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第二部 第31話 泉花音Ⅱ③ と第六部プロローグ

 




 異世界でとんでもない「お金の力」を手にしていた泉さん。その力と彼女自身の交渉術が炸裂して。

 何はともあれ、盗賊団は撤収した。



 そうしたら、村の人たちもちらほら出てきて。


「いやぁ、いざとなったら足がすくんで‥‥」

「障壁魔法で守られてるとはわかっていても‥‥子供を抱えて泣いていました」


 加勢できなかったのを謝られた。



 でもしょうがないよ。家に火をつけられ、入り口をドカドカ叩かれてたみたい。


 そして「こういう時には家から出ずに。私が大規模障壁魔法をかけるから」とエイリア姫と取り決めていたらしいからね。


 あと、ミナトウ村も、この村の防備を強化することにしたらしいよ。「借り空き家」側の壁とか、あちこち崩れてるし。

 このままだと普通に侵入されちゃうからね。いい機会だよ。




 ***




 一夜があけた朝。私の質問タイム、その2。

 姫様‥‥もとい愛依さんに、気になったことを訊く。


「‥‥‥‥で、その『強制妊娠』した男の人は、その‥‥どうなっちゃうの?」


「はい。‥‥女性ホルモンのエストロゲンが少ない男性の身体は、本来出産の痛みには耐えられない、とされているわ。骨盤の形も女性とは違うし」


 昨日の襲撃から一晩経って。愛依さんはそのまま、その人格が表出した形になってる。あ、「本来の精神と体に戻った」のほうが正確か。


「たぶんだけど。その激痛に精神が持つかどうか。トラウマになるのは間違いないと思うわ。通常の生活ができるかなあ」


 聞けば愛依さんは、エイリア姫の意識下でずっと眠っていた状態だったみたい。


「‥‥うっすらと憶えている感じ、かなあ。明け方うとうとして目が覚めて、身体は寝てるんだけど誰かが喋ってるのはわかる、そんな感じよ」


 だそうだよ。じゃあ?


「うん。エイリア姫は今、わたしの中で眠ってるよ。そういう状態じゃないかな? ふふ。何か変な感じね? ふたりとも覚醒して、秒単位で人格が入れ替わったらちょっと面白いかも。ね? べ‥‥暖斗くん」


 それって他の人に「今はどっちの人格でしょう?」ってクイズ出せそう。

 ‥‥まあそんな、呑気な話じゃないんだけどね、状況。


「それはややこしいね。でも何となく姫か愛依か、僕はわかる気がするよ?」


 ぬっくんは、昨日より優しい目をしていた。




 昨日は村の人たち主催で、宴会を催してもらった。盗賊から守ってもらったお礼だって。


 確かに。村としてはあんな大人数の賊に襲われて、壊滅してもおかしくないのに、結局実質被害はゼロだもんね。しかも今後盗賊団が村を襲わない約束、も感謝された。


 そしてあの盗賊団は(やよい)さんが考察していたよ。あの規模の盗賊団はなかなかいないので、恐らく大半は傭兵じゃないか? と。戦争とかそういうニーズが枯渇したらやむを得ず盗賊をやる手合いじゃないか? って。


 そういえば「傭兵の方が儲かる云々」とか言ってたよね。





 そして、今現在!


 私たちは早朝から、いそいそと温泉へ向かう準備をしている。


 こういう時って準備も楽しいよね? みんなテキパキ動いてるよ。


 そしてさらに朗報。姫様の【次元収納】、アイテムボックスは機能していた。春さんの考察では、「そもそも普通に逢初さんの能力として使えるからでは?」だそうだ。


「あ~良かったわ。姫様に色々預かって貰ってたから。――ただ、今後のためにリスクヘッジは必要ね?」


 泉さんはこうやって私の知らない単語を使う。――何? リスクヘッジって?


「ウチも知らん。ってかウチに訊くな」


 まきっちに冷たく言い返された。‥‥だって。もう昨日から色々質問しすぎて、話しかけにくいんだもん。




 ***




 ともあれ、出発! うや~い!


 あのビリビリボロボロだった愛依さんの服も、同じ感じで新調できたし、その霊験あらたかな湧水のある温泉街「ユーズナーカホカ」に向かうことになる。


 そしてその移動は泉さんがチャーターした馬車だった。元々都会の富裕層はこの馬車をよく使うので、大きな街には「ユーズナーカホカ」への定期便があるそうで。


 取りあえずミナトウからその街まで行って、そこからその定期便に乗り換えるそうだよ。



 9人の大人数だったから、馬車は2台。だいたい2時間ごとにお馬さん休憩が入るから、その度にメンバーをじゃんけんで入れ替えたよ。


 途中、話し疲れたぬっくんは寝ちゃったけどね。残りの女子はしゃべり倒しました。ひたすら。



 その中で。


 例の泉さんと隣同士になる機会があった。もうすぐ中継の大きな街「ミーシャ市」に着くころだったんだけど。


「あら、じゃあゆめさんも、みなと中央高校志望なのね。お互い受かるといいわね」


 お互いの身の上話から、中3での進学先の話になって。


「あの、『カノン・ギフト』っていったい? 訊いてもいいですか?」


 周りに訊いてもよく分からなかった泉さん。その人物像や能力。

 直接本人へと、私から切り出したよ。‥‥すっごく気になってるんだよね。あの謎の紙束もそうだし、いくら交易で稼いだとしても、いくらなんでも羽振りが良すぎる。


 14歳の女の子が異世界転移して、なんの基盤もないのに商売とかが成立する? しかも、私たち「あっちの世界」から持ち込んだ文物とか無いし。

 どう考えてもおかしいよ。


 だって。





 あの盗賊に「1,600万円」! ポン! だよ!?





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