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第86話 「火だるま」と「嫁」②

※無事第1部完結までPC入力しました。書き溜めが80話(11/21時点)になってしまったので、投稿頻度上げます。

 





「ぎゃっはっは!! コレ見ろよ暖斗! スカート毎回燃えっから、もうほとんど残ってね~じゃんか。常時か。常時露出か? なんで着替えね~んだ。このエロ女」


「‥‥エロザベータね」


「お、女の名前憶えてんじゃん。さてはお()。このマンガ気に入ったな?」


 クセが強いんじゃ! と言いそうになるのを喉の前で止めた。

 とにかく、ラポルト女子に嫌われる前に、この場を切り抜けたい。



 ‥‥‥‥‥‥‥‥まあ、マンガの悪口ばかり言っちゃったけど、いい所もあるかな。絵は上手いから、ヒロインの子がすごいカワイイんだ。名前はアレだけど。


 そのちょっと幼い顔立ちのカワイイ子が、‥‥その、なんだ‥‥ミニスカートのさらに焼け落ちて短くなったヤツでスープレックスかますから‥‥。


 ま、まあ。ライドヒさんみたいな高校生が食いつくのはわかるな。うん。‥‥カワイイくせに色々見えちゃうからなあ。毎回。



「何見てんの。ベイビー!」

「はう!!」


 麻妃だった。や、驚いた。心臓が止まるかと。


 通りかかって僕を見かけたらしい。そういえば、愛依の「ライドヒさん被害報告」に、麻妃は入って無かったなあ。まあ、無事にこしたことはないんだけど。どして?




「お~~!! 麻妃ちゃん。俺のとなり来いよ? ほれ。‥‥暖斗席替われ」


「気安くさわんなっての! 暖斗くんもそのままでいいから」

「痛って!」




 僕の後ろに着こうとした麻妃を、ライドヒさんが腕をつかんで引っぱって。


 それを指先で、ぱちん! と弾いていなす麻妃。


 麻妃って、ライドヒさん平気なんだ。‥‥いや、昔からそうか。そういうキャラだ。こんな感じだから、ライドヒさんにも物怖じしないし、いい意味で被害もないのか。





「お()っちってさあ。『紙の本』持ち込んでんだってなあ」


 と、気を取りなおしたライドヒさん。


「うん。ひとり一冊以上。必ず、って」


「麻妃ちゃんはどんなん持ってきたん?」


 僕はぎょっとする。「ライドヒさん! 待って!」


「へっへ~。知りたい? しょうがないな。持ってくるか」



 麻妃はその「紙の本」を取りに自室に向かってしまった。

 僕は麻妃が戻ってくる前に、ライドヒさんの説得を試みる。


「麻妃は。アイツ相当変わった趣味してるから。昔から」


「い~じゃん。マンガだって? 女子向けも俺、守備範囲だぜ?」


「僕は見たくないんだよ。ゴハン前だし――――」



 麻妃が、「おまた~」と戻ってきてしまった。単行本1巻と2巻を小脇に抱えている。


 それを手に取るライドヒさん。




「‥‥‥‥ふ~~ん。『(よめ)悪魔(イビル)』、ねえ」


「そう! 義嫁モノだよ。第三席(サード)で嫁いだ主人公が、第一席(ファースト)第二席(ゼカンド)、つまり長嫁次嫁に、とにかく虐められるんだ」


「重婚生活、嫁×嫁バトルか。ありがち~」


「そうだゼ! 後から来た第四席(ラスト)の末嫁や、最後の心の拠り所だったダンナにまで! その虐めに耐えかねた主人公の、溜めに溜めた怒りが爆発する――――! くうぅ!」



 う~ん。ここでしみじみ思った。麻妃は怒りやストレスを「溜めない」タイプだ。ある意味、この「長期間体験乗艦」に最高に適した人材。まったく疲れた様子もない。


 でもそれゆえに、このマンガ「(よめ)悪魔(イビル)」の主人公に惹かれてるのかな? 自分と180度真逆のタイプだから。


 この主人公の子は、確かに常識人で真面目な子なんだけど、「言いかえせばいいじゃん?」、「そこはちゃんと理由を言って、自己弁護するべきだよ!」って場面でも引き下がる子なんだ。もどかしい。


「いいんです。‥‥‥‥きっと、私がわるいんです」


 ってポジを取る。ある意味、絋国女性の気持ちの、写し鏡。

 社会や国家からの不遇、という現実。

 自分では到底どうする事もできないその現実に、「もういいです」と匙を投げた境地。


 そして、そこからの、――――破滅的な暴発。




「へえ。楽しそうじゃね~~か。そういうドロドロ復讐系、俺大丈夫だぜ」


「じゃ、2巻の後半くらいからか、『ざまぁ』展開は。主人公の復讐編だから。その辺からでもどう?」


「オッケ。いやしかし、『女の敵は女』ってか。ヤだねえ」




 ‥‥‥‥ライドヒさん。アナタのムーブもたいがい、「女の敵」なんですが‥‥




 *****




「紙の本」を両手で持って、視線を向けるライドヒさん。一転静かだ。




「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」




 ライドヒさんの顔が土気色になり、額からあぶら汗が出てきた。



 ほらね。



「‥‥‥‥うん。‥‥‥‥わかった。すげえなコレ」


 と、彼が閉じようとした本を、麻妃がこじ開けた。


「あ~、ダメダメ。そこじゃあ復讐の前半だから。せめて後半までは読まなきゃ!」


「うん? いや、オレは‥‥」


 読んでしまったライドヒさんの、手が震えだした。



「ね! スゴイでしょ? ハンパない復讐劇☆! いや~。このマンガのファンが増えて良かった。宣教師気分だ。同士ゲットだぜ☆!!」



 ――麻妃、その「同士」には僕は入ってないよね? ‥‥いや、訊かないけど。




 *****




 麻妃は去っていった。そういえば麻妃はライドヒさんに対してタメ口だったなあ。まあ麻妃は割とそうか。



 無言のまま、機械的に、仲谷さんの作った不思議な味の焼き飯? 的な米を口へ運ぶライドヒさん。


 僕も、前にアレを読まされてたのを思い出しちゃったから、正直味がしない。

 食欲も失せてしまった。‥‥‥‥だからゴハン前はいやだったんだ。





「‥‥‥‥人って、あんなにも残酷になれんのかな?」





 手を止め、目に涙を溜めながら、うつむいてつぶやいたのが印象的だった。


 僕は、「さあ‥‥」とだけ答えた。答える気力もないから。





「なあ。暖斗」


「はい」


「俺のわがままひとつ。聞いてもらっていいか? ‥‥いや、頼む。黙って『うん』と言ってくれ」


「え? 何?」




「あのさ‥‥‥‥メシ食ったらもっかい『火だるま』、読もう‥‥」




 ――うん。そうしよう。



「火だるまの恋」





 あれは名作だよ。





※麻妃ちゃんご推奨の「嫁悪魔」、スピンオフの予定はまったくございません。


ここまで、この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!!


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