第8章〜二人の距離〜
そして、私たちが向かったのはまたまたストーリー性のあるアトラクション、深海三千海里。このアトラクションは、自分たちが乗組員となって深海までポッドに乗り込み探険するというもの。中でも魅力的なのは、ポッドの中の座席の真前にあるレバーでライトが自由に動かせること。まぁ、あとの魅力は乗ってからのお楽しみってことで。
「ね、星夜くんはこのアトラクションの見所、知ってる?」
「あ、ライト動かせるやつ?」
おー、知ってた。流石。この辺りでもパフォーマンスたくさんやってただけあるね。
「そうそう!それでね、座った座席の位置によっても見所ってちょっとずつ変わってくるんだけど、ライト、どっちが動かすか先に決めておこうと思って」
って言っても、本当は私やってみたい気持ちあるんだけどね。だってアレ楽しいんだもん…!
「そうだね。じゃあ、真由ちゃんやってみたら?僕、真由ちゃんがどうゆうとこに興味があるのか見てみたいし」
「いいの?やったー!」
やったぁーっ!!主導権、取ったなりー!
因みに、ここのQライン。ちょっと狭めの造りにはなってるけど、ルナ博士の書斎やらなんやらが再現されてる空間があったりして、ここも飽きさせない。ただ、Qラインの最初の方にある螺旋状の待機場所は要注意。このパークの水が海の水を使っているということもあり、柱には潮風が当たって潮がかなりついていたりする。もたれたりすると、黒い服は真っ白になったりするので、要注意。
「あ、そろそろ順番回ってくるよ」
「はぁい」
「ねぇ真由ちゃんってさ、アトラクション待機時間とかに時々空中見て何か解説してる感じがするけど、一体誰に向かって話してるの?」
「え?内緒!」
だって、世界観壊れちゃうもんね!
「まっ、そんなこと気にしないで乗ろ!」
そう言って、私は星夜くんの手を引いて乗り込んだ。座ったのは一番奥の席。
んー、確かかなり絶景だったような。
着席して少し経つと、窓の外に泡が吹き出し始める。すると、ポッド内でルナ博士のアナウンスが流れ出した。
『これから、深海探索を始める。乗組員の諸君は、座席の前のレバーを使い、ライトで気になる所を徹底的に調べてくれ』
『イエッサー!』
これ、毎回乗る度に思うんだけど、このルナ博士に応答してる乗組員の爽やかな男性、誰なんだろう。ここにもいない人だし…。ルナ博士のとこにも居ないんだろうし…。もしポッド内全員友達だったら、全員で掛け声かけて、「せーの」で「イエッサー!」言ってるなぁ、絶対楽しいもん。それも毎回思う。
「よーし、まずは水中庭園。調べ尽くすぞー!」
「確かルナ博士が作ったやつだよね、僕も聞いたことある!」
ライトが点滅した後しっかりと点灯すると、私は手元のレバーを動かしてルナ博士の庭園をじっくりと観察する。
うむ。中々整備が行き届いているようだ。
更にどんどん進んでいくと、何やら目のような物が現れた。
え?目?これ、絶対目だよね?確かこの後巨大なタコ現れるし、それの目だよね?え、今ガンガンライト当てちゃってるけど、これ、絶対喧嘩売っちゃってない??
『船長!何か、巨大なものに掴まれて動けません!』
あ。
『何!?直ちに、モーターをフル稼働させて脱出するのだ!』
『ダメです!逃げられません!!』
「…真由ちゃん、一応シナリオだからね?落ち込まないでね?」
「…うん」
『仕方ない!こうなったら、電流を巨大生物に流し込んで脱出するのだ!』
ビリリリリリリリッッ!!
「真由ちゃん…っ!」
「えっ?」
その轟音が響くと、ポッド内の電気が消えるのと同時に私に何かが覆い被さってきた。驚いて振り返るとそこには星夜くんがいた。多分、もう少し私が首捻ってたらキスしてたかも。そのぐらいの顔の距離感。これにまた驚いて慌てて前を向く。
「せっ、星夜くん、どうしたの…?」
「つい…ビックリしたから…。守ってあげたくなって…。ごめんね…」
心臓飛び出るかと思った…。本当、ドキドキした…。
「ごめん…今離れるね…」
「待って」
「え?」
「もう少しだけ…せめて灯り戻るまでこのままでいたい…」
せめて、この甘い時間をもう少しだけ…。
「…もちろん」
すると、点滅した後電気がつく。
「…っ…」
「電気…着いちゃったね…。星夜くん、すごくあったかかったし、私、星夜くんの気持ち嬉しかった…。ありがとね」
アトラクションもいよいよ終盤になり、無事に私たちは地上へと戻ってきた。だが、星夜くんはどこか浮かない顔をしている。
「星夜くん、どうしたの?」
「うん?別に〜…」
「…もしかして、さっきのまだ引きずってる?」
「……」
やっぱり。電気ついた瞬間、すっごく悔しそうな顔してたもんね。嫌々離れてたもんね。
「仕方ないよ、ここは人いっぱいいるんだし。それに何より忘れちゃいけないのは、まだ私たちは付き合ってないってこと。私も星夜くんのことすっごく大好きだけど、そんな早くには人の本質なんてわからないでしょ?だからまだ、お友達」
「…うん」
…彼女、欲しいんだろうな…。相当、寂しいんだろうな…。私もこんなこと言っちゃってるけど、本当は星夜くんと付き合いたいし…。でも…前にそれで失敗して…。もう、おんなじ事繰り返したくないから、寂しいけどこうするしか…ないんだ。
「ね、いつまでもそんな暗い顔してたら折角のトラスト楽しめなくなっちゃうよ?だからさ、ポップコーンでも食べながらバーニクル・インサーション行こう?」
そう言って私がポップコーンを差し出すと、星夜くんはポツリポツリとポップコーンを食べ出した。
「…甘い、美味しい」
こういう所は星夜くんらしい。ちょっと拗ねると中々切り替えが悪いんだけど、でも本人は頑張って切り替えようとする所。子供っぽいけどなんだか応援したくなる。可愛くって好きだなぁ。
「でしょ?じゃ、一緒に行こ!星夜くん!」
「…うん!」
歩くこと五分ほど。目的地、着。
「うわぁ…ここ、何回も通ることあったけどこんな物売ってたんだねぇ!」
「でしょ?通るだけじゃわからない、来るからこそわかる。本当の楽しみ方だよ」
良かった。星夜くんに気に入ってもらえたみたい。星夜くんは基本的に可愛い物も好きになりやすいけど、こういう冒険心がある物とかも好きそうだもんね。なんていうか…童心を擽られるってやつ?
「ねぇ、真由ちゃんは何か買うの?」
「えっ?あー…私は…」
店内をぐるっと見回すと、店の奥にスーベニアメダルの販売機を発見した。
やった!昔からコレクションしてるやつ!一回百円だから毎回やっちゃうんだよね!
「とりあえずスーベニアメダル一枚作ろうかな。記念に。他はゆっくり周ってみて気に入ったものがあれば買うって感じかな」
「わかった!じゃあ、真由ちゃんの次、僕もやらせて〜!」
なるほど。このタイプからすると、人が楽しそうにガチャガチャやってたりすると自分も衝動的に、「一回だけ」ってガチャガチャやっちゃうパターンの人だな?
そしてメダルゲット後、店内を軽くぐるっと一周する。全体的に男性向けのデザイン。中にはバナナのキャラメルなんかも売っていた。ケースがバナナで、中身がキャラメル。味もバナナなのかどうかはイマイチよくわからないが、ケースがちょっとリアルで星夜くんが好きそうだなと思いながらそのまま通り過ぎた。
「これくださーい!」
あ、星夜くんの声だ。何買ったんだろう。
ちょっと気になって棚の間からそっとレジを覗いてみると、そこにはさっきのバナナと筆記セットがあった。
ちょっと!バナナ買ってるじゃん!!
「あっ、はい、えっと、ぷっ…。八百円です」
ちょ、キャストさんからも笑われてんじゃん!てか、そりゃ笑うよ!満面の笑みでバナナくださいって、そりゃ笑うよ!!「ぷっ…」で済ませたのがすごいぐらいだわ!もう、ここでこうして見てるのが本当辛い。笑い抑えるのが本当キツい。そろそろ買い終わりそうだし、腹筋崩壊しそうだし、星夜くんのとこ、行こう…。あー、お腹痛い。
「星夜くん」
「あっ、真由ちゃん!見てみてー!ほらこれっ!バナナ!面白いでしょー、本物みたいでしょー?でも中に入ってるのはね、キャラメルなんだよー!」
知ってる、さっきそれが原因で爆笑しかけた。てか、またそれで私の腹筋を崩壊させる気?
「あの、星夜くん、そのバナナ…ウケ狙い?」
「え?ウケ?違うよ?単純に面白いなって。それだけ」
「キャストさんに笑われてたけど、気付いてた?」
「えっ!?そうだったの??」
あ、だめだこの人。自覚が一切ないわ。まぁいいや。星夜くんは欲しい物買えたみたいだし、私もスーベニアメダルゲット出来たし、このお店は大満足ってことで!
「そうゆうとこ、本当星夜くんらしいよね。じゃ、早速次のとこ向かおっか!いざ、マジカル・ヴェース・スクリーンへ!」
「レッツゴー!」
今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!
ロマンチックな行動、今回ありましたね〜…!もしそれが、本当にモデル様からなら…?などと妄s…ゲフンゲフン、考えを膨らませると結構楽しかったりするのではないでしょうか?(そう言うのが苦手な方はごめんなさい。この後そう言う話が後書きで続きます。フィードバックをお勧めします)
でも、一度は考えた事ありませんか?自分の推しからバックハグされたいな…、密接したいな…なんてこと。私は、そんな夢を叶えるべく、小説を書き始めました。そして、書き始めてから早三年目。初めて小説を出しました。
そして遂に…ふふっ、いえ、ネタバレになるので、ここでやめておきます。今後の展開に、乞うご期待!!
それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!