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第2部 第18話 布陣Ⅱ






 異世界の僕の住む家は、お世辞にも広いとは言えない。


 まあ村長さんのご厚意で空き家を提供されてるから、文句はないんだけど。


 さすがに7人が泊まるとなるとキャパオーバーだよ。寝返りを打つと隣の人とぶつかるくらいの距離。


 ゴハンの時にお隣りに気を使わなくていい配置、って言ったけど、前言撤回。なんかひめちゃんは目キラキラさせながらだんだん近づいてくるし、だからといってそっちばかり向いてると、右側の浜さんに悪い気がするし。


 まあいいや。取りあえず昔話をして、寝てしまおう。――そう。これは半年前。「ふれあい体験乗艦」で、ガンジス島に行った時。知り合いの妊婦さんが手術をするんで、万が一のために島に残る選択をしたんだった。


 そうしたら、本当に敵が攻めてきて。‥‥‥‥まあ、それを想定して訓練をしてたんだけどね。



「最初に降下したのはミロースイ連邦。その近衛騎士団だったよ。コンギラト条約機構軍の中でもミロースイは海に面してない国でしょ? 陸軍が強いんだって。そこの超エリート部隊が来てしまった」


 僕は仰向けで、天井の木材の模様を見ながら話す。


「とにかく血の気の多い人ばかりの騎士団で、他国の傭兵あがりとか、他国の内戦に介入する経験豊富、っていうか戦争大好きな人達の集まりとか。使うDMTはGBC社のEOM-A08 「エラン」。タイマン仕様、って呼ばれるくらい、1対1の個別戦闘が得意なDMTだよ。傭兵系の人はエランじゃないDMT使ってる事が多いから、すぐわかるらしいね」


「ふ~~ん。ぬっくん詳しいんだね。半年前の事なのに、細かく憶えてるんだ」


 ひめちゃんの顔はもう僕の肩、すぐ近くにあった。息をするだけでそれがわかる距離だ。


「わ、私達、附属中3人娘に敵国情報叩き込まれたし」


「そうよね~。でも私達も必死だったというか。割とすぐ覚えたよね」


 右側からさいはて中コンビの声が飛んでくる。僕はそれに軽く頷いて。


「そうなんだ。戦争だもんね。覚えた方が有利だぞって。――で、そのエラン、主武器が「金砕棒」っていう金属製の棍棒なんだよね。英雄さんの「棒剣」みたいな感じの武器で、サリッサとの相性がムチャクチャ悪かったんだ」


 ひめちゃんの背中から麻妃の声が飛んできた。


「あ~。回転槍が肉厚の金属で受けられちゃうんだよねえ。コーラさんも演習でやってたけど、自分の得物犠牲にする覚悟なら、サリッサの回転刃を受けて次の瞬間フトコロに入ればいいんだもんね」


「うん。ミロースイはとにかく1対1が強いから、そうならない様に注意したよ。ある作戦でね」


 うふふ。と右側から声が聞こえた。桃山さんと浜さんだ。


「東トゥマーレとの足並みが揃わなかったのも良かったですね。先にミロースイと単独で当たれたし」


「作戦も上手くいったし」


「ええ~~。私知らないよ? そんな情報。ニュースとかでもやってないでしょ?」


 ひめちゃんが口を尖らせた。もう、僕の肩に唇が当たりそうだ。そして麻妃が。


「まあまあ、ひめっち。軍事情報で拡散するなって言われたんだよ、あの時は。ニュースじゃそんなイチ局地戦まで細かくやらないし。いいじゃん。ここは異世界だし大丈夫だろうから、ぬっくんも話してるんだよ」




「それで次の日に、東トゥマーレの機甲師団が来たんだよね」


「そ、そう。二方面にならなくて助かったし。暖斗くんも休めたし」


「やっぱり違う国同士だから、いまいち足並みが揃わなかったんだよね」


「‥‥‥‥そこまで子恋さん達が計算してたっぽいけど。ミロースイは血の気が多いからたぶん先走る、とか言ってた」


「あの3人は恐ろしいね。こっちの世界でも大活躍だぜ☆」


「‥‥‥‥転移して居着いた先があの軍事国家ですからね。水を得た魚ですね」


 川の字に寝ている一番左端から、声が聞こえてきた。これは仲谷さんだ。


「ひめさん。次の旅はその国に行く予定です」


「頼みましたよ。(やよい)。それと姫の沢さん」


 ああ、ついにエイリア姫様も参加。なんだかんだ、まだ全員寝付けないんだ。ひめちゃんが小声で言う。肩先の湿度が上がる。


「何だろ。これ修学旅行の夜みたいだよね。‥‥‥‥なんだか楽しい。女部屋にぬっくんが遊びに来てるみたいなシチュ? ‥‥‥‥あ、テンションガチ目に上がってきちゃった♪  ふふ」




「東トゥマーレ共和国は装備が特徴的だったね。使用DMTはベルモーテ社のベルシュルトNP。あそこはDMTの損耗を嫌うんだ。自国のインダストリーがあまり強く無いからだって。麻妃が操るKRM(ケラモス)を、DMT1機に対して2機付属させてる。そのKRM、いや、ここでは戦闘用ドローンって言った方がいいかな? それが主に戦って、本体のDMTはあまり戦闘参加しないんだよね」


「ああ、ウチのKRMみたいに遠隔操作するんじゃなくて、DMTのパイロットがAIに指示する感じだね。2機ある内の1機が攻撃、もう1機が防御を担当して」


「あ、さっすが岸尾さ~ん。KRMの専門家キタ。うふふ」


「だからそのドローン撃ち落とせば、撤退してくれる可能性が高かったんだよ。これも渚さんとかの発案で対処法を練習してたしね」


「ひ、被害がドローンで済めば、戦線復帰も早いから合理的だし」


「そだね。DMTだとさ、あのメンテ3人組を見てたからわかるけど、大変だよね。パイロットとして申し訳無かったなあ。だって、肩の装甲壊したとするじゃん? 肩の部品一回バラして修理診断して部品交換して、組み立てて正常に動くかまたチェックして、不具合があったらまた分解して新しい部品組付けて、って正常に動くまでやってたからなあ」


「ドローンだったら修理は後方に回して、新しいドローンと再接続すればいいだけだもんね」


「いやいや、下手に直すより、もうどんどん新品交換していく方が楽なんだってさ」


「まあでもとにかく、攻撃用も防御用も結構高性能で苦労したよね。なんか捨て身攻撃もされたし。正規軍相手によく戦ったよねえ、僕ら。まあ、単に『アレ』が凄かっただけなんだけど」


「そうそう。『アレ』。ウチも『アレ』でテンション上がっちゃってねえ」


「うふふ。『流れ』みたいのができたねえ」


「いや、『アレ』を使いこなした、だ、暖斗くんがスゴイし」


「皆さん立派な戦いぶりでしたよ」


「って仲谷さんはあの時、どうやってラポルトに‥‥‥‥んん? ひめちゃん?」



 僕らは、とめどなく続く思い出話をしていた――――ら、いつの間にかひめちゃんがひとり、土間の方に移動していた。


「どうしたの? ひめちゃん。そっちは土間だよ」


 僕の問いに彼女の答えは。





「あ、うん。そこだと私の寝顔ぬっくんに見られちゃうでしょ? 恥ずかしいから私やっぱココで寝る」






※「わざわざそんな所で寝なくても」と思った そこのアナタ!!


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