第81話 まほろシティ散策⑧
※申し訳ございません。順番間違えてました。
まほろシティ散策⑧ を割り込み投稿します。1個ずつずれます。
僕らはそんなふたりをカフェに残して退出した。麻妃がやけに急かすし。
で、お会計。七道さんと折越さんの分も密かに清算する。‥‥なんか、金銭感覚が狂ってきた。
取りあえずふたりについていって、色々な店を見廻る。――そうだ。愛依に。
「‥‥‥‥あのさあ。ちょっと考えたんだけど、あの、キャミソールとか、僕が出すから、新しいの買わない?」
「ええ? キャミを? でも、あれまだ着れるよ?」
驚く愛依だけど、逆に僕が驚く。いやいや、そうきたか!!
「いやあ、アレ着てもう一回敵兵に捕まってほしくないし」
「捕まらないよ。わたしだってやだよ?」
いや、あなたはもう2回も捕まってます‥‥。あの胸元ゆるゆるキャミで。
「‥‥‥‥暖斗くん! キャミソールってイマドキはそうでもないけど、もともと下着の類なんだからね。女の子に『下着買うよ?』って、微妙なんだからね?」
と、愛依は顔を赤くして反論してきた。あ、こうなっちゃうと愛依は強情かも。
「‥‥‥‥そっか。それなら無理には言えないね。プレゼントとは別枠で、と思ったんだけど」
「‥‥‥‥でも暖斗くんがそこまで言うなら、買ってもらおうかな‥‥‥‥」
僕が撤退しようとした所で、愛依が陥落した。う~ん。
麻妃に肘で小突かれた。
(愛依のキャラじゃ、ハイそうですかありがとう! とは言わないからさ)
結局またデパートに来た。麻妃がひとりで靴を見てくるというので、その間に婦人服のコーナーへ行く。
「‥‥‥‥ここなら大丈夫ね。じゃあ、選んでくね」
と、愛依にのこのこついてきたけど、本当に女性用の服売り場の真ん中だ。
しかも、ちょっと横には――――ガチの、下着コーナーがある‥‥‥‥!
これ、愛依とはぐれたらヤバイ。背中に変な汗が出てきた。
スッスッスッ、っと、まあまあの速さでハンガーに吊るされたキャミソールが引き抜かれた後。
「これなんてどうかな?」
愛依が、選んだ色とりどりのキャミソールを胸に当てる。青系だけでも色々ある。
「あれはもっと淡い水色だったけど?」
「ううん。最初はこのくらい青色に近かったんだよ。洗ってたら色落ちしちゃった。まあ、あの水色くらいがわたしが一番好きな色なんだけど」
ああ、やっぱりそういう感じか。――――ふふふ。と彼女は笑ってるけど、買い足して正解だ。
結局、さんざん迷ったけど、あの「くたくたキャミ」に似た感じの、白い肩ひもにフリルのついた、青色のキャミに決まった。
タグには 「650円」とあった。あまり高い物ではないのかな? ‥‥あ、税抜だから消費税30%。「税込845円」か。それなら。
レジに持ってく時に、後ろから同じ物を追加する。
「え?」
「だって、2着あった方が、ローテとか楽でしょ?」
「‥‥‥‥本当にどうしたの? 今日は? え~~! ‥‥いいの?」
彼女はニコニコだった。
*****
デパートで、初島さんと来宮さんに会った。
もうこの辺りから、僕も察したし、麻妃が種明かししたんだけど、ラポルトの通話アプリの「女子専用アカ」で、僕の「お土産」企画は拡散されていたらしい。
だから、だいたい僕がいる場所もばれてて、プレゼント選びの時に、本人達が通りがかる感じになってた。
でもまあ、逆に僕もありがたかった。正直、誰に何を買っていいかわからなかったからね。本人に選んでもらうのが一番だ。
初島さんと来宮さんは、スポーツ系のお店で、お揃いの汗止めを買った。すごく喜んでくれた。
やばい。人に何か買って喜んでもらうのが、クセになってきてる。
あっ! と僕は気がついて、咄嗟に商品をレジに持ち込む。ふたりの汗止めを会計してた所だったけど、ギリギリ間に合った。初島さんと来宮さんは、きょとんとしてた。
その後、麻妃や愛依に助けてもらって、残りの人のプレゼント選び。
子恋さんと渚さんには、公務が多そうなので礼服系のハンカチと小物。
紅葉ヶ丘さんはガチで誰もわからなかったので、お菓子の詰め合わせ(味は僕が保証)。
折越さんは、もうメールで訊いたら合流してきた。目元をキラキラさせるメイクのなんか(品名不明)を選んだ。
で、麻妃はTシャツ。愛依は‥‥‥‥辞退された。
(前にお誕生日ケーキくれたし、お昼もご馳走してもらったし、キャミも2枚もだし)
とのことだ。‥‥‥‥まあ、無理に、とまでは思わないけど。
またいつかの機会に。
そのあとちょっとだけ各自で行動。僕はゲーム屋と本屋で時間を潰した。
デパートの出口の広場で、麻妃と愛依とで待ちあわせていた――ら。
店の前をうろうろしてる愛依の麦わら帽子が見えた。
あの、デパートの入口付近。午前桃山さんの「リボン」を買った小物店だ。
愛依は、麦わら帽子を背中にかけて、ある帽子を試着して、全身鏡を見ていた。
しきりに左右に身体を揺らして、どう映るのか、真剣な感じだ。
「暖斗くん?」
その鏡に写りこんだ僕を、愛依が見つけた。
「その帽子‥‥‥‥」
「うん。気になるんだけど、買わないよ。まあ、ガンジス島でお買い物することもないだろうから、この帽子とは一期一会なんだけどね」
「買わないんだ?」
「うん。‥‥‥‥わたし、かわいい帽子を買うのが趣味なんだけど、ほとんどは買わないの。そんなに数あってもしょうがないし。‥‥‥‥正確には、帽子を選んで買うフリをするが趣味、かな?」
愛依は「うふふ」と笑ったけど、今日の僕は、それで終われなかった。財布のひもが緩む日って、あるんだね。今日の僕がまさしくそれだ!
「買おう。それ」
「ええ? わたし買わないよ。暖斗くんにも悪いし」
「僕が、僕の分として買うんだよ。それならいいでしょ?」
「え? なにそれ? え?」
もう待ち合わせの時間だ。愛依から帽子をひったくって、レジに持っていく。
うす茶色の、丸っこいかわいい帽子だった。赤いリボンが巻いてある。あの水色のワンピ(サマードレス)の愛依がかぶれば、もっとかわいくなるのは間違いなかった。
「ん」
僕は「右手」を差し出す。
「うん。ありがと」
意図を察した愛依が、自分の手荷物を僕に渡した。
代わりに僕は、さっきの帽子を愛依に渡す。
「それは持っていて」
「‥‥‥‥はい。わかりました」
病院へ向かう夕暮れの中、愛依は短く答えた。
※第一章のラスト「エンディング 前編」での愛依さんは? 伏線回収でございます。
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