第1章〜迷子は魔法で導こう〜
「どうしたの?大丈夫?僕は宮澤星夜。君の名前は?」
その声を掛けてきた宮澤さんと言う男性は、どこかで見たことがあるような気がしたのだが…。きっと気のせいだろう。
「僕…久喜原優介。あのね…。パパとママがいなくなっちゃったの…。僕のこと嫌いになっちゃったのかな…」
「そんなことないよ、きっと今も、優介くんのパパとママは必死になって優介くんを探してるよ。じゃあ、それまでは僕が取っておきを見せたげる!」
それだけ言うと、宮澤さんはニヤリと笑って「おいで」と言った。心配した私も着いて行くと彼は突然立ち止まり、大きめのハンドタオルを手にくるっとこっちに振り返った。
「行くよ?よーく見ててね」
すると、突然何も無い空間に向かって勢いよく窓拭きのパントマイムをし始めた。あれ、もしかして…この人って…。
「すごい、すごい!!どうなってるの!?もっと!他のも見せて!」
「いいよ。じゃあ、優介くんの洋服の中から〜…バナナ!」
「きゃはははははっ!!」
確信犯っ!!そうだ、この人は間違いなくあの人だ!数年前に引退しちゃったこのパークの人気者キャストさんの宮澤さんだ!でもどうしてここに…?今は引退してマジシャンやってるはずじゃ…。
「あっ!優介!!ここにいたのね!心配したじゃない!」
ん?この人は?
「ママ〜!あのね、あのね、すごいんだよ!このお兄ちゃんは魔法使いで、このお姉ちゃんはラッフィとお友達なんだよ!!ママも一緒に見て欲しかったな〜!」
「そうだったの。どうもありがとうございました!優介がお世話になりました。私が優介を見つけられたのもおニ人のお陰です。本当に有難うございました!」
「いえいえ、僕たちは何も。ただただ、優介くんを楽しませたかっただけです。じゃあ、優介くん、もう迷子になっちゃダメだよ?この後も楽しんでね!ばいばい!」
優介ママは、何度も律儀にお礼を繰り返すと、優介くんの手を引いて別のテーマコーストへと歩いていった。
「さてと。えーと、改めて自己紹介するね。僕は宮澤星夜。君の名前は?」
えっ?えっ?私??
キョロキョロしてから自分を指すと、宮澤さんは笑顔で頷く。す、すごい…。あの憧れの宮澤さんから名前聞かれてるよぉ〜…。
「真由です。天藤真由」
「そっか、真由ちゃんね。真由ちゃん、さっきの全部見せてもらってたけど、あれ凄かったね!真由ちゃんの子供に対するあの優しい接し方は本当に見てて心が暖かくなったよ。だから僕も、優介くんに声がかけやすかった。本当にありがとね」
え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
私、今、宮澤さんに褒められたっ!?あっ、でも、よくよく冷静になって考えてみれば「宮澤」って名字なんてよくあるし、「せいや」なんて読む名前の人もよく聞く。たまたま憧れの人のドッペルゲンガー(※)兼同じ姓名の人が現れたのかも。うん!
(※世界にその人を含めた三人しかいないと言われている、そっくりさん。顔を合わせると亡くなってしまうと言う都市伝説もある)
「ど、どういたしまして。そう言ってもらえて嬉しいです。そ、それで、つかぬ事をお聞きしますが…」
「うん?どうしたの?」
「もしかして、ファンキャスト宮澤さん…?ですか…?」
「えー!?なんでわかったのぉ〜!?僕今日この感じならバレないかなって思ってチョイスしたのに〜…」
えっ、もしかしてバレてないって思ってたのかな…。ここはそっとしておいてデスティニーアイランドにでも行こうかな…。
「うん…まぁ…バレちゃったなら仕方ないね…。正しくも!僕がそのファンキャスト宮澤です!今日はね、ただただ遊びに来たわけじゃなくて今度の公演の下見に来たんだ。ただ、それがお昼からだからそれまではパークで過ごそうと思って。あそうだ!ねぇ折角だしさ、僕と一緒にパーク周らない?」
え、何この急展開。話が進みすぎてちょっと着いていけない…。
「僕が相手じゃ嫌…?」
うっ…!やめてっ!そんな子犬みたいな目で見ないでっ!!
「とっ、とんでもないです!!すっごくすっごく嬉しいです!私で宜しければ是非!!」
「うん!じゃあ行こう!」
そう言うと、宮澤さんは私の手を取って人混みの中を歩き出した。
今回もお読み頂き誠にありがとうございました!
今回初登場した、宮澤星夜というキャラクターですが、わかる方はなんとなーく察しているとは思いますが彼は、とある現実にいらっしゃるすごい方をモデルにして書かせて頂いております。
今現在、2020年、4月上旬。その方が一ヶ月近くネット上にも顔を出さなくなってしまったので、この際せめてその方を応援している皆様と私でこの物語を進めながら復活を待てたらな、と思っている次第でございます。
微力ながら、この小説はそんな星夜のモデル様の応援者の皆様に捧ぎます。
少しでも皆様の心の穴埋めになれば幸いです。
それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!これからもバリバリ投稿していきますのでお時間ある方はどうぞお付き合いくださいませ!