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第7話 A2/AD②

 




 ゴウンゴウン♪


 操縦席の中を、重力子エンジンの駆動音が低く響いている。


 僕のDMT(ディアメーテル)は、母艦に向かったBotを、追いかけなきゃならない。




暖斗(はると)くん。じゃあ、本格的にマジカルカレント使うモードに設定変えるゼ☆ 重力子回路の印加電圧を上げとくからね。あ~~あと、母艦からで艦砲撃つから今は近づかないでってさ」


 そう言ったのは麻妃(マッキ)だった。昨日の七道さんとの話の通り、こうして電圧かけておくのが僕が重力子エンジンの能力を発揮させる通常の方法だ。


 そして、やがて母艦のいる方面からの轟音が響き始めた。




 戦艦ウルツサハリ=オッチギンの主砲は、戦艦だけあって強力――なハズだったけど?


 麻妃が僕に支援ドローン、KRM(ケラモス)からの映像を送ってきた。


「いい機会だ。よく見といて。暖斗くん。あれが近接阻止/領域拒否、『A2/AD仕様』だよ」


 戦艦に取り付こうとするBotに対して主砲が火を噴くが、花火みたいに散弾状だった。大量のビームをその空間に撒いている感じだ。パーティとかでやるクラッカーに似てるなあ。


 戦艦に取りつこうとしたBotが避けてる。追っ払われるみたいに。でも。


 あれならBotは近づけないけどダメージも少ない。シールドも破れないだろう。




「僕が思ってたビームと全然違うね」


「紅葉ヶ丘さんでも、主砲の設定変えるコードはまだ見つけられないって言ってたもんなあ。収束砲(バーチカル)だったら一撃の威力凄そうだけど。運営の人達は、よっぽどウチらに人殺しをさせたくなかったみたいだねえ」


 彼女はしみじみと言った。


 Bot駆除、掃空作業は、「ふれあい体験乗艦」で僕が元々やるはずだったメニューだ。本当はプロ軍人さんの指導、監督の元で。


 だから僕も麻妃も、艦のみんなもそんなに切羽詰まった状況ではない。Botと戦うくらいまではね。素人中学生に、そんな危険な事を運営がいきなりやらせるワケがないよね。――ま、今後はわからないけれど。



「さあ、艦のエネルギーがもったいないからそろそろ砲撃が止むよ。そしたらこっちの出番だ。回転槍(サリッサ)予備回転を開始」


 槍の刃部、赤紫の透明な多面体が、ゴリゴリと石臼(いしうす)を引くようなゴツイ音を立てながら、ゆっくりと回転を開始した。


「おお? 暖斗くん。なんか、槍先が少し光ってない? ‥‥‥‥って、コレ、回転始動早くね? もう初速がついてるよ!」


 言われてモニターで僕も確認した。サリッサの刃部、とんがり帽子状のドリル――クリスタル様の多面体の内部が、ぼやっと青白く光ってるような気がする。内蔵している重力子回路がマジカルカレントで活性化していると、なんか光を出すらしい。


「これって『旭煌(きょっこう)』では? 一説にはチェレンコフ放射光だとか。お~、なんかキラキラ宝石みたいでテンション上がるぜ♪」


「‥‥麻妃(マッキ)は昔から光るもの好きだよね。カラスみたいに」


「カラス言うな。キラキラしたものは女子はみんな好きなの。そんなん言うならからかい返すぞ暖斗くん。今から母艦に突っ込むからね? そんなキラキラ槍と白銀のDMTで敵をやっつけたら、艦の女子がみんなキャ~!! ってなるよ? 白馬の王子様キタ~♪ってさあ」


「う! そ、そんなことね~し。俺、女子ウケとか興味ね~し。俺なんかでキャーキャー言うワケないじゃん。いやマジで?」


「はっはっはっ。どうかなあ。そういう娘が実はいるかも知んないよ? ‥‥んん? あと、一人称が『俺』になってるゼ☆ 暖斗パイセン」


「うるさい。それにこのDMTの装甲色は白銀じゃなくて『A1(エーワン)-デンチン色調(シェード)』だし」


「知らんわ! そんなマニアックな色の呼び方! 女子は色味を楽しんでるのにそやって論点をずらして‥‥って、もっとイジりたかったけど、そろそろ突撃だゼ☆ 新兵ベイビィ殿!」



 DMTのエンジンの回転数がどんどん上がる。それにつれて駆動音も。なかなかの轟音だ。



「オイちょっと? こんなグタッたトークの直後? このテンションで突撃? ええ!?」


「まず、艦の、向かって右に来てるヤツね。いい? カウント入るよ。暖斗くん」


「容赦ないな麻妃! ってか、僕ら余裕こきすぎじゃね?」




 操縦桿を握りなおし、僕はしぶしぶ操縦に集中する。


「くっそ。わかったよ。‥‥‥‥3‥‥2‥‥1‥‥突撃(アサルト)




「!!!!!」




 僕の体は強烈なGで後ろに弾かれた。と、同時に、雲に浮いたような感覚になる。隔壁操縦席(ヒステリコス)の周囲の重力子回路が起動、かかったGを相殺して浮遊させる為だ。


 一瞬呼吸が潰されたので、慌てて息を整える。



「空?」



 Gに耐えた直後、モニター越しに僕の目に入って来たのは、木々の上から見える、一面の青い空だった。



「これが、僕のマジカルカレント能力‥‥‥‥」


 自分の事ながら唖然とした。





 僕の機体は、自身の跳躍だけで宙を舞っていた。






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