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第6話 マジカルカレントⅠ② #設定語りだみんな逃げろ!

※ガチ設定語り回。続きます。

 




「基本的には軍の機密なんだ。でもそういう症状が出ることはもう各国でバレバレだから、かなり軽い方の軍事機密だな。出航前に知ってたのは、付属中3人娘と、私、岸尾と逢初。

 直前合宿の時に個別に呼ばれて、誓約書にサインして、レクを受けたよ。今は、暖斗くんが寝てる間に乗員全員に説明があったけどね」


「なんだ、麻妃(マッキ)も知ってたのか、水くさいなあ」


 思わずため息が出る。


「まあそう言うなって。実際に暖斗くんに症状が出るとわかるまでは、機密扱いだったんだからさ。で、MKって略したりするけど、これが『マジカルカレント』の略な。『魔法の微弱電流』だ」


 僕らのいるハンガーデッキは、常に何かしらの作業音が響いている。ここにあと2人、七道さんと同じ整備士の女子がいるはずなんだけど、コンコンカンカン作業の音だけで姿は見えない。


「正直、軍でもこの現象の正体がまだ解ってねーんだってさ。わかってんのは、特定の人間の脳波が、さっきの重力子回路に影響を与えるってハナシ。


 その重力子回路は、電気を流せば流す程、比例して重力を取り出せる。それをさっきの要領――回転運動で発電な。それで電気に変えれば、最初に重力子回路に流した電力量との差分が得られたエネルギーって事になるけど――


 まあ、回路に印加した電力なんて微々たるもんだから、小電力で大電力を得る、打ち出の小槌みたいなシステムだ」



 そしてここで、七道さんはちょっと申し訳なさげな表情をした。


「で、こっからは、量子論とか素粒子物理学になってくんで、ちょっと難しくて私も人に説明する程解ってねーんだけど」


 七道さんは頭をかく。



「重力ってのは、異次元、余剰次元から漏れ出てきてるんだって説がある。この重力子回路がグラビトンって重力素粒子をちょびっとだけコントロールすることで、その漏れ出た重力をゲット出来てんだそうだ」


 だから、3次元を超えたエネルギー発生をしている。この物質世界の質量保存の法則、エネルギー保存の法則はこの回路には適用されないんだとよ? ここんとこ伝わった?」


 彼女は僕の顔を覗き込んだ。


「そこは一応わかったよ。つまりは、回路に電気流せば流すほど、『余剰次元エネルギー』からよりたくさんの電気が得られる夢の機械だ。それは知ってる。僕らの親世代は電気を使ったら、その分だけ『電気使用料』を払ってたってね」


「だってなあ。『基本料プラス使った分』ってマジか? そんなん気にしながら生活するなんて窮屈だったろうな」


 彼女も頷いた。


「そうそう。でもメリットばかりじゃねーんだな。まず、その回路に電気を流す、ってトコがネックなんだ。大電圧をかけても、回路に電気がチョロっとしか流れねーんだよ。だから、得られる重力もチョロっとしか。だからクッソ頑丈でクッソ重い錘羽根をゆっくりとしか回せないんだ


 暖斗くんも知っての通り、DMTの主兵装、回転槍(サリッサ)な。あの中にも重力子回路が入ってる。初速がつかないから予備回転をさせて、時間かけて回転数を上げないとダメ。あれが秒でMAX回転してたら、マジでガチの最恐手用兵装(インスツルメント)なんだけど。普通の刀剣なんかじゃ受け太刀すらできね~から」


 彼女はちょっと悔しそうだった。


「これが、重力子エンジン第1の謎な。そして、第2が、マジカルカレント。なんと、回路の近くにいる人間のある特定の脳波が、一定量しか流れないハズの回路に干渉してより多くの電流を流す事が出来てしまう。結果、ジェネレーターはより多くのエネルギーを発生させることができる。


 例えるなら時速100㎞しか出せない車のハズが、マジカルカレント能力者が運転すると、あら不思議、105㎞とか110㎞までスピードが上がる。そんな感じ。消費電力はほぼ同じでね」


「『あら不思議』って。その原因を知りたいのにさ」


「結局まだ水口回路が未完成なんだよ。あ、水口博士って重力子回路作った人な。大昔のシリコンウエハースって平面回路だったじゃんか? 今はもう三次元回路だけどさ。


 その複雑怪奇な立体経路にとある法則性で電子を泳がせて、『重力子を誘う踊り』をさせるのが水口回路の妙味、『水口ダンシング』。電子と重力子の相互作用が惹起されるんだが、そこに暖斗くんのマジカルカレント――脳波が来れば、回路内の電流が増えて取り出せる重力も増えると。


 まだパーフェクトじゃね~ってことなんだよな‥‥」



 七道さんは、呆れた感じで両手を上げる。そして、続けた。


「そして、第3の謎な」


 彼女は僕、咲見暖斗を指さした。


「君は身をもって経験したと思うけど」


 そう、僕の体に起こったこと。


「マジカルカレントの、後遺症候群だね」


 そう答えると、七道さんは大きく頷いた。



「そう! 後遺症候群の医学的な話は逢初にでも聞いてくれ。私が謎だと思うのは、発現箇所と発現タイミングだよ。なんで特殊な脳波を出してたからって、体が動かなくなるんだ? 普通頭とか精神とかだろ。それに、なんで戦闘中は何も起こらない!」


 七道さんは手を振りまわして力説する。


「後遺症状が出るのは決まってエンジンを切った時か、操縦席隔壁(ヒステリコス)を出た時だ。まあ、操縦席を衝撃から守る為のゲルダンパーが、一時的に重力子回路から出る何かを受け止めて蓄積する説や、操縦席を浮かせてる重力加速度マネジメント用フローター犯人説があるけどな!」


 後遺症状。話の核心だ。


「正直ビビったよ僕は。ホントに首から下が動かなかった。最初は何が起こったのか分からなかったからね?」


「‥‥暖斗くんはもしかすると、逸材かもしんねーぞ?」


「え、マジ? ってか、後遺症が出る人ってどのくらいいるんだろ? 逢初さんは1000人にひとりだって」


「それこそ軍事機密だぞ? でも各国でもう研究始まってて私らがそれを知ってるんだから、まあ知られた話ではある。ただ、暖斗くんのレベルは相当やべ~と見た」


「そう?」


「だって、マジカルカレントって回路に過電圧かけてないと起こらない現象だ。 今回何もしてないのにDMTのエンジン出力が上がって、パイロットに後遺症出てるとしたら、じゃあ、正規の状態、回路に余分な電圧かけたらどうなるんだって。過去事例がないからな。重力子エンジンの出力(パワー)跳ね上がるんじゃね~の?」


「う~ん。どうだろ? 自分で努力したりしてないから実感ないなあ」


「ま、あんまマジカルカレント使いすぎると副作用がシャレじゃ無くなるみたいだし、ほどほどにがんばれよ。新兵(ベイビィ)くん」





 七道さんは無邪気に笑い、背伸びをしてから僕の肩をポン、と叩いた。






※電気代がアレな昨今。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オタク心をくすぐられて、私はこの回好きです! [一言] 感想なのに短文で失礼しました。
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