第86話 「火だるま」と「嫁」①
※無事第1部完結までPC入力しました。書き溜めが80話(11/21時点)になってしまったので、投稿頻度上げます。
8月26日、午前10時50分。
僕は、朝からの対ライドヒさん戦を訓練とみなしてもらったので、ノルマ分が終了。
体が空いていた。
「ぎゃっはっは!!」
食堂。4人がけのテーブル。僕の横の席にはライドヒさんがいる。
なんで4人がけなのに向いに座らないのか? もしか、戦ってマブダチになった?
半分当たり。
隣で、僕に画面を見せながら、パッドPCでマンガを読んでるからだよ。
「昼も一緒に食うぞ。それまで食堂で時間潰すか」という流れだからです。
*****
「ここで、『フルネルソン・スープレックス』!! って、ま~たパンツ丸見えじゃね~かこの女!! バッカでぇ~~!!」
彼が愛読しているという「火だるまの恋」というマンガを、一緒に読ませてもらっている。「読も~ぜ」って誘われたんだけど、朝の事でしこりを残すより、こうやってまた仲良くしちゃえば、僕も気が楽だと気づいて。
「‥‥‥‥で、ここで『キャプチュード』!! 決まった!! ぎゃっっはっっはっ!! またパンツ見えてんな。パンモロ! パンモロ! うわははは!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
正直、まわりからの視線が痛い。ライドヒさんは大声で笑って楽しそうだけど、まあまあ人がいる昼近くの食堂で、コレは居づらい。
この、「火だるまの恋」は、小説投稿サイト原作だって。ライドヒさんはマンガ版しか読まないらしいけど。
そのあらすじは。
――――ある時、主人公カップルが旅行に出かけ、よくある恋人スポットに立ち寄る。そこでうっかり祀られていた女神様の怒りをかってしまって「魔女の呪い」をかけられてしまう、と。――ふむ。割とよくある設定の恋愛ものかと思ったんだけど。
違った。
――その魔女実は非リアだったんだ。毎日毎日バカップルのイチャイチャを見せられ続けた女神様は、ついにキレた。運悪く居合わせた主人公達に、その世界最高、至上強大な魔力で、大迷惑な呪いをかけた。
【リア充爆ぜろおぉぉ!!! ○ね! 消えろ!】
‥‥‥‥まあ、主人公達もバカップルで、女神様無視してイチャコラしてたんだけど‥‥‥‥。
【お前らイチャイチャしたら燃やす!! ‥‥‥例えば? チューとかよ!!】
「‥‥‥‥‥‥‥‥はあ。あほらし」
僕は脊髄反射でため息をついたけど、マンガはそこから始まる。
で、どんな話になる? その魔女倒す? って思って読んだら。
違った。
主人公。カップルの男の方がアホだから、勝手に盛り上がって、ヒロインの子に‥‥えっと‥‥チ、チューしようとする。
学習せずに、毎回。
ヒロインの子も主人公の事が好きだし、いい雰囲気にはなるから、ドキドキして流されそうになる。
学習せずに、毎回。
*****
「危なかったな。エロザベータ」
「助けてくれてありがとう。ポッキンムッシュ」
「血が出てるじゃないか? 服も破けて」
「‥‥‥‥大丈夫よ。あの山賊達が力任せに引っぱっただけ」
「ダメだ。大事なカラダだ」
「優しいのね。きっと他の娘に優しいんだわ?」
「そんなことはない」
「うそよ」
「‥‥‥‥君だけだ」
「‥‥‥‥オトコはみんな嘘つきよ。女神様もそうおっしゃる」
「俺は違う。お前だけだ。‥‥‥‥今からそれを証明する」
「‥‥‥‥どうやって?」
「俺の決意を見てくれ。例え女神の呪いがこの身を焼き尽くそうとも、俺は、お前を」
「‥‥‥‥嬉しいわ。でもそんな、ダメよポッキンムッシュ」
「‥‥‥‥綺麗だよ。エロザベータ」
「ああ、ポッキンムッシュ‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【またお前らか! またお前らか! 頭に来たから2度言った!! わらわを差しおいて何をイチャイチャしておる? 許さんぞ‥‥! 燃えてしまえ! き~~~~~!!!】
「えっ? ‥‥‥‥女神様?」
‥‥‥‥チリチリチリ。(火種とケムリ)
ヒロインの子のスカート(なぜか制服みたいな恰好してる)の裾からケムリが出て。
「ハッ!? ‥‥‥‥ダメ~~~~!!!! ‥‥がぎっ! ‥‥‥‥どっせい!!!」
我に返ったヒロインが、レスリング紘国代表みたいな動きで一瞬で背後を取り。
ヒロインとしては出してはいけない系のかけ声で綺麗なアーチを描く。
間抜けな‥‥えっと‥‥チ、チュ~顔をしてる主人公を。
なぜかスープレックス系の投げ技で、ね。
ヒロインの驚異の背筋力で後ろに放り上げられた男が、地面(岩とか)に頭打って「ぐげえ!!」って目が飛び出て終わり。
学習せず、毎回。
お願い誰かツッコんでくれ。
これキツイよ。
主人公は毎回さかってチ、チュ~未遂。ヒロインは毎回、うっとり、チリチリ(煙)、からのどっせいスープレックス。
で。
「その視点から描くか?」っていうエグい角度で、ヒロインのスカートの中が描かれる。
義務の様に、毎回。
彼女はミニスカートでスープレックスしてるから、‥‥‥‥ね。察してくれ。
そしてなぜか、「スープレックス技の種類」だけは毎回違う。
誰の趣味なのか、絶対。
‥‥‥‥この作者、一体ドコに注力してるんだ。アタマの中どうなってるんだよ!? いっぺん頭蓋を開けて脳の中を。
‥‥‥‥いや、やっぱいいや。疲れた。
ライドヒさんは、コレ読みながら大爆笑!
そんなんだから、背中から変な汗が出てきた。
こんなの他の女の子に誤解される。ああ逃げたい。
「ふ~~ん。‥‥そんなの好きなんだ。‥‥暖斗くん。‥‥‥‥やだあ。最低」
特に愛依とかにそう言われそうだ。『治験』する時、空気がおかしくなるじゃんか? もうやってくれなくなるかも。それはイヤだ。
来ないでくれ。食堂に。お願い~!!
で、こんなマンガ、一巻で終わりだろ? って思ったら、画面すみに「第133話 おわり」って出てた。その文字を見つけてしまった。
長期連載してんじゃね~か。こんな一発ネタ漫画!“
どうなってんだ? この界隈。
※「火だるまの恋」は鋭意構想中。反響がございましたら、スピンオフとして連載するご用意があります。
異世界恋愛ジャンルかな。安定のアホらしさ、を目指します。
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