この異世界でもマジモン武器を持った相手に怯まなかった。
でも。いくら「国防大学校」が軍人を養成するガチ機関だったとしても。
この渚さんの実戦馴れはどういうこと? まるで。
映画とかに出てくる本物の女スパイとか、アクション女優の殺陣みたいじゃない!?
「そう言えば折越さんは『春ちゃんは強い。陽葵ちゃんは怖い』って言ってたわ。第2回女子会(議)の時に」
この愛依さんの発言は、今にしてみれば納得だ。春さんは異世界出身のプリンセスガードナー。この世界で普通に剣士としてガチの切り合いをしている人。「ふれあい体験乗艦」の時にはその正体を隠してたから、「料理係」だと思ってたけど。
折越さんは自分が武術をやるから、相手の力量を感じ取ったんだね。
でも、その彼女が「怖い」っていう、渚さんって一体?
「‥‥当然だよ。渚陽葵。父親は紘国軍の諜報機関の幹部、渚一族は高祖皇帝が紘国を興した時に諜報面で暗躍した、スタートアップメンバー。決して表舞台には出て来ない。代々そうなんだよ。そしてそのスパイ一族の次世代エースの陽葵は『国益に沿うなら事後報告で可』というびっくりするくらい緩い条件の『殺人許可証』を、紘国で唯一未成年で所持する、もう都市伝説みたいな女性諜報員だからね。うん。そもそもあんな超最新、超絶軍事機密の塊みたいなラポルトが、地元中学生16人のみで出航できたのは、陽葵が乗艦して『何があっても必ずその始末をつける』条件で、諜報部が渋々納得したから、なんだよね。幸いにして、そういう事態にはならなかったけれどね」
子恋さんが何か小声で高速詠唱してたけど残念。
小声で聞こえなかったよ。
※第39話 邂逅Ⅰ の伏線全回収です。




