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第二部 第19話 茶飲み話だよ。みんな集まれ。Ⅱ⑤

 





 ちょ、ちょっと!! 「愛依さんが敵兵の手に堕ちていた未来」!?!?


 確かにまきっちとぬっくんには聞かせられない。


 ぬっくんブチ切れるよ。ふだん温厚な分、本気で怒ると本当に「怖い」んだから!!




「さっき申し上げた通り。あの時点あの世界に私が存在したこと、逢初さんの意識の中に姫様がいたこと。以上を勘案して送り出しています。なので、あくまでも『可能性として存在した未来』のお話です」


 そ、そうだよね。思わず悲鳴が出ちゃったけど。

 そもそも。実際に起こった邂逅だって、けっこう危なかったんだし。


「あの場で。


 もしもわたしの覚醒、【催眠】の発動が間に合わなかったら。

 愛依さんの気持ちがもっと揺れて、散り散りになっていたら。

 もしも敵兵が愛依さんへの肉欲に囚われず、もっと怜悧で周到だったなら。


 事態は最悪になっていました。敵兵はそこを突くプロでしたし」


「と、いうことは‥‥?」


「ええ。翻弄された愛依さんは自分の人生に絶望し、自暴自棄になり、敵兵にその身を任せたでしょう。‥‥‥‥言ってしまいますが、‥‥わたしも愛依さんもその‥‥男性経験はいまだありません。初めて殿方とそういう行為を致せば‥‥‥‥」


「ど、どうなっちゃうの?」


「女ですもの。愛されてしまえば、気持ちがなびいてしまうこともあるかと。それこそが敵兵の手口でもありましたし。‥‥まあ、愛依さんが当時中学二年生、13歳だったので、さすがに敵兵ゼノス氏は手を出すまではするつもりはありませんでした。かどわかしてツヌに連れ去る、までです。そんな彼を後押ししていたのは、彼の内なるもうひとり。ゼノス王子」


「そっか。こっちの世界の人は、『未成年略取』とかって概念ないもんね。良くも悪くも」


「ええ。なので『最悪の未来』では、自我の崩壊寸前に達した愛依さんは、思わず差し伸べられた彼の手を取ってしまいます。無理もないことです。そして、肌を重ね、情を通じてしまったら。強く深く愛されてしまったら」


「そうなったら、私でも姫様をお救いすることは」


「そうですね。ゼノス王子は婚約者である私に強い執着があります。私が、愛依さんが完全になびくまで。馴染むまで。何度でも。何度でも。‥‥止まらなかったでしょうね」


「ちょ!? 姫様!?」

「そ、そういえば敵兵は190センチの細マッチョイケメン」


 思わず場面を想像しちゃう。いいの? こんなこと話して!?



「大丈夫です。‥‥‥‥いえ。大丈夫でした。逢初さんには、絆があったんです。最後の最後で踏みとどまれる、命綱ともいえるものが。‥‥それが、彼女があなた方3人に伝えたいことです」


 え? やっぱり「この3人」?


「愛依さんが心を開いた初めての男性。その優しさにふれた初めての男性。彼との医務室での日々が、彼女に『芯』をもたらせていました」


「芯」と言った姫様の視線は揺るぎなかった。そして仲谷さん。


「そうですね。あの医務室での何気ない日々。ですが彼女には、それはもうかけがえのない大切なものでした。‥‥あ、私は医務室でのやりとりを盗み聞いたりしてませんよ? ただ、医務室でふたりが睦むたびに、不思議と、自然と。‥‥『最悪の未来』は遠ざかっていったのです」


「私の中にいる愛依さんは、いわば眠りでまどろんでいる状態です。そんな彼女も、ゼノス氏とそんな未来もあったのかと知りました。今は苦笑いをしているようです」


 あ、苦笑いで済むんだ。敵兵に身を任せるって、どんなイメージなんだろ? まあ逢初さんも「経験ない」んだから、想像してるだけだとは思うけど?


 あ、でも想像してるだけ、なのは私もだった。経験ないんだもん。



「かくして『あちらの世界で愛依さんと肉体的に結ばれて、こちらの世界の因果律を変えてしまおう』というゼノス王子の企みはついえました」


「彼女、逢初さんが伝えたいのは、感謝の気持ちです。あのハシリュー村の邂逅、ラポルトのみんなに迷惑をかけたこと。みんなが心から心配してくれて、助けてくれたことへの」



「そんなの何でもないよ? 大切な仲間じゃん。ね? いちこ?」

「そ、そうだよ。逢初さんとはあの時は恋敵だったけど、関係ないし。キズついたら だ、誰かが、私が助けるし」



 うう。ラポルト16の絆はやっぱり尊い!


 一時エグい話題になりそうでどうなることかと思ったけど、いい感じに着地した。

 ホント。色々なことが無事に収まってくれていて良かった。




 このあと。


 庭で洗濯物を干してたぬっくんとひめっちが戻ってくる。


 ‥‥んだけど、ぬっくんはちょっと意外なリアクションをする。



 それは。





 こんな私が、彼のことを好きになった理由そのものだったりする。






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