第二部 第21話 3人娘③ いや、RPGとかで仲間がだんだん増えてくのは王道だとは思うよ? でもさ。
ミナトゥ村の夜。貸家でのガールズトークは続く。ぬっくんの寝顔鑑賞会から、そそくさと円陣へ隊列変化。みんなで布団から出した顔をつきあわせる。
目的はもちろんガールズトーク。ちなみに装備は全員パジャマです。
「‥‥ま、まあ私は。結局暖斗くんは憧れの存在のまま体験乗艦も終わったし、気持ちの整理もついた頃に今の彼氏とで」
え~。そうだった。浜さんのそっちの話も聞きたい。
「ま、まあ腐れ縁というか。親同士が昔からの知り合いで。そ、そいつラッパーになるとかぬかしてたら本当にデビューできそうで」
「え~~すご~~い」
「そう。いちこの幼馴染みなんだよね。まあ10歳くらいからなんだけど」
「『プロになれたら付き合ってくれ』ってい、言われて」
「「きゃ~!」」
「無理だと思って『なれたらね?』って答えて、なれる訳ないじゃんだったんだけどなっちゃったみたいで、ま、まあ流れっていうか勢いっていうか、私も意外だった」
「「すご~~い」」
んん? 浜さんいつもより女子っぽい言葉使い? 恋する女子は良き。
「そう。それはそれは意外だったのよ。いちこがまさか、そんなにコロッといくとは。‥‥‥‥でも確かに。暖斗くん好きになったのもコロッとだし」
「桃山さんから見てもそうなんか。ウチからしたら青天の霹靂だった」
「そ、そんな大げさな」
「さいはて中女子はホント男子に免疫ないから‥‥‥‥」
「う、うたこまで。うたこだってほ、惚れやすいし」
「私はそんなじゃありません~~♪」
「でもウチらさ。『ラポルト16』って地元じゃ有名人じゃん。ネットでの身バレは防がれてるけど。正直アレコレハナシは来るよね? 『うちの息子どうですか?』的な」
む? やっぱそうなんだ。まきっち以外も。
「私もその話聞きた~い」
「いやひめっちはモデルなんだから。ある意味ウチらよりハナシあんでしょ?」
「そうよう姫の沢さん。私はそっちの話が聞きた~い」
「う~ん。まあ、無い事はないけれど、事務所的にNGだから」
「紘国の婚活事情からしたら、贅沢なハナシではある」
「じゃ私から話すから、教えて教えて!」
「え~~うたこ、あのハナシ解禁するの?」
結局こうなるのよね。ガールズトーク開始。
桃山さんの「ラポルトを降りてからのその後。言い寄って来たオトコ達」シリーズ。
桃山さんって男子受け良さそうなんだよね。コミュ力すごいし、気遣い最強だし。その上美人なんだけど「親しみやすい可愛い子」でもある。
弓を射る時の気丈さ、気高さ、からのあの両目が横線になるにっこり笑顔のギャップ。その破壊力。うちの事務所の社長とか声かけると思うよ。普通に。
だから良家からの良縁バナシばっかりだと思ったよ。てっきりさ。
でも話をだんだん聞いていくと? あれれれ? 彼女のステイタスの割に良い話がなくてびっくり。そりゃ確かに紘国は男性社会だし、さいはて中だと「男子と話した事ないだろ?」っていう謎マウントで来るオトコが予想以上に多い、っていうのはわかるけど。
「えっ? それってありえなくない?」
「そうなのよ~~。それで」
「それで?」
何か、まあまあの家柄の御曹司なんだけど、ちょっとご遠慮したい方に好かれちゃったみたい。御曹司だから、桃山さんをどうにかできると勘違いしてるフシもあるし。そんなケースが、×3。
なんか事務所のアイドルの卵の厄介勢みたいなハナシだね。ファンになってくれるのはありがたいんだけど、距離感バグってたり、独善的だったりしてさ。
ずっと桃山さんのハナシを聞いてたんだけど。
「‥‥向こうから‥‥して‥‥されて‥‥‥‥」
「‥‥断ったんだけど‥‥‥‥みたいな?」
「だけどけっこう強引で‥‥‥‥最後は‥‥」
男運! ああ男運!!
けっこうエグい人たちが来ててびっくりした。芸能界並みだよ。いや~、やっぱり有名人になるって難しい面があるよね。思わずその顛末に聞き入った。
「‥‥なんだけど‥‥されて‥‥してきて」
「ええ~! ウソありえない」
「‥‥‥‥ってなるでしょう? ‥‥でも‥‥‥‥されて」
「そう。うたこは大変だった!」
「‥‥だからもう‥‥に相談‥‥でも‥‥ってから‥‥」
「なんだそれ~。ウチだったらとっくに通報だゼ☆! 」
と、聞いてるこっちがヒートアップしてきた所で。
不意にまきっちが枕をいっこ、ぽーん、と放り投げた。
「‥‥‥‥‥‥ぬっくん。盗み聞きは良くないゼ☆」
ばふん。
寝ているハズのぬっくんの顔に、命中。
から布団を飛び出る黒い影。
「そんなに騒いでたら起きるよ! どうせ俺の寝顔見て! イジったりして笑ってたんだろ!」
「うわ! ゴメン! ゴメンて! ぬっくん!」
ひさびさ見た。「睡眠を邪魔されて怒る一人称『俺』のぬっくん」&「脊髄反射で無条件降伏するまきっち」。
‥‥‥‥‥‥でもそれ以上に怒ってる人がいた。
「ヒドイ! 暖斗くん聞いてたの今の話!? ヤダもう~~!!」
桃山嬢だ。‥‥かなりエグイお話してたからね。ちょっと男子には聞かれたくないレベルだったかも。
「ちょ!? 桃山さん? 僕は寝てて‥‥」
起き出したぬっくんの肩をガクガクゆする桃山さん。涙目だ。
「聞いてたんでしょ! 最低!」
「イヤ肝心な所は全然‥‥‥‥」
「ほら聞いてた! 私何もされてないからね!? 被害者! 全部忘れて!」
「わ、忘れるよ! じゃなくて聞こえてないから! 相づちの声が大きいから!」
「ほら~~!!」
「い、いやえっと!」
「忘れて~~~~!!!」
「‥‥‥‥さて、さいはて中コンビは明日出発だし、そろそろ寝よっか? あ、姫さんと3人娘の会談ってどうなったんだろ?」
まきっちが他人事みたいに言ってた。
‥‥‥‥まきっち。私アナタとの友情再考していい?




