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第二部 第21話 3人娘① いや、RPGとかで仲間がだんだん増えてくのは王道だとは思うよ? でもさ。

 





「やあ。みなさんお揃いで。それに、姫の沢さん」


 先頭の黒縁メガネさんが軽く会釈をする。「附属中3人娘」の子恋光莉さんだ。一拍置いて後ろのふたりも。


「お久しぶりです。まあ、姫様って本当に逢初さんそっくりなのね」


「‥‥‥‥そう聞いててそうだってだけじゃん。ども」


 先に話した明るい髪色の美人が渚陽葵さん。後ろでふてくされてる幼い顔立ちが紅葉ヶ丘澪さんね。


 紅葉ヶ丘さんはなんかバランスボールくらいの宝珠にうつ伏せに乗ってぐったり、死んだ目でふわふわ空中浮遊をしてる。あ~、本当に体動かすの嫌いなんだ‥‥‥‥。


「ここでは何ですから中へ」


 姫様がそう言ってぞろぞろとぬっくんハウスへと入っていく。春さんは村長さんと話をしてた。姫様の施錠した簡易結界に3人娘が干渉してしまったので、村長さんの所にも知らせが行ってしまったらしい。まあ、春さんならその辺上手く説明してくれるだろう。


 ぬっくんハウスは紘国建築で言うところの六畳二間の2DKだよ。さすがに10人入るのは厳しい。桃山さんが浜さんの袖を引っぱりながら「私たちはここで」と土間に腰かけ、紅葉ヶ丘さんは渚さんに押し出されて浮遊宝珠ごと庭へ。


 いや~~。なんか申し訳ないよ~。


 そうやって何とか狭い部屋に大人数で入っていたよ。ぬっくんやまきっちが気を使って外に出ようとしたら、子恋さんに止められた。



「重要な話を持ってきた。一緒に聞いて欲しい」――とのこと。




「私たち附属中3人娘は、軍事国家カミヒラマの名代として参りました。カミヒラマはエリーシア国に、軍事同盟の締結を希望しております」


 ぬっくんに袖を引っぱられた。「エリーシアってこの国のことだよね?」って。


 そうです。エイリア姫が王女となっている、まさにこの国だよ。


「‥‥‥‥この国、エリーシアはクーデターによりわが父、国王は不在、わたくしは確かに王女ですが、この村に身を隠している身分です。そんなわたくしが、同盟のお話を受けてよいものですか?」


「カミヒラマ国王は、エイリア姫にこそ是非に、と仰せです。先日我が国は、魔王軍の駆逐に成功しました。今が好機です。人類同士で争うのを止め、力を合わせて魔王軍と戦うべきと思料致します」


「‥‥‥‥たぶんだけどさ、魔王軍を打ち破ったのも、このタイミングで同盟話持ってきたのもあの、子恋さんの描いた画だと思うよ。勘だけど」


 ぬっくんが私に耳打ちしてくれた。まきっちもあきれ顔でこくこくと頷いてる。そうだよね。あの砦で魔王軍を止めて、追撃までしてる。「これ、敵を引き入れて殲滅したガンジス島の状況と似てる」って言ってたもんね。


 子恋さんがメインでエイリア姫に詳しい説明をしていて、随時渚さんが補足したり和んだ会話を入れたりしてる。‥‥ああ、これってテレビショッピングの動画みたいだ。



「‥‥‥‥。ですが。王城でのクーデターの折、わたしの本来の身体は敵の手に落ちたまま、この身体はあなたたちのご友人、逢初愛依さんからの借り物。そんなわたしが、国の代表として認められるでしょうか?」


 わたしも詳しくは聞けてない。でも内部に愛依さんの意識を残したまま、この世界でエイリア姫としてふるまう姫には、複雑な事情があるみたいだね。私たちの世界に意識を転移させたのも、そもそもそのクーデターが原因、緊急避難で止むを得なかったらしいし。



「でもそのメガネの人は悪魔の頭脳だから。アテにしていいと思うよ?」

「そだねえ。子恋さんの見立てなら、乗るかな~」


 ぬっくんとまきっちが、迷う姫様にアドバイスをしだして。


「も、もう決めたらいいし」

「ね。悪い話じゃないよ。まあ、国がこんなじゃあ、大変だと思うけど」


 と、浜さん桃山さんも援護射撃を始めた。


「父も隠遁して表に出て来れぬ始末ではございますが‥‥」


 受けてもメリットしかない、とは姫様もわかってたよね? だけど正式な同盟締結には、やっぱりちゃんと王城で、って思ってたみたい。でも仲間である「ラポルト16」勢の説得に後押しされて、同盟を決めた。


「‥‥‥‥なんだか、愛依さんの声も聞こえた気がしました」


 彼女は胸に手を当てながら言ってた。




 ***




 なんか、村長さんがもう一軒家を用意してくれた。長期遠征とかする冒険者の仮宿で、ギルドの人が利用する家で、今のシーズンは空いてるんだって。民泊?


 わたしとぬっくん、まきっち。それに浜さんと桃山さんがそっちに泊まる事になった。姫様は色々詰めの話があるから附属中3人娘と。春さんが護衛兼身の回りのお世話をするから、あっちに残ったよ。


 うや~~い。お泊り会だ。ラポルトの艦内もこんな感じだったのかな? 


 枕投げ? 枕投げやる?


「ひめちゃん。さいはて中コンビは明日出立だから。今日は遊ばないよ」

「ごめんなさい姫の沢さん。またいつかやりましょうね?」


 私ひとりではしゃいだら、なんかぬっくんに怒られて桃山さんにフォローされた。


 そうだ。ラポルトのメンバーってあの1年間もの研修と選抜を受けて、それに耐え抜いた人たちなんだよね‥‥。私みたいに事務所のコネで「特別枠」に入ったのとは違う。


 ぬっくんも含めてなんだけど、基本同じ14歳とは違ってしっかり者というか、どこか大人の空気を纏ってる。全員優等生。



 そして知っている。この浜さんはその1年研修のどっかでぬっくんを好きになって、「ふれあい体験乗艦」中ずっとぬっくんのことを想ってた。


 となりの桃山さんは親友として、浜さんを応援してた。――でもここがややこしいのは、その桃山さん本人が、「ぬっくんとの相性が抜群」で、選抜された子だってこと。


 なかなか皮肉な組み合わせだよ。なんか配信でよくあるドラマみたい。


 実際に桃山さんは「ぬっくんのフォローをする狙撃手」として抜群の戦果をあげた。浜さんも盾役として覚醒して、ホントは予備兵力だったけどスタメン入りした。


 今日見た彼女たちは、みんなと、ぬっくんとの連携はすごかった。‥‥背中を預けあう、って言うの? やっぱり実際にあの戦役を戦った戦友同士、心がつながってる気がした。


 【リンク】の成果で一喜一憂してた自分が恥ずかしい。彼らはそんなウイットなこと気にせず、ただ前を見て進んでいく人たちだ。


「ひめっち~~。なにひとりでたそがれてんだよ~~。絡め絡め♪」


「ひ、ひめさん。モデルのお仕事って‥‥。あと使ってるコスメをご教授‥‥」



 みんなでお布団に入って、私はマクラを抱いて考え込んでいたら、まきっちと浜さんが話しかけてくれた。


 ‥‥見るとぬっくんはもう、瞳を閉じて寝息を立てている。



「ひひ。こんな女子に囲まれちゃあ、寝るしかね~よな。あれはタヌキとみた」





 まきっち。そこはイジらないでいてあげて。






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