第121話 重力子エンジン解説②【画像あり】#設定語りだみんな逃げろ!
「この体験乗艦終わったらさ、こういうコト学ぶ機会なさそうだしね?」
貧乏性‥‥もとい勉強熱心なラポルトガールズのために開かれた勉強会。
僕は厨房でみんなに差し入れるべく製菓に励んでるけど、たまにチラ見したりインカムで状況を聞きながら、だよ。
七道「これが重力子エンジンの内部図解な」
一見して違和感に気づくのは、僕。
暖斗「ね、七道さん。重力子エンジンってこんなに細長いっけ? これじゃあDMTに入んないよ?」
七道「おう。そこに気づくのはさすがパイロットって言っとくか。あくまでこれは略図だよ。DMTのはもっと寸が詰まって正方形だし、逆に艦艇のヤツはまんまこの形だ」
なるほど。
七道「じゃ、電気の流れを追う形で順番にいくか。全個体電池があって、ココに電気が溜ってます、と。それでそこからまず重力子回路に通電させます、と」
彼女が図を指し示す。
七道「この回路に電子の流れが起こると『電場』『磁場』『ヒッグス場』も歪むな。電子と相互作用した重力子が働くからな。円柱の箱の内側にらせん状に貼りつけられた重力子回路が、任意の空間を歪める。重力を生み出して目の前にある錘羽根を回すんだ。――いや、一定の方向に重力を発生させて任意の方向に『落としていく』んだけどな」
手元のポインターで図の各所を指し示していく。
七道「じゃ、ココで質問。錘羽根ってこの図みたいに、スクリュー状の形してんだろ? 螺子切ったみたいに。だから羽根って言ってんだけど。で、このらせんと、外部容器に貼ってある重力子回路のらせんが逆向きになってんのはナゼでしょうか?」
僕も思わず手を止めて、食堂に顔を出す。確かに図解には、羽根と回路が書いてあるけど。
右回りと左回り。確かに逆向きだ。
桃山「同じじゃダメだからよね~?」
来宮「わざと逆にしてんスよね‥‥?」
浜 「う、う~~ん」
みんな苦戦してるな。あ、なんか懐かしい。教室の授業みたいな空気だ。
七道「まあガッコの授業じゃないしな。答え行くか。逢初、わかる?」
そう指された愛依は、右手人差し指をくちびるに当ててから。
愛依「空間の影響面積? かなぁ?」
七道「なんでそう思う?」
愛依「えっと。重力子回路にも錘羽根にもおんなじくらいの角度のらせんが切ってあるでしょう? もし同じ向きだと、羽根が一回転する間にピタッと重なる瞬間があると思うの」
折越「ハイハ~~イ!!」
ここで折越さんが突然挙手。ものすごくイヤそうに彼女を指す七道さん。
「そのほうがいいんじゃなぁい? 回路と羽根がピッタリ重なったほうがパワーが出るんでしょ!」
七道「‥‥‥‥折越」
折越「うん」
七道「それはその通り」
折越「やったあぁ! やっぱり。ちなみ天才ぃ!」
七道「でもハズレ」
折越「なぁんでえぇえぇ!」
七道「うるさいな。もう逢初正解言って」
愛依「う、うん。えっとね。折越さんゴメンね? 確かにらせんが重なった時に高い出力が得られるんだけど、その一瞬だけなの。そもそも錘羽根って重元素、超高密度で作られてるでしょう? それは質量を高くするため。重力で得た回転を止めにくくするため。そんな重い羽根を回すのに、一瞬だけハイパワーではダメだと思うの」
折越「あ~ソレかぁ」
七道「その相槌。ホントに理解してんのかアヤシイなコイツ」
折越「なあぁによぉ」
愛依「らせんを逆向きに配置したほうが、常に重なる面積は一定でしょ? それに360度まんべんなくどこかのらせんが交差してるし。このほうが重い羽根を回しやすいし、回転も安定するよね?」
ぱしん、と手を叩く音がした。
七道「正解。あと付け加えとくと。らせんが重なると確かにパワーが出る。でもそれ以外の時は? 重力子エンジンは回転槍とかの回転系切削手用兵装にも使われてんだぜ? 回転の駆動輸出力が一定じゃね~と不味いだろ。それに一回転ごとに一瞬だけ出力が跳ね上がったら主軸に負荷がかかる。それもよろしくねえ。金属疲労がすぐ溜まるからな」
なるほど~! イヤ、僕は知ってたけどね。
七道「じゃ、エンジンの全体を説明してから、今日の本題行くぞ?」




