第二部 第19話 茶飲み話だよ。みんな集まれ。Ⅱ③
「でも? その【リンク】って私たちもできるんですか?」
「ああ、【リンク】ができる条件ですね。それでしたら‥‥」
私の「え?」を押し流して、話は進んでしまった。
姫様の【大魔力】が【固有スキル】じゃない、ということは?
あ、そういえば、私も【固有スキル】はまだ持ってないけど。
【リンク】についての、仲谷さんの解説。
「ここにいるのは女性ばかりなので理解が早いと思いますが、『対象者と気持ちがつながっていること』。仲良し、絆、愛情、そんな感じです。どれだけ深いつながりか? で借り受けできる能力も大きくなります」
まるで【リンク】の予行演習、とばかりに浜さんに抱きついた桃山さんが。
「ふ~ん。それが一定条件か。じゃあ仲悪い人とか通りがかりの人とかからはムリみたいね。あと、借りたら、貸したほうは何かあるんですか? 『その能力が使えなくなる』とかありがちかも」
「ありません。影響はゼロなんです。なので『借りた』というよりは『コピーした』と云ったほうが正確でしょうね。あと、伝説の勇者様、英雄譚などで、『複数先から借りられた』とか『借りた能力をチューニングした』、『初見、信頼関係ゼロの魔族から強引に能力をコピーした』などの伝承がありますが‥‥」
そう言って春さんは、エイリア姫の方をちらっと見た。
「‥‥‥‥基本的なところはこんな感じですね。ちなみに皆さんも【リンク】は可能ですが、まだ基本となる魔法を行使すること自体に不慣れなので、そちらを重要視してまして。それが今までお教えしていない理由でした」
「な、な~んだ。うたこから借りれたら面白かったし」「そうね残念」
桃山さんに抱きつかれた浜さんが残念そうだった。だよね。私も仲谷さんに能力借りれたらもっと旅が楽になる気がしたけど。
「【リンク】して借りた魔法は、当然オリジナルより威力効果が落ちます。相手との関係性が低ければさらに落ちますし。そうですね。姫様は【大魔力】があるので火力を無理やり底上げしてしまえますが。魔力の高い王族には便利な能力ですね」
そして春さんが私に向き直り、頭を下げた。この流れは‥‥‥‥?
「ゆめさんには申し訳ないのですが」
ほらやっぱり。もう気にしてないのに。
「ラポルトでの最終決戦。まほろ市民病院戦。あの時私は密かに下船していました。逢初さんがオペに加わるべく、病院に降り立ったタイミングです」
「ああうん。あの時仲谷さんそんなことしてたんだ」
「私たちはパ、パイロットでそれどころじゃ無かったし」
「ええ。私が病院のエネルギー棟の守衛さんに【催眠】をかけて通していただき、姫様が病院の重力子エンジンに強化をかけるためです。‥‥申し上げにくいですが、それが無ければあの敵の攻撃で、病院の幾人かに犠牲が出ていました」
抱き合いながら顔を見合わせる、桃山さんと浜さん。
「『あの敵の攻撃』って!?」
「よ、洋上艦隊の曲射砲撃にミサイル混ぜてきたヤツ!」
「ミルフィーユ爆撃、とか名前ついてたね」
「そんなネーミング。ぜ、全然可愛くないし、でも」
「でも‥‥」
「「ほえ~~。あの戦争の『死者ゼロ』の影の立役者だったんだ」」
ハモりながら感心する塞ヶ瀬中コンビのふたり。私も驚いた。
「そっか。姫様だけでも【リンク】使えば【催眠】はできるけど、魔力を温存するためにふたりで行ったのね?」
「さすが。ゆめさん。でもちょっとだけ違います。『姫様は他の方と【リンク】して、ある能力を借りていたから』が正解です。そのために私が【催眠】で梅雨払いをする必要が」
え? それって!?
「‥‥‥‥さっき、今、『病院の重力子エンジンに強化をかけるため』って言ったよね?」
「はい」
「あ!? あああ!!」
桃山さんも気づいたみたい。
「‥‥重力子エンジンの出力を上げる能力‥‥」
「それを【リンク】で借りて」
「び、病院のエンジン強化してミサイルから守った‥‥はわわわ‥‥」
浜さんも驚愕。うがが! ってのけ反ってる。
まさか、あの戦争の成果に、こんな舞台裏があって。
それを、この異世界で種明かしされるとか!?
誰も予想してないってば!
あれ?
あれれ?
ちょっと待って。
ちょっと待ってよう。
つまり。つまりよ?
ぬっくんの「マジカルカレント」って?
この世界でいう【固有スキル】なの!?




