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第二部 第12話 異世界☆歯科衛生士② 私が活躍したっていいじゃない。ラポルト乗れなかったんだもん。





「え~~~!? マジで~~!?」


 意外、という感じで、仲谷さん以外の、七道、多賀、網代さんの視線を浴びる。


「‥‥‥‥なんだあ? 異世界来て【スキル】のチートでも使ったのか?」

「違います」


 私のかわりに仲谷さんが即答。


「あ~。じゃあ、絋国ハイテクチート?」


「違います。‥‥そもそもゆめさんはそれは持って無いです」


「‥‥‥‥。仲谷さんばっか答えてる。姫の沢さん、本当?」



 3人が私につめ寄ってきた。


「私ら機械屋は、ハッキリ仕組みがわかんねえとムズムズすんだよ? どういうカラクリだ。あそこの村は、私たちの【スキル】や知識じゃ救えなかった、と諦めたトコなんだ。この世界で暮らす以上、そういう知識は欲しいんだよ。――どうやった? 姫の沢」




「えっと。それはですね‥‥‥‥じゃ、最初から話すよ」



 私は、語りだした。

 そう。自慢ぽくなっちゃうけど、自分でも意外だった私の活躍を。


 そして、大切な事。メンテ3人組にあらかじめ断っておく。


「‥‥‥‥ごめんね。七道さんの説明回が比じゃないくらい、専門用語の嵐になると思うけど、‥‥興味の無い人はここでブラウザバックしてね」


「あ!? オマエ。私の決めゼリフ盗りやがったな」




***





「あそこですね。仲谷さん」


「ええ。機械の部品を生み出して修理する、よそ者3人組。今度こそ当たりだと良いのですが」



 私と仲谷さんは、ヤナーアッラーヤ村に来ていた。今から1ヶ月前の事だ。


 村の人々は歓迎してくれた。仲谷さんが姫様の側近だってのもあったけれど。ご年配の方が多くて、生活にも困ってなさそうな感じだった。――ただ、私は村の人の異変にすぐに気付いたよ。


 村人の笑顔を見ればわかる。――そう。異世界の食べ物は、私たち絋国より原始的だ。パンとかも基本堅い。主菜も副菜も固い食べ物が多い。



 なので、「あの病気」とは基本無縁だった。今まで訪れた村々では。それよりも「齲蝕(うしょく)」や「咬耗(こうもう)」の方が心配された。――けど。



 特にお年寄り。一見すればすぐわかるほど。歯肉の状態、赤腫や歯牙の欠損。私は訊いてみた。


「もしかして、ここに見えられる方以外に、家で伏せられているお年寄りの方がいらっしゃいませんか?」



 村の方々は驚いていた。


 前述の通り、滞在させてもらうお礼がてら、仲谷さんが病を得た人に、【治癒魔法(ヒール)】をかけてあげた。それで良くなった人もいたんだけど、「あの病気」の人は、あまり改善がみられなかった。


「この病気、この国ではあまりみられないんです。――いえ。他国もですが。そしてやはり、回復魔法ではこの手の症状は‥‥」


 仲谷さんはちょっと悔しそうだった。


 状況はこうだった。「その病」のせいで、村の老人が何人も寝たきりになっている。治癒魔法はあまり効かない。聞けば、「この病気」が流行ってるのはほぼ、この村だけだという。



 その病とは、「歯周病」。




「私が何とかしてみます。私、準歯科衛生士なんです!」


 思わず声に出していた。この資格がまさか、異世界で役立つとは!?





 手袋や術衣を用意してもらった。できればひと患者ごと使い捨て(ディスポーザブル)にしたかったけど、異世界の工業力ではさすがにそれは無理。

 一回一回、予洗いをしてから仲谷さんや村の人の光魔法で、殺菌する事にした。

 

 光魔法にはそういう効果もあるらしい。まるで二酸化チタンの光触媒みたいだ。




 村人の口腔内を見せてもらっていく。アシスタントは仲谷さん。無影灯の代わりに光源になってもらう。

 村のご老人の口腔内は、悪い意味で予想通りだった。歯肉が赤く腫れあがり、ブヨブヨしている。初期、もしくは中期の歯周病だ。歯肉縁下も調べたい。




「この村の食事だと、柔らかくて甘い物ばかりですね?」


「ええ。そうですね。養蜂が盛んですから。はちみつは売っても売っても余るくらいで」


「――ちゃんと歯は磨いてますか?」


「磨くんですか? 歯を? いやあ。そういう習慣がないですねえ」


「ここに来れない、お家で臥せっている方も多いと聞きました」


「そうですねえ。みんな年とると、身体は弱る一方で。起き上がれなくなるんですよ。よかったら、(ウチ)のばあ様も診てくださいな。先生」


「‥‥‥‥私は先生(ドクター)ではなくて。歯科衛生士(ハイジーニスト)です。皆さんのお口を‥‥‥‥そうですね。見て、清潔にするお手伝いをする者です」


「ほえ? 先生じゃぁねぇの?」





「まず、『歯周病(ペリオ)』ですね」


 私が仲谷さんに伝えると、彼女は思案顔になった。ラポルトでの記憶を呼び起こしているみたい。



「‥‥‥‥確か、口の病気ですよね? それ以上の知識はないですね。私」


「ええ、そうです。重要なんですよ? 全身の健康に」


「すみません。『あちら』の医学知識はなるべく盗もうとしたのですが、歯科は手つかずでした」


「いえいえ。重い病気の治療法から探していったら、歯科は最後の方になっちゃうのはしょうがないです。――でも、本当に重要なんです。歯科は」


「そうですか。で、その『ペリオ』には、私の【治癒魔法】は効きにくいと」


「う~ん。無駄ではないけど、原因となる口腔内の状態を改善しないことには、魔法の効果はたぶんその時だけだと思う」


「なるほど。流行り病とにていますね。それらは【治癒魔法】では治りにくいです」




 急遽、村の鍛冶屋さんで私の武器を作ってもらう。剣とかじゃないよ。一応刃物だけど。



 グレーシーキュレット、探針(エクスプローラー)、口腔内ミラー。とりあえずこの三つ。



 ピンセットは、村にあったからお借りした。正直私が口で説明しただけだから、鍛冶屋さんも苦心したと思う。見た事もないもの作れって言われたんだし。

 でも、それにしては、というと失礼だけど、予想以上に使える器具を作ってくれた。



 歯周病(ペリオ)、村のご老人のほとんどが罹患していたよ。症状が進んでいる方が多かった。





 絋国でもメジャーな病気だけど、予防が進んであまり問題視されてない。


 さて、この異世界で私にできることは? っと。






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