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第6話 マジカルカレントⅠ① #設定語りだみんな逃げろ!

※作中に出てくる「重力子エンジン」と「マジカルカレントとその後遺症候群」周辺の設定説明回です。ガチの語り回なので、苦手な方は本気で読み飛ばしてください。





 あくる日。夕食後に検査を受けて、自室に戻るOKをもらった。体もちゃんと動けるようになってた。


 一旦自室に戻ってからシャワーを浴び、ハンガーデッキへ向かった。

 早く自室で羽を伸ばしたかったけど、気になる事があったから。



 ハンガー、――DMTが格納されていて、その整備も行われてる所だ。艦内フロア1 Fの廊下の先、艦体前部。隔壁も兼ねている金属製の分厚いドアをゆっくりと押し開けると、鉄臭さと機械油の匂いの立ち込めたハンガーデッキのエリアに入る。


 ハンガーデッキは別世界だった。事故防止のために煌々と明かりがついて、まるで別世界。


 遠くで近くで、低く響くモーター音や鉄製の器具が床に置かれる金属音が鳴りやまなかった。


 そんなデッキの中央部。20時32分。


 少し茶色がかった短い髪、背は低い方。グレーの作業着のポケットに両手を突っ込み、僕のDMTを見上げている七道璃湖(ななみちりこ)さんを見つけた。


 僕がここに来た目的の人だ。


「お、『ケラメウス』君。何? メール読んだぜ? タメ口でいいんだって?」


 彼女は僕を見るなりそう言った。


「何? 『ケラメウス』って?」


「DMTパイロットの正式な呼称さね。私ら海軍中等工科学校(こうか)の機械科の界隈はそう呼んだりするから、覚えとくといいよ」


 ふ~ん。そうなのか。


 僕らの国、絋国では、同級生でも女子は男子に遠慮して丁寧な言葉使いをする。男子の出生数が少ないゆえの深刻な女子余り。嫌われたくないから慎重になるんだ。


 僕はそういう堅苦しいのが嫌いなので、フランクな言葉使いにしてもらえるよう全員用のメールに書き込んでいた。


「うん。わかった。あと、もちろんタメ口OK。ぜひそうして」


 僕は答えた。


「なんだ、こっちからそうしてもらおうかと考えてたんだ。じゃ、今後『暖斗(はると)くん』と呼ぶぞ。変更はねーかんな?」


 思えば彼女は、他の女子には全員にこんな言葉使いだったし、僕にも最初からこういう言葉使いだったような。そういうキャラなのか。


「もちろんいいよ。それで七道さん、ちょっと聞きたい事があるんだけど?」


「‥‥マジカルカレントか?」


「え、何でわかったの?」


「昨日ひと晩医務室だったんだろ? 自分の体が動かなくて寝込んだら、そりゃあ、マジカルカレントがどんなもんか? 知っときたくなるだろ?」


「そうなんだよね。それに次の出撃で、その後遺症が出ないように戦えないかなって、思ってさ」



 僕の言葉に七道さんは大きく頷いた。


「わかったよ。マジカルカレントについてザックリ説明する。で、それについて私から一言」


「何?」



「こっからは専門的なハナシになるから、興味のない方はブラウザバックしてくれ」



「‥‥は?‥‥誰に向けての!? そういう動画の見すぎたよ」


「すまん。一回言ってみたかったんだ。じゃあ、いくぞ」



 彼女はそう言うと、ナゾの後遺症――マジカルカレントについて話しだした。



「こいつを説明するには、DMTの重力子エンジンについて知ってないと話になんねー。まずは、そっから行くぞ」


 彼女は僕の前で仁王立ちになると、パッド型のPCを取り出して、その画像を織り交ぜながら話し出した。出航時に軍から全員に支給されたヤツだ。


「暖斗くん。重力子エンジンは、重力子回路と、エンジン部に分かれるのは知ってんな?」


「うん」と僕は答える。そこから彼女は一気に続けた。


「重力子回路に電気が流れると、そこの時間と空間が歪む――重力場だ。ずっと見つからなかった幻の素粒子、重力子――グラビトン――を発見して、この惑星の重力の2 %分だけコントロール出来る様になった人類が、生み出したカラクリだ。


 配線に電気流すと磁場が生まれるように、この回路に通電させると重力場が生まれる。まあ正確には回路内を『踊るように』通った電子の『ふるまい』が、重力子と相互作用する。電子の踊りにつられた重力子も、踊りだしちまうんだとよ。これが水口博士が発見した『水口ダンシング』だ。まあつまりは、だ。


 重力子回路に電気流すと、重力場が生まれて任意の方向――つまり好きな方向――に、物を『落とす』ことができる。例え真上、空に向かってでもな。それが重力子回路だ。そしてその『落とす』力を円柱内で円方向にぐるっと一周させて、中心にある錘羽根(おもりばね)というハネを回す。


 いや、回す、と言うより『右回転方向に落ち続けさせる』って方が正確だな。まあその、中心のハネを回した分だけを、回転運動として取り出せる。ここまでが一般に言う重力子エンジンだ」


 彼女が持つパッドPCで、画像を見せてもらった。


 金属製の筒の内側に、基盤がらせん状に貼り付けられている。これが重力子回路。その筒の中で反対向きのらせん状のハネで回転するのが『錘羽根(おもりばね)』、パスタのフジッリにそっくりで、らせん階段みたいな形をしている。


 回路もハネもらせん状なのは、ハネと回路の接近面積を常に一定にして安定した回転を得るためと、重力の変化を操縦席に向けずに、DMTの背中方向へ逃がすためだそうだ。


「で、単に回転運動だけを取り出す機械をエンジン、その回転で発電する機械を重力子ジェネレーター、若しくは重力子ダイナモーターって言うけど、重力子エンジンで一括りにする人も多いから、この辺はザックリ知っとけばいいよ」


 七道さんはパッドの画面をなぞってページを変えた。


「で、こっからがマジカルカレントと、その後遺症のハナシな」


「うん。本題だね」





 僕は身を乗り出した。






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