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第121話 重力子エンジン解説① #設定語りだみんな逃げろ!

※隙あらば設定語る本作ですが、作中ではあまりにマニアックすぎて割愛したエピソードです。

 





「ま~今さらなんだけどな~」


 間延びした声でそうぼやくのは、みんなの前に立つ七道璃湖(ななみちりこ)さんだ。


「潜空艦ラポルト」、毎度おなじみの食堂、第8回目の女子会議。だがしかし。


「じゃ、重力子エンジンの基本のトコからやろうか?」



 ‥‥‥‥何故か? 「DMT(ディアメーテル)構造学講座」になっていた。


 どうしてそうなったのか? 理由がよくわからない。さっきまで、というか今だって、艦内のアメニティで遊びまくっていいハズなんだ僕らは。映画館だけでも、気になるヤツを見るだけで5日はつぶせそうなのに。


 戦争が終わり、運営さんからも「みなと市に着くまで3日。羽根を延ばしていいよ」って言われてる。ましてや、懸念してた夏休みの宿題は完全免除のお墨付きも貰ってる。


 なのにみんな、真面目なんだよな。「あまりに中学生とかけ離れた40日間だったから、二学期にちゃんと復学できるか心配」って声がちらほら聞こえててさ。

 さすが。一年間の選抜をくぐり抜けて選ばれし女子たち。優等生気質というか向上心があるというか。――まあ、彼女たちと夏休みの間、一緒に旅をした僕の所感としては。


 貧乏性なんだよこの子たち。歩んでないと停滞だと感じてしまう、何か手を動かしてないと気が済まない性分。勤勉さの裏返し、と言えば聞こえはいいかな?



「あっハイ。私たちは構造学は修めていますし‥‥‥‥」

「え~~!? 映画とかゲームし放題なのにマジ? アタマおか‥‥イヤ、何でもない‥‥」


 うん。勉強会の開催を聞いて後ずさりしたアマリアコンビの反応のほうが正しい。僕もそう思う。けど。



 しょうがないなあ。女子会(議)だから僕は参加しないけどさ。


 勤勉な僕の仲間たちのために、勉学が進むお手伝いでもするか!(爽やかに微笑)。




 参加者は、愛依、麻妃、初島、来宮、折越、浜、桃山、泉、仲谷さん。


 講師側が七道、多賀、網代、のメンテ3人組。附属中3人娘は航行のオペをしながらインカムで。なんか軍に報告する書類が色々あるんだって。


 仲谷さんは騎士団の人に厨房の自動調理システムの使い方を教わっていた。彼女は自動でできる部分の調理も、ほぼ手作業でやってしまっていたらしい。道理で厨房から出てこない訳だ。

 それで今回使い方を習得して、ほぼほぼ食事作りの労働からは解放されたんだけど。

 逆に教えてた騎士団の人がドン引きしてたね。

「なんで使わなかったの?」

「あると知らなかったので」


 どうりで。もし「特別枠」がそのままひめちゃんだったら、003番機と調理当番と掛け持ちだから大変だったハズだと疑問だったんだよ。カラクリがわかった。


 代わりに厨房は僕が使ってる。会議のデザートを用意するのさ!


 ‥‥‥‥あと、この40日間ほどんど洋菓子作ってないからね。復帰に向けて勘を取り戻しておかないと。

 チーズケーキは規定の高さまで膨らむだろうか? クッキーは色変性を起こさないだろうか? シュー皮が一番心配だ。あれは毎日やらないと感覚が狂うから。失敗(ロス)率が高かったらどうしよう?



 ‥‥実は、僕も心配性のたぐいか。‥‥ははっ。




 ***




「そうだな。まずは図解から見てくれ」


 七道さんが手をくいっと動かすと、レーザーポインターの赤い光点がアイコンにふれて。スクリーンになってる食堂の白壁に、重力子エンジンの分解図が出る。各自のパッドにも転送されてきた。



 紘和60年9月2日(月)。午後2時30分。


 中の鳥島、国際名ガンジス島から本土、みなと軍港へ向かう海の上で。





DMT(ディアメーテル)構造学講座」が始まった。





次回はエンジンの図解書きます。

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