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第1話 コンビニのトイレに寄っただけなんだが

小さなことをコツコツと積み重ねる努力

目の前のことから逃げずに立ち向かう勇気

一度決めたことを最後までやり遂げる覚悟


俺はそんな当たり前のことができなかった


小さな努力はおろか一度決めたことも成し遂げることが出来なかった俺はなんと情けない事だろうか


『俺の人生どうしてこうなっちまったんだろうな?』


俺、高峰裕二は柄にもなくそう呟いた


今までの人生をふと振り返った俺はあまりにも甘かった自分に対しての後悔で頭の中がいっぱだった。


高校や大学の頃バイトや授業ですらめんどくさいと嘆いてたあの頃を思い出すと自然と笑えてきてしまう。


本当に甘かったな、俺も。


大人になるって事を知らなかった自分が懐かしいと思える程に俺は歳を取った


背伸びして偉そうな事を言っていた俺は結局のところ子供だったのだ。


12月21日、世間ではもうじきクリスマスだなんて騒ぎはじめるこの時期に俺は河川敷で自販機で買った缶コーヒーを片手に黄昏ていた。


ちなみにあまりにも寒すぎて缶コーヒーは秒で冷えた。


『今更こんな人生をやり直したいだなんて、都合が良すぎるよな』


そう呟いた俺は辛い現実を全て飲み込むかのようにコーヒーを口の中に流し込んだ。


冷てぇ…外の寒さとのダブルコンボで腹が冷えそうだ。


なんとなく寂しくなって家とは逆方向だが駅の方へと歩き始めた。


駅が近づくにつれて街の明かりはまるでシャンデリアのように輝きを放つ


みんな仕事終わりだってのに随分と楽しそうだな。飲み屋でぶっ倒れてる人、楽しそうに飲んで騒いでる大人達を見た俺は


『俺みたいな中途半端ものじゃ場違いだな…』


素直にそう感じた。


そう、俺には飲んで騒ぐ権利もありゃしない。


なんでそんなこと言うのかって?


それは…


『さっき仕事を辞めてきました!なんて大きな声で言える訳ねぇだろ…』


そう、俺はほんとにさっき仕事を辞めてきたのである!


デデーン!!!!!!!!!


その効果音マジで合ってなさすぎやろ、ってなにわろとんねん


仕事辞めたい!クソ会社!と言うのは良く聞くことだが実際に仕事を辞めるとなると以外と大変なものなのだ。大体なんでお前が?って奴ほど何も言わずに辞める。これは経験上の話だから間違いねぇ。


こうして仕事を辞めた俺は心の底からこう思う。


社会はこうして今日も回っていくのだろう。


世の中を生きていく為には嫌でも働いて行かなきゃならない…んだけど訳あって俺は今日から無職になった。


理不尽なことがあってもへこたれない精神…無理だろそんなもん


社会人ってなんだ?年取ってずーっと働いてりゃ偉いのか?訳わかんねぇ


人様の評価の基準なんて知らねーよ。


『色々と覚悟、したつもりだったんだけどなぁ』


柄にもなく俺は元気が出なかった。周りに心配かけたくないんだけどなぁ


「大人」になるってマジでわからん


とりあえず寒いし早くこたつに入りたいわねほんと


『さて、帰ろう。アッタカハイムガマッテイル!』





ハァハァハァ…


俺はひたすら街をかけていた。


全身が熱く息も苦しい。


迫りくる緊張感が俺を襲い汗が止まらない。


『なんでだよ…チクショウ』


クソ、こんなにもやばい状況だってのに。


まだ見つかねぇのかよ…。


汗が額を流れていく


この汗はそう、言うなれば冷や汗とでも言うべきか…


…だ…。


どこだ…。


『トイレはどこだぁぁぁぁぁぁああ!?』


俺に忍び寄る影。それは腹痛という名をもつ悪魔だった。



1時間前


『さてとりあえず家にっと、なんだ?これ』


家の前に着くとドアの前に張り紙が貼ってあった


その中身を見ると…


『家賃払わざるもの侵入すべからず』と


あれ?俺今月家賃払ってない?


あれまさか忘れてた?マジ?


先月家のインターホン鳴った時ちょうどトイレに居てて気づかなかったんだけどまさか


これはまずいのでは?


そこに忍び寄る影…


それこそがあらゆる対象を破壊する下腹部魔法 『ハライタ』なのであった…





今まさに現代病ともいえる『腹痛』


俺はこの腹痛という悪魔を抱えて生きている。


俺にとって一番の苦痛である腹痛。


いや、ギャグじゃないからな?


人によって苦痛のランクはそれぞれだが俺のこの腹痛は一味違う。


冷や汗をかく嫌らしいタイプの腹痛…まるで三蔵法師のはめた頭のリングが実はお腹についていて…ってなレベルの激痛が俺を毎回襲うのだ。この世で一番嫌いと言っても過言ではない。


あの絶望感は味わったことがないと分からないだろう。


街をかけやっとコンビニを見つけた。


コンビニ店員はどこだ?!あっ!もうやばいかも!!


中には店員に話しかけないと行けないタイプのトイレもある。ここはルールを守らねば!


『すいま…せん!トイレ貸してくださいっ!!』


『どうぞ。右奥になります』


幸い先客は居なかった。


こうして俺はかろうじてなんとかトイレに辿り着いたのだった。







『ふぅー危なかった。一時はどうなることかと』


全くいきなりってのは勘弁だよ本当…。


そう思いながらトイレのノブを回す。


『さて、家に帰る……………ん?』



トイレを出るとそこは中世ヨーロッパの歴史的建造物が存在しており…



バタン


あまりのことに驚き強くドアを閉めてしまった。



一旦落ち着こうじゃん。トイレでたらヨーロッパな訳ないでしょ。アニメの見過ぎだよ俺…。


あまりのショックについに幻覚が見え始めたかと思った。


『よ〜し、深呼吸だぁ深呼吸。息を吸って〜吐いて。吸って〜吐いて…。』


これでだいぶ落ち着けたはずだ。


『疲れすぎて夢でも見てんだ。早く帰んないと』


恐る恐るドアを開ける。


そこは先程の…



中世ヨーロッパの歴史的建造物が連なっており(早口)



『…………………………………。』



『あ、ありえねぇぇぇぇぇぇえ!!!!!』



レンガで出来た建物とかもう超キレイじゃん!なんだここ?!


なんか街の賑わいがすげぇ…。東京のクソ汚い空気と違う!


目を擦っても建造物が消えない!頬をつねっても痛い!


なんか馬車まで走ってるし、日本の匂いじゃないし…。



なんとも受け入れがたい現実がそこにはあった。



状況が理解できず俺は



『トイレから出たら異世界って泣きアニメだろ…』



ついそんな事を口にしてしまうのであった。



これからどうなっちまうんだ?!俺。









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