第121話 重力子エンジン解説⑥ #設定語りだみんな逃げろ!
「軍事的に優位に立ってしまった」
え? 軍が、国が強くなるならいいじゃん。何が駄目なの?
事情を知らない人からすれば、きっとこう言うよね?
無限にエネルギーを生み出せるスゴイ装置を作って、しかもイキナリ実装段階だったのが問題だったんだ。極秘開発の「極秘」の部分も「開発」も、すんなり上手くいきすぎちゃったんだよ。びっくりするくらい。
僕らが水口博士の偉業をあまり知らないのもこの所為かも。完成した時に大々的に発表したんだけど、あまりにセンセーショナルすぎたんだ。
世界が、特に周りの国が驚いちゃったんだよね。
あのツヌ国とかコンギラト諸国とか。
で、「これはやられる前にやらなければ!」みたいな空気になって、この国は囲まれてボコられました、と。でも重力子エンジンの戦場での有用性は凄まじくって。
戦艦が宙に浮くし、DMTガンガン稼働させるし、荷電粒子砲撃ち放題だし。
結局戦争に勝っちゃったんだよ。
それが約10年前の戦争。「グラビトン・ウォーズ」なんだ。
その後、各国でも重力子回路技術はキャッチアップしてきて、僕ら紘国も「技術供与してやっからイチイチ攻め込んでくんなよな!?」ってなったんだけど。
まあ火種が残ってたんだよね?
今回の侵攻は、そんな経緯? いや、歴史って言ったほうがいいかな。そういう色々があって、たぶん起こるべくして起こったことなんだよ。竹取山の噴火は、戦争を仕掛けるキッカケというか「紘国混乱するから今だ!」ってノリなんだろうな。
父さんは「外交の敗北」って言ってたなあ。僕は正直よくわからない。
あ、愛依たちはまだ重力子のハナシをしてる。
愛依「正確には『水口理論、水口ダンシング』と『重力子回路開発成功』の発表は同時よね? 理論はもっと早くから発見されていて、漏洩を恐れて紘国が秘密裏に回路の完成まで秘匿したとか‥‥何かで読んだよ」
七道「そうだな。それで合ってる。整理すると『水口ダンシング』の発見が48年より以前、『回路の開発』が48年。それから2年後に『グラビトン・ウォーズ』」
網代「紘国だけがものすごい技術を獲得しちゃったから、不安に駆られたそれ以外の国が攻めてくるって。あ~。ダルい展開‥‥」
泉 「約10年前。あの『英雄さん』があの『ガンジス島』とかで活躍した戦争ね」
桃山「なんか、歴史の教科書の中のお話みたいだけど‥‥?」
浜 「もう全然、ひ、他人事じゃあ無い感が‥‥‥‥」
ホントそれ。その英雄さんご本人とモメて、そのガンジス島で戦ってるんだから。
浜さんはそのご本人にグーで殴られてから覚醒して、もの凄い啖呵切ってたなあ。
愛依「わたしたちが戦ったあの『まほろ市民病院』の南側、あの広大な更地って、その戦争の時にできたんだよね?」
子恋「そうだね。うん。あそこには元来まほろ市の市街があったんだ。って言っても軍事工廠とかなんだけどね。激戦地だったんだよ」
渚 「艦隊からの曲射砲撃とか衛星軌道からの爆撃、成層圏からの揚陸艦突撃『隕石』とかね。艦から射出されたDMTが暴れたら、そりゃ人工物は粉々、更地にもなるわ」
紅葉ヶ丘「その後まほろ市は北に進展して拡張。あの『まほろ市民病院』は元々戦争用の巨大トーチカを病院に改修したものだ。だから地下に大規模発電施設もあり、バリアシールドもあり。砲撃に耐えうる堅牢な構造物だったんだよ」
おお。ついに紅葉ヶ丘さんも参戦だ。
仲谷「あの病院も、あの広大な平地も、戦争の痕跡だったとは‥‥! あまりに我々に有利な地形。やはり‥‥!!」
うん? 仲谷さんやけに喰いつくな。意外に軍事オタク?
紅葉ヶ丘「ところで暖斗くん」
何?
子恋「何か忘れてないかな? うん」
「え? 僕?」
渚 「あ~~。やっぱり忘れてるわ」
子恋「その、さつまいもモンブランプリン、艦橋の我々には一向に来ないんだけど?」
渚 「ね~~。情報だけ、なんてイジワルよね~~」
やっべ。忘れてた。
でもちゃんと附属中三人娘の分は作ってあるよ!!
暖斗「今すぐ艦橋にお持ち致します!!」
紅葉ヶ丘「私は電脳戦闘室まで頼むよ?」
残りの女子一同「「お先にいただきました~~♪」」
残りの女子一同「「ね? ね? 美味しかったよね~~♪」」




