表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
334/519

第二部 第19話 茶飲み話だよ。みんな集まれ。Ⅱ④

 





 ぬっくんの「マジカルカレント」は。



 この異世界の魔法? 【固有スキル】!?


 確かに「マジカル」って魔法っぽい名前だけれど? ‥‥‥‥それにもうひとつ!!



 あ~びっくりした。「ラポルト16の栄光」それがまさか!?


「敵味方、民間人すべてに於いて、死者ゼロでの戦争終結」

 この人類史上に残る偉業が成立した舞台裏には、このエイリア姫と仲谷さんの暗躍? があったなんて。‥‥‥‥言葉が出ない。



「あっと、でもさあ、話戻るけど。私たちが成し遂げた『犠牲者ゼロの戦争』。結果から見たらやっぱりエイリア姫様と仲谷さん。居てくれて結果オーライなんじゃない?」


 みんな絶句してたからね。気づかい女子の桃山さんが場を持たそうとしてくれたよ。


「何だかんだで、ハ、ハシリュー村の逢初さんを敵兵の魔の手から守ってくれたし」


 相棒の浜さんも追従してくれた。


 そうだよね。エイリア姫が逢初さんの中にいたからこそ、敵兵の前で無防備になっても、間一髪で切り抜けられたワケだしね。

 そうだよ。ここ大切なところだよ。うん。





「ああ、その点に関しては」



 仲谷さんが、すっと手を挙げた。‥‥この人几帳面だから、また何か種明かしする気配だよ。


「そもそも、あのハシリュー村に小Botを引き入れたのは『ゼノス王子の意識に影響された』ツヌ国将校ゼノス氏。あの家に行くのが目的でした。そこに偶然ながら近づいてしまった『姫様の内在意識に影響された』逢初さん」


 んん?


「逢初さんは、姫様の意識の影響が無ければ、あの家に近づくことは決してありませんでした。ご本人も『吸い寄せられるように、気がついたら家のドアの前に立っていた』みたいなことをおっしゃっていましたよね?」


「そ、そうだよ! 逢初さんは『アイゾメ・レポート』でそんな感じで書いてたよ!」


 浜さんが叫んだ後で、姫様が補足。


「申し訳ございません。わたしとゼノス王子の、この世界での因縁、因果律がそうさせてしまったのでしょう。あの時、戦場での経験豊富な渚さん。武術の達人の折越さんが逢初さんの両脇にいました。そして渚さんとわたし、愛依さんは手をつないでいた。通常ならお二方のどちらかが、わたしを止めることができたはずですが、しかし」


 そこまで話していったん言葉を切る姫様。優雅な所作でお茶をひとくち。


「わたしの意識のほうが勝ってしまいました。内なるわたしの意識が無ければ、逢初さんは決してあの家に近づこうとはしなかったはずです。そうすれば、敵兵ゼノス氏との邂逅もありませんでしたし、彼によってその心身が傷つけられることも無かった。『通常ルート』で物語は進行し、彼女がツヌ国に囚われることも、暖斗さんとゼノス氏の決戦もありませんでした。そう。全ては『あの家』に近づいたことから分岐したのです」


 すうぅ‥‥、と息を吸った。


「‥‥‥‥『あの家』。アピドーハ・ミタハ女王の家に」





「‥‥‥‥?」

「それって? あのラポルトが拾った村の女の子?」

「アピちゃんのフルネーム‥‥?」


 ぎゃ~~!!


 もう! なに!?


 この「茶飲み話」。


 さっきから、ぜんぜん雑談とかじゃない。重要な分岐点とか「実は‥‥!」みたいな話ばっかり!




 情報多すぎなんだけど!!!




 ***




「そうですね。おおよそ10の分岐がありました。あのハシリュー村の。逢初愛依さんと敵兵ゼノス氏の邂逅には」



 異世界転移組。私と桃山さん、浜さんが絶句する中、姫様と仲谷さんは割と淡々と種明かしを進める。


「‥‥‥‥そうですね。今ちょうど麻妃さんと暖斗さんが外で物干しをしています。おふたりには悪いですが、好都合です」

「そうですね、姫様。10の分岐、すべてを言うとなると、特に咲見さんにはつらいかと」


 ちょ! ちょっと待って!? どういうこと!?


「待って! 私、ぬっくんもまきっちも大切な親友だよ!? 『分岐』ってタイムリープとかがあるSFとかの『ありえたかもしれない未来』のことでしょ? ふたりが、ぬっくんが傷つくなら言わないで!!」


 そんな私に、エイリア姫が胸に手を当てて、そっとほほえんで。


「‥‥ご心配なく。おっしゃる通り、もうそんな未来は回避しています。‥‥そして、この話をして欲しいと望んでいるのは、他ならぬ、わたしの中にいる愛依さんの意識なのです」


 ええ!? どゆこと!?!?


「この世界で云うところの因果律、あなた方の世界の科学では『遺伝子検査での相性』と言い換えても間違いではないですが」


「うん」


「よく私たちって、意中の殿方を『運命の人』っていいますよね?」


「そうね」


 桃山さんが、代わりに相づちを打った。


「その『運命の人』が、私と逢初愛依さんにとって、ゼノス王子、敵兵ゼノス氏だったのです」


「「え~~!!」」


 転移組三人で、一斉に声を上げたよ。やっぱり女の子は、「運命」って言葉に弱い。



「もう察していたかたもいるでしょう? 何しろ愛依さんとゼノス氏の相性、遺伝子適合率は75億分の1、あの世界の全人類の中で一番相性が良い組み合わせなのです。そのふたりが出逢ってしまったら、いくら机上の計算とはいえ、何も起こらないハズもありません」


 やだちょっと!? ドキドキしてきちゃった!! 彼女の運命の王子様って!?


 仲谷さんが補足する。


「10の分岐、10通りの未来は、私の双子の妹が算出していました。その上で、逢初さんをあの村に送り出しても大丈夫だと判断しました。‥‥姫様を護るのが、あの艦に同乗した私の役目でしたので」


 そうだったね。それがために仲谷さんは「あっちの世界」に渡ったのだし、ラポルトに乗りこんだ。「プリンセスガードナー」だもんね。


「‥‥愛依さんは、この機会に皆さんにどうしても、知ってほしいみたいです。その心の内を。姫の沢ひめさん、浜一華さん、桃山詩女さん」


「そ、そこまで言うなら」

「そうね。私は聞きたいな」

「この3人なのは気になるけど‥‥うん。わかったよ」


 さいはて中コンビの意見は固まった。私もうなずく。


「では。‥‥10の未来、すべてを細かく伝えるのは時間もかかります。端的に、10の分岐で一番重い未来だけお伝えしましょう。愛依さんが、敵兵の手に堕ちる未来‥‥」



「「ひゃああぁ!!」」





 それ悲鳴しか上がらないヤツ!!!!

 し、心臓に悪いよ‥‥‥‥!!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ