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第二部 第36話 出た! ダンジョン。攻略実況する?③





 崩れたゴーレムが片ひざをついて、だんだんと光の粒子に変わっていく光景。



 その向こう側に、下層に降りる階段が見えて。

 そこが順路なんだろうと簡単に想像できた。


 私たちは何事もなく、ぞろぞろと下の階へと降りていく。


「ダンジョンなのに敵モンスターとエンカウントしないんだ」


 初島さんと来宮さん。体育会系の「スポ中コンビ」がちょっと残念そうだ。


「ゲームじゃない、ってことででょ?」


 まきっちがそう言うと、前を歩いていた子恋さんが補足を入れてくれた。


「うん。ゲームとは違うんだよねやっぱり。あれだけ厳重に入り口の扉が閉められていたんだから、当然魔物も生き物も入りこんではいないんだよ。いたら矛盾が生じる。恐らくさっきみたいな、魔法で起動するゲートキーパー以外とは戦闘にならないよ」


 どうやら、そういうことらしい。



 で、まっすぐな一本道をひたすら進んでいったよ。


「しかしさっきは不意打ちだったね。今後、階層の門番は倒しても油断しないほうが良さそうだ」


 確かに。さっきのゴーレムは対応できたからいいけど、驚いたよ。




 ――と言う内に、壁の石板が見えてきた。イベント発生だよ。


「えっと石板には?」


 〖壁を越えて(とお)当てせん。遠当ては即ち(とお)当てなり〗


「‥‥だって。これゼッタイ紘国語じゃないと通じないヤツだ。そして床のくぼみはふたり分」


 そのくぼみの前には白い色変わりの石材で線が引かれていたよ。この線から出ないで「遠当て」をやれってこと。

 私が床を確認してから向こうを見渡すと、けっこうな距離の先にゴーレムが見えた。上の階と似たようなデザインだ。


 その私の後ろから浜さんと桃山さんが進み出る。


「じゃ、スナイパー対決ね」

「て、定員2名なら盾士の私が。壁役に」


 ふたり仲良く「「せ~の」」でくぼみに足を入れたことで、この階の試練がスタートした。敵のゴーレムは通路のはるか先、2,30メートルくらい? 壁際から動こうとしない。



「なんかさ‥‥地上波のバラエティー番組みたいだよね?」


 誰かがそう言った。私も同感。石板でルール説明、とか「定員2名」とか。遊園地のアトラクションみたい。


「何でこのダンジョン攻略すんだ? ここに何かあるのか? 魔王の城に通じてるとか?」

「あ! 伝説の武器とかがあるかもだよ? 七道さん」


「とにかく、この試練のお題が『遠距離射撃と盾士』ってな~。できすぎなんだよ。このダンジョン作ったヤツの作為がな」


 七道さんは何か気づいたみたいだよ。



 桃山さんが【空間収納】から長弓を出していた。愛依さん。エイリア姫のこの能力はやはり問題無く使える。

 ちなみにその長弓は、欧圏風のロングボウじゃなくって紘国由来の弓だよ。矢は彼女の魔法力で生成してつがえている。



「‥‥‥‥残身!」



 きれいな声ときれいな姿勢。矢が放たれてゴーレムに迫ったけど、胸の魔石を惜しくも外した。ちょっと下だった。


「‥‥‥‥残身」


 続いて2射目が放たれて。そうそう。彼女は弓道部が強い、みなと中央高校に行きたいんだって。私も志望校にしてたから意気投合したっけ。



 バッチィン!


 今度はゴーレムの急所に命中した! すっごいよ桃山さん!

 ――刹那。ゴーレムがいきなり下手投げで投石した。


「きゃあ!」

「ぐむ!」

 顔を背けた桃山さんの前に、浜さんの盾が入った。


 ガゴッ!


 弾かれた石が舞う。どうやら的に当てると反撃してくる? 命中させた時に石が飛んでくるシステムだ。上階と仕組みが似てる。


「なるほど。矢を射るとその分せり上がる。なるべく外さずに魔石に当てたほうがいいみたいだね?」



 ゴーレムの足元に床と同じ材質、石をレンガみたいに積んだ壁が、20センチくらい地面からせり上がって、ゴーレムを守っていた。鑑定を終えた子恋さんが分析結果を口にする。


 矢を射る分だけあの壁が上がって、ゴーレムを狙いにくくする仕組みだそうだよ。土魔法だって。


「じゃあ、外したら不味いんだね。いくよ!」


 桃山さんの顔つきが変わった。凛とした表情。‥‥‥‥これからが本番だ。

 浜さんも緊張感を増していた。――と、同時に私たちは物陰に隠れる。流れ弾の石に当たるのはイヤだから。


「‥‥‥‥残身!」


 以降の桃山さんは、着実に魔石に当てていったよ。その度に石が飛んでくるけど、浜さんが確実堅実に防いでいた。


 確実に命中したけれど、矢を射た分だけはゴーレムの前の壁はせり上がっていって。

 8発目をクリアしたところで胸の魔石が直視できなくなってきた。


「ね? これってもうムリじゃない?」


 心配になった私は、まきっちに耳打ちする。ゴーレムの急所である魔石は、完全にせり上がった土壁に隠れちゃったんだもん。あの壁、壊せるのかな?


「あ、でもまだ桃山さんは‥‥?」


「【スキル】、【貪食ファゴサイトデリバリー】!」


 まきっちが言う前に、桃山さんがスキルを発動した。


「‥‥残身!」


 そのまま矢を射出!


 光でできた矢は、そのままゴーレムの中心に向かっていって。

 せせり立った壁に阻まれる直前でその軌道を変えた。


 バシバシバシッ!!


 あれ? この音!?


「全弾命中!」


 渚さんが叫ぶ。‥‥そっか! 残りの3発まとめて射出したんだ。壁がせり上がるから。

 でも大丈夫? それだと?


「グオオオ!!」


 やっぱり! ゴーレムも石を投げ返す挙動! やっぱり石三つ持ってる。しかも、前面の壁が上がってるから、上投げだよ!


 投球フォームがヤバい!! 高速でしなる腕が見えた! 


 野球わからないけど、明らかに堅そうなあの石が、豪速球で投げ込まれる気配だ!

「あぶな‥‥!」




「【硬化体(カンファーキノン)】‥‥!」 


 私が叫ぶ前に、浜さんの低い声が響いた。


 何かを決意してる声だったよ。




 ゴーレムの腕が振られる。


 光る浜さんが前にでる。


 岩がゴーレムの手を離れる。


 盾をかまえる。


 風切り音がする。


 盾が岩を受ける。一発‥‥二発!


 轟音と共に、盾が砕ける。


 三発目が、浜さんに迫る。


「浜さん!」


「【硬化体(カンファーキノン)】は私にかけてある!」



 盾の上部が砕けていて。浜さんの顔が露出して。そこに岩が迫って。



 浜さんは避けなくて。微塵も避けなくて。



 彼女の顔右半分に当たった岩が、割れながら右にそれていって。桃山さんの脇をかすめて。





 後ろの壁に当たって、粉々に砕けた。





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