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第121話 重力子エンジン解説⑦ #設定語りだみんな逃げろ!





「いっけね。『水口ダンシング』説明してなくね?」


 七道さんがレジュメを戻している。


 あ、そうだ。ムズいことをすらすら話してるようで、実は七道さんは天然なんだよ。僕にDMT構造学教えてくれた時も、こんな風になってた。


愛依「たぶんそこからまほろ病院とか更地とか、戦争のお話になって」

七道「ワリ。ここ説明しないと逢初博士も出てこないもんな」


 早口でそう言いながら、数枚のパネルが巻き戻った。


七道「こほん。ちょっとハナシ戻るよ。水口博士が重力子と電子の相互作用を発見した時だ」


 プロジェクターには、三次元的な電子回路の図解が表示される。植物の蔓がくねくね入り組んだみたいで、何がどうなのか全然わからない。ジェットコースターの線路みたいのが、ぐちゃぐちゃって絡まったみたいな図だよ。


七道「これが重力子回路の根幹を成す基盤図な。正直人間の知覚でこれがどうなってるとかはもうわからん。ただひとつ言えるのはこの線路みたいに見えるトコが電気回路、電子の通り道で、これに電気を流すと、重力子も動いてくれるってことだ」


一同「「ほえ~」」


 みんな一斉にその、糸が絡まって毛玉になったみたいなCGを覗き込んだ。


七道「専門用語で迷園(ラビュリントス)って言うな。この複雑で立体的なヤツをナノ単位でシリコンウエハースに転写してんだよ? それを並べて、何層にも重ねて作ったのが重力子回路だ」


泉 「この迷園(ラビュリントス)に迷い込んだ電子が、重力素粒子を動かすのね?」


網代「あ~ね。ゲームみたいなもんかな。この回路を彷徨った電子ちゃんが、まるで『誘うような踊り』をする。そうするとそれを見てた重力子ちゃんも『私も』ってつられて踊る。相互作用って聞くと小難しいけど、要はお互いに影響うけて踊りあうってカンジ」

多賀「‥‥‥‥。ちーちゃんホント説明上手」


折越「お~。ちなみだんだんわかってきたしぃ!」


七道「そりゃ良かった。そこで重力子エンジンのデメリットでもある『立ち上がりが遅い』ってのも出てくる」


浜 「そ、そっか」

桃山「回転槍(サリッサ)の初速がつくのが遅い、とか」

初島「DMTが転びそうになっても頭部方向にしか浮遊できない、とか?」


七道「パイロット勢はわかってんな。そうだよ。夢の技術なんだけど不得手もある。この説明の通り迷園(ラビュリントス)を通った電子が踊りだして、それから重力子がつられて動き出すまでにけっこうタイムラグがあんのさ」


浜 「ちゃんと理由があったんだ。回転槍(サリッサ)が予備回転する理由」


七道「‥‥‥‥まあ。その常識を全部ぶっ壊して瞬間起動(フラッシュブート)させたり空中浮揚(プロテシス・サーカス)させたり、挙句に素手で空間にえげつない重力場を生み出す変態パイロットもいるんだけどな‥‥」


愛依「うふふ。変な赤ちゃんね」


 ん? なんの話?


七道「迷園(ラビュリントス)で踊った電子とつられた重力子の相互作用。これが重力子回路の肝だ。回路は任意の時空を幾何学的に『収縮』させ、指定した方向に重力場を生み出す。指定方向を変える時に『一から起動し直さなければならない』ってのもコレが理由だな」

網代「『今度はあっちのカメラに向かってお願い』って、電子ちゃんが重力子ちゃんにダンスを頼みなおすからだ~ね」

多賀「‥‥‥‥。ち~ちゃん、私もう惚れそう」


愛依「あと、暖斗くんのマジカルカレントのことも」


網代「あ~ね。特定の人間が持つ特定の脳波の周波数が、回路内の電気抵抗値を変化させる現象」

多賀「回路内を大電流が流れれば、比例して大重力を取り出せるはずなのに、そうはならなかった」

折越「う~ん? なんで?」


網代「たくさんの電子ちゃんが『さそう踊り』をすれば、たくさんの重力子ちゃんが答えてくれるハズなのに、そもそも頼む電子ちゃんに人数制限がかかってる、って感じ」

浜「な、なるほど」


 網代さんの喩え、ホントにわかりやすいな。


七道「その制限こそ、水口博士の著書『粒子と踊る』にもある『形而上限界、ガラスの天井』な」

網代「重力子ちゃんがつられてくれるダンスの限界点だ~ね」

多賀「‥‥‥‥。他人の踊りに付きあうにも限度はある」


 うお。多賀さんが言うとなんか重いよ。



多賀「‥‥‥‥。これはもっと、素粒子学が進まないとわからないと思う。でもマジカルカレント『魔法の微弱電流』と名付けられた脳波の周波数、つまり電波によって電子、重力子の『ふるまい』が干渉されてるのは確か」


泉 「暖斗くんを代表するマジカルカレント使いさんには、その電子ちゃんの人数制限を解除しちゃう秘密が備わってるのね」

初島「脳裏に思い描いただけで電子ちゃんの人数制限解除しちゃうなんて。ずいぶんオレ様系の能力よね~」

来宮「言われてみれば。っスね~」


七道「で、ウチのエースパイロット君のマジカルカレントは、皇帝警護騎士団(イポテス)様が驚くレベル」

逢初「本当にすごいのね‥‥! 暖斗くんって」

岸尾「や、ご都合が過ぎるだろさすがに」


七道「ま、マジカルカレントがまだ謎能力すぎるんだよ。コイツの解明には緑町教授、水口博士。そこはもう4人目、更なる天才が現われるのを待つしかね~な。‥‥で、お待ちかね」


 七道さんは右手を上げると、愛依に向かって手を降ろした。





「重力子回路開発に於ける3人目の天才、逢初博士のハナシだ」





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