第120話「エンディング 後編」④
わたしは、足元のレースを持ち上げて、べびたんに、ゆっくりと歩み寄った。
♰ ♰ ♰
もっと近づいていいかな? 暖斗くん。――うん。ありがとう。立ってください。そして。
目を見せて。もっと近くで。その瞳を。
‥‥‥‥‥‥‥‥綺麗。
‥‥‥‥本当に綺麗。
暖斗くん。いえ。咲見暖斗さん。
わたしもあなたに、伝えたい言葉があります。それはどうしても、あなたの瞳を見て言いたかったの。
――――やっぱり。透き通った湖面のような、そこに映ったハシリュー村の星空のような。
本当に綺麗な瞳。
気づいてた? わたし何度も、あなたの瞳に吸い込まれてたのよ。それはもう。「1回目の医務室」の時から。
ありがとう。
わたしは、あなたの「右手」で、はじめて人のぬくもりを知りました。人の持つ熱を。
そして、誰かと一緒にいることで、ダメかなあと思っていた人生を幸せにできることも‥‥‥‥。
その「右手」が。熱が。あなたが教えてくれました。
そんなあなたに、せめてお礼を。心からのお礼を。ずっとわたしの心の中にあった、わたしの真実を送りたいと思います。
暖斗くん。
「この世に、生まれて来てくれて、ありがとう」
「この世界に、存在してくれて、ありがとう」
「わたしと、出逢ってくれて、ありがとう」
こんなわたしでよければ、逢初愛依の すべて、を捧げます。
♰ ♰ ♰
「これって?」
「3Fの後部デッキで、暖斗くんが送った言葉?」
「そうそう」
「そ、そうだよ」
「こんどは愛依からか~」
「目頭が‥‥‥‥」
「おめでとぉ愛依ちゃあん‥‥」
「うん。感動だ」
「良かったわねえ」
「決まったな」
「重いっスね」
「想いとかけた? 櫻?」
「‥‥‥‥。重い。想い。そしてこのアイデアいただき」
「やめとけ~。ゆず」
またさっきと同じように、ざわざわと会話のさざ波が立つ中。
愛依が僕の手を取った。
「あなたに委ねます。すべて」
わっ!! と歓声が上がった。みんなにパチパチ叩かれた。麻妃だけは「そういえばひめっちも仲谷さんも遅いゼ。ひめは昔からいいトコ見逃すからなあ。‥‥あ、スマホ圏外?」と、まだ来ない親友を心配してた。
それから、改めて輪を作って、みんなで会食して。
僕らへの話題や質問も多かった。
「へえ。土曜日は『暖斗くんの家庭教師』って名目でねえ」
「名目じゃないよ。本当にだよ」
「でも一泊してるんでしょ?」
「うん。わたしはほら、みんなで打ち上げをやったあの一軒家を使わせてもらってて」
「し、週一通い妻‥‥だと!?」
「ああ、あの、入ってすぐ右の紘国風の家」
「将来、婚前同居が始まったらそこに住む予定だから」
「あ。じゃあ夜はどうするの? やっぱ‥‥‥‥」
「え~~~マジ?」
「いえいえ。ちゃんと別居するよ。暖斗くんは第二夫人宅の自室。わたしは離れ。寝る時は離れで過ごすの。勉強がんばってもらわないと!」
「は~~い。がんばります‥‥‥‥」
「そうよ。できれば同じ高校がいいもん」
「いや今から愛依と同じには」
「逢初さんはやっぱ東校?」
「うん」
「ちょっとハードルが高すぎるよ‥‥」
「だめよ暖斗くん。今からそんなじゃあ。お風呂上がりから就寝まで、みっちり勉強見るから、大丈夫よ」
「‥‥‥‥待って。逢初さん。お風呂上がり?」
「‥‥はい。‥‥‥‥?」
「うん? 確か渚学生からの報告で、逢初さんはお風呂上がりは必ず『あの恰好』だったと記憶しているが?」
「そうだよ。私が深夜徘徊で倒れた時とかも、あの恰好で」
「あ~~ね。暖斗くんが来たんでみんなで隠した」
「‥‥‥‥。私より小悪魔キャラ?」
「いただけねえな。寝所を分けた意味がねえ」
「‥‥‥‥え? わたし何かまずいこと言った?」
「い~~や。愛依はそのまんまで良い。面白くなってるゼ☆」
「やっぱり自覚ナッシング、っスか」
「暖斗くん。男の子に訊くのもアレなんだけど、やっぱりお風呂上がりの逢初さんの服装は‥‥その‥‥」
「目のやり場的にはやっぱり? 男子的に?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥女子には死んでも言えない事だけど、他に相談する人もいなくて。麻妃は面白がるし。‥‥‥‥そうです。もう目のやり場が無くて、問題集解くどころじゃなくて」
「うふふふふ。学力より先に悟りを開けそうかしら」
「そうなんだよ泉さん。かなり修行になってるよ。マジカルカレントより自信あるかも」
「何? 自信ついたの? 勉強?」
「ああ、愛依。‥‥そだね。‥‥‥‥おかげさまで。雑念を払う集中力だけは」
「じゃあわたしの肩の荷も少しは軽くなるわ。ふふふ。‥‥‥‥そうだ。暖斗くんはDMTで槍を構えて突撃するでしょ? 婚前同居始まったら。わたしもしようかな?」
「‥‥‥‥なんの話?」
「暖斗くんに 突撃、よ。ふふふふっ♪」
「ベイビーにアサルト」‥‥‥‥‥‥‥‥もとい。
「ベイビーアサルト」
第一部 了
最後までこの作品を読んでいただき本当に、本当にありがとうございます!!
完結。暖斗と愛依、ふたりの物語が、もしあなたの心に何かを残せたのなら幸甚です。
ここで最後のお願いです(*^。^*)
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※あと、外伝にあたる第2部~第5部も20万字ほど書き溜めてるので、随時更新していきます。将来もしかしたらこの第1部に統合するかもしれません。進捗をあらすじか活動報告に上げておきます。




