第121話 重力子エンジン解説⑧ #設定語りだみんな逃げろ!
※最後にちょっとした告知あります。
「どうする? 逢初自分で説明すっか?」
壇上から愛依にそう問いかける七道さん。
愛依「いいよ。そんな身内の話だし。わたしはひいおじいさまの足下にも及ばない不肖の曾孫だし」
愛依の表情、ちょっと陰って見えたけど? 気のせいかな?
七道「じゃあコッチで話すか。旧姓阿井染、皇帝閣下からこの功により佳字恩賜されて現在は逢初、逢初愛壱博士。世界有数の数学者」
愛依「現在、って言ってももう亡くなってるけど」
七道「さっき、重力子回路が開発された、ってトコまでやったよな? 重力子の発見。電子との相互作用。で、重力子を操れる回路の開発」
来宮「やっとここまで」
七道「で、ココで問題発生なんだよ。『この回路に電気流すとなんか重力場が生まれます』まではわかったんだけどな。『これだけ電気流したら、確かにこういう風に重力が生まれます』って誰も説明できなかったんだ」
折越「え? だって新発明だからぁ。ソコは今でも研究中だってさっき」
愛依「あ、それは『水口ダンシング』と『マジカルカレントの作用機序』のところね。確かにそれは解明待ちなんだけど、これは『重力子回路の作用機序』のお話だったの」
初島「う~ん。どう違うのか」
網代「あ~ね。暖斗くんが重力子エンジンぶん回す仕組みは研究待ち。コッチは『そもそも重力子回路って一体何なの? 回路の上で何が起こってんの? 信じても大丈夫なの? キチンと数字で説明して?』って問い」
一同「「ほ~~」」
多賀「‥‥‥‥。ち~ちゃんすき。もう抱いて♡」
網代「さっきから。黙れこの魔性の女www」
多賀「え~。ひどい。ち~ちゃんの彼氏寝取っちゃおうかな?」
網代「ゆづが言うとガチだかんな~。あ~ダルい」
え? え? え?
七道「あ、気にすんな。柚月と千晴、DMT整備しながらずっとこんな会話してっから。コレ定期」
一同「「‥‥‥‥!!」」
いやぁ。「男子がいないトコでの女子同士の会話はエグイ」
確かに異母姉たちも言ってたけどさあ。
桃山「そ、そうなんだ。えっと。それで重力子回路の説明は?」
折越「この回路に電気流したらなんか重力生まれます。やったね! じゃあダメなのぉ?」
愛依「そこなのね。きちんとした説明が必要だったの。世界が納得する説明が」
子恋「うん。それはコチラで答えようか」
お? 附属中勢再び。
子恋「あ、暖斗くんプリンごちそうさま。実に美味しかったよ。うん」
渚 「ホント。ありがとね。舵握りながら食べるスイーツの背徳感♪」
紅葉ヶ丘「今後、わたし達が兵役に就いても、ガチの操艦中にプリン食べることはないだろうからね。味わって食べたよ。そういう意味でも」
そうだろうな。ってか。
国家防衛の要が、操艦中にプリン食べる組織なら、紘国民やめたくなるよな。
子恋「と、言うわけで、話を戻すよ」
そうそう。ココが子恋さんと「よく脱線する」七道さんの違うところ。
子恋「ある日突然唐突に、世界の片隅、ここ紘国に重力子回路とその発電装置が生まれた。夢のエネルギー無限発生システムだ。これはこれから家庭用発電機にも使われるし、軍事利用もされる。誰もがわかっていた」
そうだね。でもまさかレース用のドローンみたいな玩具にまで浸透するとは思わなかったけどね。
子恋「だけど、流した電流と発生した重力に、相関性が証明できなかったんだ。これは、マジカルカレントの作用を除外した部分での話」
マジカルカレントはもっと、後になったからの発見だしね。
渚 「公共交通機関とか、こういった戦艦の動力浮力、反重力装置として使いたいでしょう? なのにどのくらい電気を流したらどういう重力がどんな風にどれだけ得られるのか? って明示できなかったのよ。当時、そんな得体の知れない動力源を、大勢の人が乗る乗り物や兵器に使うなんてできなかったのよ」
桃山「そっか。当時は『いきなり暴走するかも? いきなり動かないかも?』、とかも考えちゃうよね。だってわからなかったら恐いもんね」
浜 「ど、同意。得体が知れないないからこそ、恐い」
泉 「自分が乗る乗り物とかだったら、なおさらかしらね」
折越「空に浮く系とか」
仲谷「確かに。飛行中にメインエンジンが発電しなくなっても。浮遊装置が止まっても、アウトですね」
来宮「そっスか。『得体の知れない』イコール『信頼性が無い』」
初島「逆に言えば『信頼したいから、理解できるように説明してよ?』ね」
七道「世紀の大理論『相対性理論』だってそうだぜ。理屈だけじゃなくって『これくらいの重力によってこれくらい光が曲がる。あとこんな現象が起こる』とかを算出して、理論値と実測値と照らし合わせてはじめて実証って言えるんだ」
紅葉ヶ丘「その『相対性理論』、発表から100年経ってもまだ実測してたらしい」
一同「「ほえ~~!? マジ!?」」
愛依「『重力レンズ』とか『重力波』ね。観測する計器が開発されるのまで、本当に100年」
一同「「はえ~~‥‥」」
渚 「そうなの。だから、その証明が必要だったの。客観的な、数学的な証明が。回路の中、示す空間の上で起こっていることの説明と導き出された数値、そしてその数値を裏付ける実測値が」
七道「――んで。『余剰次元数式』で当時数学界の第一人者だった逢初博士に、回路開発中だった水口博士が極秘裏に依頼したんだ」
折越「極秘裏ぃ?」
多賀「‥‥‥‥。回路とエンジン完成、発表は同時。こっそり回路を仕上げながら他のことも同時に進めてた」
仲谷「なるほど‥‥!」
七道「そこからの博士は凄かった。いや、速かった。逢初博士は後に『宇宙祭パリピミーハー理論』と呼ばれる新理論をあっという間に構築し、回路が作り出す歪時空、グラビトンのふるまいを算出」
一同「「ふぇ?」
愛依「まるで新しいオモチャを見つけた童子のようだった、そうよ」
七道「続いて後にフォースル賞を取る『開いた4次元の計算式』にて、重力子回路が生み出す重力を算出しちまったんだ。秒殺! 以上!」
一同「「ふええぇ~~!?!?」」
七道「もののついでに『DEF予想』まで解く無双っぷり」
愛依「むしろそっちのほうでドヤ顔してたみたい。ひいおじいさま」
浜 「な、なんかよくわからないけど、最後算出したところはわかった」
仲谷「‥‥中々に奥深いようですね‥‥」
折越「ちなみわかったかも」
来宮「パねえっス」
桃山「すごい方だったんだ。逢初博士」
初島「おおおお」
泉 「? 『開いた4次元の』って?」
愛依「ええ。わたしたちのいるこの3次元世界は、『閉じた3次元の球体』だそうなんです。そこにもうひとつ余剰次元を足して『開いた』状態にするのがこの計算式の要諦だとか。『場』とか『位相』が絡むらしいんです」
うん。全然何言ってるかわからない。でも大丈夫。あの愛依ですら「らしいんです」って言ってるから。
紅葉ヶ丘「ははっ。安易に『わかった』なんて言ったら嘘つきか馬鹿だと思われるよ。この理論と計算の正しさを裏取りするために、当時世界中の数学者が集まって研究して、答えが出るまで2年かかってるんだからね? よく2年で出来た、というのが私の正直な感想だよ」
ほらね。やっぱり。そして何気に紅葉ヶ丘澪、本格参戦。
愛依「さっきの『相対性理論』。あれも発表当時、理解できた人間は全世界で10人にも満たなかったらしいわ」
それと同じくらいスゴイ発見、発明だったってコトか。
七道「じゃ、そろそろ時間だし、重力子回路の解説はこの辺にしとくか。あと折越、オマエ何がわかったのか後でレポートな」
折越「えぇ~~っ!?」
七道「‥‥‥‥ところで岸尾。今日は静かだな?」
愛依「麻妃ちゃんは静かだよ。授業中はいつも」
岸尾「うっせ愛依! バラすな! せっかく気配消してたのに」
愛依「うふふっ」
告知です。
拙著「ベイビーアサルト」、続けます。
実は最終回の後にもエピソードはありまして、半年前には書き上がってたんですが、納得する出来じゃなかったので封印してたんですね。
ですが、ここで宣言して退路を断って、仕上げることにしました。
時間軸はこの「エンジン説明会」直後~退艦式~その後~ となります。
第4章 赤ちゃんは吠えて見ゆ
あと、2~4部も投稿して行きます。全部で10万字くらい書き貯めてあるんで。




