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第二部 第32話 異世界にもスパリゾートは存在した!①





 馬車に揺られて。無事、ユーズナーカホカ村に到着。


 東西を高めの山に挟まれた、温泉の村。あっちこっちに旅館があって、村の中心には観光客向けのお店や遊技場があるのです。



 そして、この旅の真の目的。


 愛依さんのカラダを清めるために、まず、全員で「浄化の湯」を目指したよ。


 このユーズナーカホカ村は、実は源泉というのは一か所なんだって。そこから汲み分けて村全体に給湯してる。


 そしてその源泉こそが、泉質「聖水」、効能「身体心身その他諸々の浄化」。


「よいですか。皆さん。こほん。昔むかしこの地を訪れた高名な修験者が、この霊木に日輪が舞い降りるのを見て神気に感応し、その所を掘ってみれば聖なる気配を発する湧水が滾々と湧き出たことからこの地に堂を建て宿願を立てて沐浴潔斎すること40日、ついにその信仰がこの地の人々にも深く根付く事となり、益々神気高まる中宿願を以‥‥‥‥」


「全部この掲示板に書いてあるよ? (やよい)さん?」



 まきっち。最後まで言わせてあげなよ。



 まあつまり、この源泉はなんかありがたいご加護があるみたいで、そういう神聖なイベントが起こった場所から湧いた温泉で、だからとにかく泉質が「聖水」なんだって。


 文句ある!?



 その「源泉」はちょっとした小山の中にあって、背の高い木々が立ち並ぶ暗い感じの場所だった。お堂とお湯が湧いてる場所があって、庭の池みたいなところが湯舟だったよ。


 なんか山奥の秘境とかであるよね。大自然が作った天然の露天の、野趣あふれるお風呂。そんな感じ。



「‥‥‥‥え? ‥‥わたしだけ? みんなは‥‥?」


 愛依さんがためらいながら服を脱ぐ。春さん曰く浴場ではないので、用事のない人がむやみに入っちゃいけないんだって。入浴施設ではない、と。


 なんか病気とか悩みとか、悪魔憑きとか黒歴史とか。そういう負のモノを洗い流してキレイにしたい人が入るんだって。


「‥‥‥‥でも‥‥‥‥」


 そして、ここは混浴。さらに女子風呂にあるような衝立(ついたて)や目隠しもない。更衣室もない。山中だから丸見えではないけど、確かに。


 なんていうか。道端でいきなりすっぽんぽんになれ! って言われる感覚に近い。コレ、ドラゴン化で着衣を諦めた私の実体験だから、ぜんぜん他人事じゃないよ。


というわけで、ここで全裸は女子的にはちょっと‥‥いいえ。かなりイヤ。


「あ、僕はふもとで人を止めるよ。じゃあ後でね」

「あ~。ウチのドローンがあったら周囲を哨戒するのにな~。あ、逆に愛依のハダカも撮れちゃうのか?」

「ま、麻妃ちゃんやめてよ~~」


 ここは女子の連帯感。


 ぬっくんだけ下に降りて、彼女に背を向けて残りの女子で、まわりをぐるっと見張ったよ。

人間の壁だ。



「逢初さん。タオルは取ってください。カラダの浄化ですので」


 あ、仲谷さんだけは愛依さんのほうを向いてる。入浴作法警察だ。


「え~~ダメ? 仲谷さん」

「あ、湯舟にタオルは不可です。ダメですタオルは」

「でもハシリュー村でも望遠鏡で覗かれてたし」

「ぐはっ! ‥‥いいもん。ちなみ気にしてないもん‥‥」

「この世界に望遠鏡はないと思います。ハシリューで良くても、ここではダメです」

「私らがちゃんと見張ってるっス」

「そうだね。壁になるから心配しないで。逢初さん」

「あら、もしかしてあるの? 望遠鏡?」

「ないと思います」

「ち、ちゃんと否定してよ~~」




「湯舟に浸かったら、今度はこちらに」

「た、立つの? ここに?」

「そうです。そこの打たせ湯の下に。そこで聖水をまんべんなくカラダに」

「え~~ん」

「ぐるっと回ってください。そう、前ばかりでなく、背中やおしりにも打たせ湯を」

「それだと外を向かなきゃでしょう? いやよ?」

「あ、だからタオルは」

「うえ~~ん」



 と、お山のふもとから男子の声。


「聞こえる~~? みんな~~。あのさ~~。マズいよ~~。愛依の声下まで全部聞こえてるからさ~~。ちょっと何とかしたほうが~~」

「うえええ~~~ん」




 軽く揉めそうになったけど。


 何とか、浄化の儀式終了。



「‥‥‥‥あ、なんかね、途中からすっごいキモチ良かった! 聖なる光に包まれた感じ?心もカラダも、ぱあああって。生まれ変わったかも、わたし! あ~キモチ良かった~」


 とはハダカを嫌がっていた人の弁。よかったよかった。


 で、馬車の旅の疲れを癒すために、今度こそ普通の温泉へ。うほほい!♪




***




 男子が見てるアニメとかでよくあるヤツ!


「○○ちゃんの胸大きい。さわらせて」「きゃ!? やめてよ~」


 などなど。


 フィクションです。それって男子がただイメージ膨らませただけ、だよね?



 女子はお風呂でそんなことしません。‥‥そりゃゼロ人とは言わないけれど。

 だいたい人のハダカジロジロ見たり、胸の大きさとかセンシティブな話題わざわざする? ほぼほぼ地雷だよ?


 フィクションです。お風呂を全身で楽しむのとお喋りがメインだし。


 一部の自信がある子がちょっと自慢気にしてるだけで、ほとんどの子は隠すか普通にしてるだけだよ?

 タオルで隠すのは上派? 下派? はある。それは永遠のテーマ。


 なんで私がそんなことを話題にしているのかというと。



 今まさに露天風呂に入っているからなのです。いやっほ~~~~い。



 私たちは泉さんのニセ札パワーで「HOTEL パッケーン」というお高目ホテルにチェックイン。さっそく露天風呂をいただいているところなのです。


 このパッケーンは、東西を細長い山々に挟まれたこのユーズナーカホカ村の、東側の尾根のちょっと低まったところ、峠に建ってるホテル。八種類の景色が見れるのが売り。


 そのひとつ。石造りの三階建てで屋上が露天風呂になっているので、夕方お風呂に入ると、海に沈みゆく夕日が見れてしまうのです。


 お風呂自体は、自然石で囲まれた湯舟と竹で作られた目隠し。作りは豪華だけど紘国の露天風呂と変わんないね~。


「露店が並んでたよ」

「なんか、夜はダンスショーとかもあるらしいっス」

「後で食べ行こぉ?」

「その前に。ホテルの夕食も楽しみにしてくださいね。ここは良きですよ」

「愛依、今夜は寝かさね~ゼ☆」

「うん。久しぶりに語ろうね。麻妃ちゃん」


 うんうん。夕日の絶景に感動しつつも、実際こんな感じだよ。女子のお風呂での会話ってさ。

24時間開いてるお風呂で、ひたすら恋愛論語り合ってたら夜が明けてた、とかって実話もある。



「あの、‥‥‥‥姫の沢さんも、どうですか?」


 と、愛依さんに誘われた。まきっちも頷いている。すっかり元気になった愛依さん。


「もちろん。参加しますよ~」


「ああよかった。でも麻妃ちゃんと姫の沢さんの中に、わたしが混ぜてもらう感じかな? わたしが誘うのも変だよね? ふふ」



 良かった。愛依さんはやっぱりいい人だ。ぬっくんが選ぶだけはある。


「愛依も、ウチみたいに下の名前で呼べばいいじゃん?」

「え? いいの? じゃあ『ゆめちゃん』?」

「あ、できれば『ひめ』のほうで‥‥‥‥」

「じゃあ、『ひめちゃん』。うふふ」




 お風呂上がって涼んだあとは、ホテルの中庭で夕食だった。紘国の感覚で言えば「欧圏風コース料理」なんだけど、この土地で採れた産品で作られたものはどれも美味しかった。


 そして中庭にはちょっとしたステージがあって、私たちが食べながらショーを楽しめる趣向。いやあ。泉さん奮発しすぎだって。


 軽業師さんの曲芸とか手品とか色々観たあとで、キレイな女の子たちの歌と踊りになったよ。フィナーレっぽいね。


 フラダンスに近いかな。7人で踊るダンス。みんなおへそ出してるし。チャララ~~♪



「‥‥‥‥‥‥」


チャララ~~♪


 うえ? 私この曲、聞き覚えがある‥‥‥‥?


チャララ~~♪





 なんだっけ? このフレーズ。チャララ~~??






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