表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

254/515

第2部 第14話 2年越しの一発ギャグは賞味期限切れ? そんなのわかってるよう! でも断行する! だってあの人は必ず笑ってくれるから。

 





「あ‥‥‥‥」


 私は目を覚ました。ミナトゥ村、ぬっくんの家だ。


 頬が、濡れていた。


 私が昨夜、村の入り口を消し炭にして戻ってきて。それから。



 隣のぬっくんは赤ちゃんになっちゃって。やっぱり魔法を使いすぎたんだね。ドラゴンの爪でさわらないようにムチャクチャ気をつけたよ。――家の前で良かった。




 と、同時に、私の姿も人間に戻りました。この変身って、時間制? みたい。

 そのまま、朝まではまだ時間がありそうなので就寝して――。




「‥‥‥‥夢。懐かしい夢。ぬっくんのドローンレース」



 そう。夢を見ていた。私が初めてお弁当を作って、食べてもらったイベント。

 ちょっぴり嫌な事もあったけど、泣いた私に優しくしてくれた、実はいい思い出。





 私は人間の姿を堪能する。お布団の上でその感触を楽しむ。



 あ、そうだ。今なら。



 部屋の奥の方にそっと忍び込んで。



「ふふ♪ かわいい」



 ぬっくん(赤ちゃんVer.)をそおっと抱き上げた。わお。赤ちゃんってあったかい。それに予想より、重い。


「‥‥‥‥私、ぬっくんの赤ちゃんの時って知らないから、これは実は得難いシチュなのでは? 異世界特典?」


 なんて独り言を言ったりしていた。っと! 【魔法のおくるみ】発動! 一気にぬっくんが軽くなった。




 あの、ドローンレースの一件以来、ぬっくんは少し変わった。学校の先生とかでも「それはおかしい」ってぬっくんが思ったら、意見を言うようになった。彼がそういう行動をする時に掲げるのは、ド正論中のド正論だから、先生ですらたじろぐ場面もあったね。正直まわりはドギマギしてた。


 まきっちは、それを「ぬっくん伝説」とか言ってケーキ作りの話と混ぜこぜにして、ワンセットの笑い話にしていたけど。


 実は彼女が一番、「ぬっくんの正しさ」を心配して、警戒していたなあ。――なんだかんだで、彼の事を一番知ってるのはまきっちだからね。



 ‥‥‥‥暴走したらしいよね。ラポルトでも。「英雄さん」っていうガチの怖い軍人さんに立ち向かったって。‥‥いくらコッチに正当性があっても、殴られて万が一があったらどうするの?



 あの場には「私がいない、いなかった」‥‥!! 「代わり」をしてくれた浜さんには感謝だわ。



 東の空が明るくなってきた。夜明けだ。――この異世界では、人々は基本日の出とともに動き出す。まあ電気やガスがないから同然だよね。魔法はあるけど。

 日が昇ってもぐうぐう寝てる、紘国の私たちがおかしいような気がしてくる。



 私の腕の中で、ぬっくん(赤ちゃんだよ)は静かに寝息をたてている。お姫様が起きたら、ほ乳瓶を発現させてもらって、私がミルクあげたいな。


 さっきの夢。たった4年前の事なのに。こんな場所で赤ちゃんになったぬっくんにミルクあげる云々って、目まぐるしすぎでしょ‥‥‥‥。


 なんて考えてたら。



 ポン! って音がして、ほ乳瓶が現れた。ふわふわと空中をただよって、私の手に。


 そして手に持つと、容器の中が透明の液体で満たされていく。異世界が魔法の世界とはいえ、不思議な感覚だよ。



「おはようございます。姫の沢さん。それはあなたの魔力です。わたしが人事不詳になることもありますから、魔法の3点セットはそういう仕様にしているのです」


「‥‥その言い方、愛依にそっくりだゼ☆」


 振り向くとエイリア姫とまきっちがいた。


「ひめっち。ちょうどいいや。ぬっくんに朝ごはん、って思ってたから、そのままミルクあげてよ」


「でも透明の液体だよ? これミルクって呼んでるの? 暖めなくていいの?」


「すでに人肌。他に適当な呼び方思いつかないんよ。細かい事はいいじゃんか」





 赤ちゃんは寝てるようだったけど、哺乳瓶の口で上唇をつんつんしたら、はぶはぶって食いついてきた。私もみんなも爆笑。


 その声に誘われて、残りひとりも起きてきたよ。エイリア姫とまきっちが朝食作り始めて、それを見た(やよい)さんが「そんな姫様が些事を‥‥」って言ってた。姫様は「ここのルールに従いなさい。あなたは長旅の疲れを取るのが先決。手伝う事は許しません」とか。



 みんなで朝ごはんを食べて。異世界らしい? 葉物野菜のサラダと直火焼きのトースト。まあ、この世界は昔渡ってきたアッチの世界、私たちの世界の人が文物をもたらしたらしいから、文明が被ってるのは当たり前なのかな。



 と、ちょっと目を離したらカゴに入っていた赤ちゃんが光りだした。


「‥‥ああ、大丈夫です。衣服は自動で着きます。わたしのアイテムボックスです」


 とは姫様。知ってるよ。私がドラゴンから人間に戻る時も春さんのそれにお世話になってるし。――便利だよね。


 私は慌てて鏡に走り、前髪を手櫛で整える。――やば。そういえば、今日まだ顔を洗ってないような。


 そんな私を見てみんなくすくす笑ってた。




「‥‥‥‥今回早いなあ」


「魔力消費量が少なかったからでしょうか。暖斗さんが赤ちゃんになるのは、スマホに例えるならスリープモードか充電モードですから」


 なんてお姫様とまきっちがやりとりして。


 光の塊がまた、中学生男子の形になっていって。




「ついに対面か~。長かったなあ。どう? ぬっくん。久しぶりに見た姫の沢ゆめは。大分大人っぽくなってるぞ」




 そんな言葉を背に受けながら、ぬっくんは短く「おはよ」と言った。


 そんな彼に私は、2年間練りに練ったとっておきの挨拶を炸裂させる。





「けろけろ。もけ~れむべんべ」






※「なるほど。時系列は違えど物語上はぬっくんひめちゃんは同時に夢を見てたとね」と看破した そこのアナタ!!


ここまで、この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!!


あなたのブックマーク登録、高評価が、私の創作の唯一のモチベです。

お願い致します!!


評価 ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に!!

↓ ↓ このCMの下です  ↓↓


Twitterやってます。いぬうと @babyassault 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ