表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
383/520

第二部 第34話 やっぱり正ヒロインには魔物に狙われるフラグが似合う①

 




 図書館のあったシュゼッツテンプル村から帰路につく。無事ユーズナーカホカ村に戻ると、そこには意外なふたり組が。



「あ、姫様じゃなくて逢初さんなんだね。本当?」

「ど、どうもです。逢初さん」


 浜さんと桃山さんだった。


 驚いたよ。愛依さんとふたりが再会を喜び合ってから、事情を訊いた。


「実は仲谷さんに呼ばれてね。ザイガ村も引き払ってきたんだけど、お別れ会やってくれるっていうことで――」

「い、一日遅れた」


 え? 引き払った? ふたりの本拠にしてたザイガ村を? 


「う、うん。仲谷さんにそうして、って言われて」



 そうなの? (やよい)さんを探して訊いてみる。


「ええ、そうです。実はミナトウ村もそのつもりだったのです。――ですが、あの盗賊の騒ぎの直後では切りだせず、取りあえずこの地に来たのです」


 でも春さんはそれで大丈夫だ、と言う。どういうこと? 


 さらに質問しようとしたんだけど、春さんにさらに来客が。



「お、今いいか?」

 七道さんだった。


「一座から抜けるハナシがついた。あと3日。ココの興行を最後にな。柚月の卒業セレモニーもやってくれるし。じゃ、伝えたぞ」



 なんか私の知らないところで事態が動いてるよ。




 人の動きを軸にして、ちょっとお話を整理してみる。なんかぬっくんが昔やってたゲームみたいになってきたから。各々バラバラに動いてたキャラクター達が、最終章で全員主人公の元に集まる! みたいな展開よね?



 まずミナトウ村にエイリア姫、ぬっくん、まきっちが住んでいた。


 そこに私たち、姫の沢ゆめと仲谷春さんが合流。


 からの! 泉花音さん折越ちなみさん、初島美羽さん来宮櫻さんが加わって。その面子でこの、ユーズナーカホカ村に旅行したところで。


 浜一華さんと桃山詩女さん、さらにメンテ三人組の、七道璃湖さん、多賀柚月さん、網代千晴さんまで集合?



「ミナトウ村での戦い。盗賊を退けたことで敵方の魔導士に、エイリア姫の存在が気取られました。泉さんがやった口止めは効果はあると思います。しかしあの魔導士を口封じしたワケではないので‥‥」


 そうなんだよね。愛依さんの【創造妊娠(ノーシィストーク)】でトラウマ級のヒドイ目にはあわせたけど、回復して正気を取り戻す可能性はある‥‥。


「しかもその戦いで姫様本人が休眠モードに入ってしまい、姫様の魔力を隠蔽、遮断する結界魔法の経時的減衰が始まってしまったのです。もう補足されるのは時間の問題でした。王宮が次の手を打ってくる前に、動く必要があったのです」


 そういう事情があったのね。


 いざという時の姫様の【大魔力】の火力は頼りになるけど、やっぱりだった。王宮がああやって盗賊に姫様捜索をさせてたって時点で、潜伏の目星はついてたってことだもんね。


 でも、ということは?


「ええ、そうです。私たちはこのまま軍事国家カミヒラマに入国して、附属中三人娘と合流します。全員集合です」



「「おお~~!!」」


 後ろのぬっくんとまきっちがハイタッチしてた。私と愛依さんも手を叩いた。


 そっか。この異世界でバラバラになっちゃってたけど、ついに。――――あ。じゃあ、カミヒラマに住むのかな? 全員で。



「いえ。そうしないために、全員集まるのです。この世界で精進を重ねたみなさん。きっと‥‥‥‥もう大丈夫でしょう」



 むむ? 大丈夫とは? ――あ、そう言えばミナトウ村を出てくる時に、貴重品を全部愛依さんのアイテムボックスに入れたんだった。盗賊が来たんだもん。泉さんの交渉でもう来ないって約束したって、やっぱりねえ。


 そもそも【次元収納】あるのにミナトウに貴重品を置いてくる理由なんてないし。と、言う訳で金目の物も私たちの装備も全部持ってきてるのでした。そういう意味では大丈夫。


「メンテ班三人組の合流までまだ3日あります。それまではここで羽を伸ばしましょう」


「「は~~~い」」


 桃山さん浜さんと温泉入ったよ。ふたりともすっごい喜んでた。



 あくる日。ホテルの朝食ビュッフェで一階の大広間へ行く。私とぬっくんとまきっちの3人。


「え? 今VIPルームのほうから来たよね?」


 メンテ班三人娘とばったり会った。まきっちが訊ねると、一番眠たそうな網代さんが教えてくれた。


「あ~~。ゆづが人気踊り子だから。あ~しらはそのマネージャーって立ち位置で。座長がいい部屋取ってくれんだよね~」


「まあ、一座も柚月のおかげでムチャクチャ潤ってんからな。逆におっかけのお兄様がたと同じホテルじゃあ、柚月の気が休まらね~だろ?」


 と七道さんが補足。うんまあ。旅の先々でいい部屋泊まれるんなら一座の旅も快適だよね。



 なんかこの3人、私より芸能人として成功してない?



 3日後の夜。無事、と言うべきなのか「踊り子 多賀柚月」の卒業祭も終わり、3人は私たちに合流した。――一応私たちも遠巻きにステージ見てたけど、花束とか、熱がすごかったよ。


 ファンのお兄様がたも泣いてたなあ。多賀さんは「アイドルらしい涙顔」だったけど、ぬっくんはそれを腕を組んでナナメに見ていた。


「あれはたぶん演技だよ?」


 あれ? 過去に何があったの? 多賀さんにはナゼか辛辣だね? ぬっくん?




 ***




 翌日ホテルのロビーに集合する。みんなちょっとだけ不安げだ。


「カミヒラマって軍事国家なんだよね? 国境の関所で捕まって牢屋行きとか?」


「そんなベタな展開ゲームの中だけだよ」


「いやいやぬっくん。この異世界だいたいゲームみたいな展開ばっかじゃん」


「で、でも附属中三人娘は普通にミナトウ村まで来てたし」


「皆さん不安そうだし、春さん、旅の行程話したほうがいいかしらね?」


「ああ、そうですね。皆さん、これから馬車の定期便で国境の町まで移動します。この人数で一度には乗れないので、分乗します。今日は国境の町に一泊して、明日徒歩で関所をめざします‥‥‥‥」


 と春さんが説明してみんな静かになったよ。


 私は春さんとの旅で鍛えられたから、徒歩とかもう自信あるけどさ? でもやっぱり交通手段は歩きなんだね。この世界。みんな大丈夫かな?



 当然馬車には他の乗客もいる。最初は春さんの引率でぬっくん、まきっち、私、愛依さんと七道さんが乗った。席が空くまで立ってたよ。通学電車みたいだった。


 次の馬車は泉さんがリーダーで、初島さん来宮さん、多賀さん網代さん、浜さん桃山さんが来る算段だったよ。しかしリーダー泉さんの安定感‥‥‥‥!!


 私たちの便が先に国境の町に着くから、商店街でもまわって後から来る便を待つつもりだったんだけど。




 あともうちょっとで到着、というところで馬車が止まった。


「あ、お客様は中に入っててください」


 馬丁さんがそう言って迎撃に出たよ。犬くらいの大きさの魔物が出たってさ。だけどちょっとばかり数が多い。


 みんなで目配せして外に出た。みんな口々に魔法を唱える。


 あ、愛依さんだけは何もしないけど。

 彼女はこの異世界に不慣れだし。剣はもちろん魔法も使えないし。


「いや~。助かりました。ちょっと数が多かったんで。皆さんお強いですねえ」


 馬丁さんには感謝をされた。けど。


「ただ注意してください。このあたりは妖獣系だけじゃなくて妖樹系も多いんです。木の実とかで釣ってツルを絡ますヤツが‥‥」


「ご親切にどうも。ですが私たちは全員旅慣れております。不用意に木々に近づく者はおりませんから」


「そうですね。これだけ皆さんお強いんだ。そんな初歩的な罠に‥‥」

「きゃあああ!」


 春さんが、馬丁さんの忠告に自信満々で答えたところで。

 ああ、彼の忠告は間に合わず。


「愛依!!」





 茂みに近づいた愛依さんが、ツルの魔物に絡めとられていた。






※ 愛依さんの久しぶりの登場なので。

  やはり定番イベントは必要かと(*^▽^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ