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第二部 第20話 うわさ話② 暗黒微笑のあの黒メガネさんは異世界でも、な件だよ。

 





 その日の午後。予定通りちょっと遠目の遠征に向かった。


 メンバーは私、(やよい)さん。エイリア姫様。ぬっくんとまきっち。そして浜一華さんと桃山詩女(うため)さん。


 あ、遠征って言ったけど、討伐だった。ギルドで請け負う依頼の高難度の物を、このメンバーでやってしまおう! という姫様の提案だよ。


 あと【リンク】の予行演習もある。午前中説明を受けた、この世界独特の技。‥‥技って言って正しいのかな? 魔法技術って言えばいいか。


 でもつくづくこの世界って、私たちの世界の「ゲームとかのファンタジー作品的な物」なんだよね。春さんが「それは多分ですね。こちらからの転生者か、この世界の知識や経験の記憶を持った方が、ゆめさんの世界でそれを元にそういう創作物を作ったからじゃないですか?」って言ってた。


 う~~ん。確かにそんな気も、言われてみれば。


 この世界の度量衝とか言語って、私たちの世界から渡って来た人たち(主に紘国人)がもたらしたって春さん言ってたなあ。じゃあ、その逆もアリかな。何しろ私たちも含めて、人が行き来してるんだもん。



「ここですね。では、一旦休憩をしましょう。春」

「はっ! ただいま」


 荷物持ちの春さんがレジャーシート(的な物だよ)を出して敷いていく。桃山さんがすっと近づいて、シートの端を持って広げるのを手伝って。



 ギルドで請け負ったのは魔獣討伐だよ。ミナトゥ村から歩いて2時間くらいのところなんだけど、洞窟があってその入り口付近に魔獣が住みついちゃったんだって。なんか資源とか採れる洞窟だから、安全のために懸賞金付きで討伐依頼が来てたんです。



 桃山さんと浜さんは明日、元いたザイガ村へ一旦戻る事になっていた。その路銀のためにも、私と春さんのカミヒラマ国行きの経費のためにも、ここで成果(つまり臨時収入!)が欲しいところ。できれば野宿の回数減らしたい~!


 目的地までもうちょっと、という場所でお弁当を広げて休憩になった。セーブポイント? 違うね。大体冒険者パーティーが休憩できる所ってこういうちょっとした平地だし、前の人が使った焚火の跡があるからね。私も大分わかるようになってきたよ。



 野菜多めのホットサンドをほおばりお茶を飲んだところで、目的の洞窟に向かうよ。大勢でのランチ楽しかった。みんな和気あいあいとして。中学校の給食を思い出しちゃった。



「あ~なるほど~」


 現地へ到着してみんな同じセリフを言った。だって。


 山の岩肌にある洞窟の入り口に石板? みたいな魔物が出現していて、見事に入り口を塞いでる。なんか山の斜面に立てかけられた、夏用の日よけの(すだれ)みたいだね。

 高さ5メートル、幅3メートルくらい? その石板に目鼻がついていて、近づけば呪文を吐いたり威嚇をしてくる。


「寄らなければ反撃も来ません。ですが」


 春さんによると、かなり高ランクの魔法得意な人でも倒せないんだって。でも近づくと濃い目の反撃が来るので、削られてワリにあわないと。で、倒せる術者がいないから、懸賞金もだんだん上がって、今日に至るそう。


 どの冒険者が攻略するか、「うわさ話」になっているんだって。


「そっか。魔法で射程攻撃したいけど、それだとダメージ通らない。でも【大魔力】があるからね」


 そうよねぬっくん。エイリア姫の【大魔力】と【リンク】すれば、私の魔法だって必殺技級になるもんね。きっと。



「‥‥‥‥わたしの【固有スキル】は【大魔力】ではないですが?」


 姫様また何かさらっと重要な事を言った気がしたけど、みんな気づかなかったよ。今いるメンバーでペアを組んで、能力を【リンク】させる大会、その抽選してたから。


 最後は姫様の能力で倒すとして、最初の予定として各自で【リンク】を試す事になった。あの簾の魔物、確かに魔法を試す標的にはちょうどいい。物質系の魔物だし、意識とか感情が無いタイプだから、遠慮なくやっていいって。




 まずはまきっちと浜さん。


「浜さんと絡むって、実はラポルトでもあんまり無かったなあ」

「そ、そうですね」


 そんな会話をしながら、まきっちが呪文を使う浜さんの背中、肩甲骨あたりに手のひらをつける。


「【リンク】!」


 おお~。浜さんが未修得の【ファイヤーボール】ができたよ! スゴイ! まきっちの能力を浜さんが「借りる」ことに成功してる。


 まきっち→浜さん、浜さん→まきっち、どっちも70%くらいの威力だったって。まあ、普通か。




 次、春さんと桃山さん。


「はい」


 とキレイな声がして、桃山さんが姫様の次元収納から武器を取り出す。紘国伝統の弓だ。昔は「和弓」って言ったらしいよ。こっちの世界の弓職人さんが、なるべく似せて作ってくれたそうです。


 そっか、彼女は「弓道部」。この異世界でも魔法力で作った矢を放つ、弓使い(アーチャー)なんだ。春さんが、弓を引く桃山さんの肩甲骨に手を当てて。



「‥‥‥‥残身」


 凛とした綺麗な射形から、氷の矢が放たれる。うん。【リンク】はエンチャントなんだね。桃山さんが生成した魔法の矢にも、春さんの魔法の「氷属性」がちゃんと付与されていたよ。


 石板魔物の中心にしっかり当たって、爆発した。



「概ね、問題ありませんね。【リンク】で能力を貸しても、70~80%の出力でした」


 姫様のこの言葉の通り、今やったペアはこんな感じ。魔物に当たったダメージを見て、凡そを観測した結果だよ。春さん→桃山さん、が少し低かったくらいかなあ。



 そして、残る最後のペアは‥‥‥‥‥‥。



 私とぬっくんでした。ああああ!?




「いくよ? ひめちゃん」

「は、はいぃぃ。‥‥‥‥‥‥【リンク】!」


 ぬっくんが魔法生成、そして私が【リンク】で補助をするペアだよ。




「【ストーンボール】!」



「「おお~!」」


 大きめの歓声が上がった。彼の通常出力と遜色ない威力だったから。私と春さんは苦手無く複数属性の魔法を使えるけど、ほとんどの人はそうじゃない。ぬっくんも土属性はできないそうだから、【ストーンボール】を生成できたのは、成功だ。


「‥‥‥‥95%、といったところでしょうか?」


 普段からの彼の魔法の威力を把握していた、春さんの観測だ。



 やばい。超うれしい。【リンク】が上手くいくかどうかは、術者同士の「絆」。


 つまり私のキモチがぬっくんに高濃度で伝わった、っていう実測値!



「では、次はゆめさん」「は、はいぃ」



 そしてさっきの逆。私が魔法生成して、ぬっくんが補助する番。



「じゃあいくよ、ひめちゃん? ‥‥‥‥‥‥【リンク】!」


 私が使えない【ライトニングボール】。ぬっくんの光属性の魔法を試してみる。



 少し足を開いて立つ。両腕を前へとのばし、構えた両手の中に意識を集中する。



 掌中に、光の玉が生成された。やった。成功だ。


 ‥‥‥‥‥‥とおもいきや。


「え!?」



 手の中の光球は、みるみる大きくなって、私の身長くらいになった。

 こんな大きいの、見たことない!!


「え!? え!? やば! なんで??」


 集中が切れそうになって、咄嗟に春さんが叫んだ。


「そのまま撃って!」


 巨大な光球は、やや的を外しながら、件の石板魔物に当たって。


「ギャオオオ!」


 魔物は四散した。ドサリ、と地面に魔石を落しながら。


 なに今? なんであんなにおっきな光球が? なぜなぜな~に?


 やば。ぬっくんがやったの? 【リンク】した相手の威力を激増させるって。


 それってまるで。





 エイリア姫の【大魔力】じゃない?





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