表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジックの種は夢の中で  作者: 天河 蒼夏
14/20

第12章〜夢から目覚めて〜

「それで?『恋愛なんてもうしない』なんて言ってたお姉ちゃんがなんでこんな事になってるの?」

 台所から手を動かしながら理玖都は私に問いかけた。でも、答えられる訳がない。帰る前、言わないでって言われたばっかだし、それに何より信じてもらえる訳がない。だって、誰よりも自分自身が信じられないって思ってるんだから。

「…言えない。言うなって言われたし…」

「…へぇ。さては、有名人にでも好かれちゃった?」

「え゛っ!?」

「なーんてね!こんなお姉ちゃんがそんな有名人な、ん、か、に好かれる訳ないよねぇ!あははははっ!!」

 最低…ッ!理玖都は私と星夜くんのこと何にも知らないくせに…!

「…そんな言い方ないじゃん!星夜くんは私のこと選んでくれたんだよ!!私のこと、可愛いって言ってくれたんだよ!一緒にイクスエリピスだって行ったし、rinだって交換したんだよ!!ほら!」

 すると、理玖都は目を細めて私のスマホをじっくりと眺めた後、ニヤリと笑った。

「な、何?」

「はい、自白頂きましたー。お姉ちゃんはファンキャスト宮澤さんが彼氏さんでぇーす!」

「!?」

 汚い!こんなやり方で誰と居たか探り出すなんて…!しかも、わかった時のこのニヤつき顔と異様なまでのテンションの高さ。憎たらしいったらありゃしない!!

「はい、そんな有頂天なお姉ちゃんへ。ココア入ったよ。とりあえず、なんでその人と付き合う流れになったのか教えてよ」

「…はぁ。いいよ。始まりは迷子の男の子からなんだけどね…」

 そして私は、理玖都にこれまでの経緯いきさつを全部話した。勿論、正式なお付き合いはしてないことも話した。けど、夜のお遊びのとこはあやふやにしといた。だって恥ずかしいし。

「ふーん。なるほどね。お姉ちゃんがエンターテイメントのお仕事ねぇ」

「うん。裏方って言ってたから多分小物製作とかデザインとかだと思うけど。だって私、舞台機触れないし」

「だろうね。でもお姉ちゃん、センスゼロじゃね?」

「…」

「はい終わったー」

 それを言われてしまったら何も言い返せないのが事実。星夜くんの前では何も言わなかったけど、実は小学、中学の頃の美術の技能の成績は殆ど最低のCだった記憶がある。意欲はAだったけど。

「でもできない、で終わらせる訳にはいかないよ!今からでも少しずつセンス磨いてけばなんとかなるはず…。オーナーに頼んでみる…!」

「あ、ちょっと、お姉ちゃん!?」

 そして私はトラストの職場用のお土産を持って家を飛び出した。

 そして向かった先は私の勤め先の喫茶店、

「ふぉれすと えすぷれっそ」

 店の外見は落ち着いていて、個人経営としてはかなり安定しているお店。私がこのお店を選んだ理由は、オーナーの人の良さと、木でできた、楕円形の板にひらがなで焼き文字で書いてあるお店の名前の看板おしゃれだったから。あとは全体の外見。

 そんなオーナーとは…。

 カララン

「いらっしゃいませ。あらぁ?真由、どうしたのぉ?今日シフトお休みだろぉ?」

「すみません、オーナー。突然来ちゃって…。私、どうしてもラテアートが練習したくて。それと、昨日行ってきたトラストのお土産。渡しに」

「あらぁ。その為に。偉いねぇ。流石真由たんだぁ。おーい。みんなぁ。真由がお土産買ってきてくれたぞぉ!」

 ちょっ、オーナー声でかい!お客さんいる!てか、ここ喫茶店!そういうのを意識して欲しい…!

「わぁ!真由ー!来てくれたのー!?超嬉しいー!お土産!?何!何!?チョコ!?」

「あ、うん。コーヒーに合うかなって思ってチョコブラウニーにしたよ」

「へえ。流石。勤め歴二年にしちゃ覚えが早い先輩らしいですね…。ありがとうございます。……妹もチョコだって喜んでますよ」

「あ、寛人くんも今日シフト入れてたんだね!妹さん?にもどういたしましてって伝えといてね!じゃあ、私そろそろ厨房行くので!お土産余ったらまた配りますね!」

 ぶっちゃけ、オーナーの大森唯嗣さん、同僚の皆河歩実ちゃん、後輩の大浪寛人くん。それに加えて、今日のシフトプラス二人が全員なのだが、全員キャラが濃すぎるのがこの喫茶店の不思議なところだ。まぁ、「ふぉれすと 『えすぷれっそ』」ってだけあって、わざと濃いキャラの人だけをオーナーが採用してるのかもなぁ…。まぁそんなことより、早く練習しよ!星夜くんの前で恥かかない為にも頑張らなきゃ…!

 それからかれこれ三時間。段々慣れてきて腕も上がってきた。

 カララン

「いらっしゃいませ」

「カフェ・オ・レ一つとたまごサンド一つお願いします」

「かしこまりました」

 あれ?聞き覚えある…。この声。

 厨房から少し体を傾けてカウンターを覗くと、そこにはカッシーさんがいた。

「えっ!?あれ!?なんでここに…!?」

「んん〜、何ぃ、知り合い?」

「あっ、オーナー。そうなんです。今朝知り合ったばかりで…」

「そうかいそうかい。じゃあ真由がカフェ・オ・レとたまごサンド出してあげなぁ。きっと喜ぶよぉ〜」

「あ、はい」

 そういう関係では無い。別にいいんだけど…。

「真由!できたよ!行っといで!」

「う、うん…」

 私は少々緊張しながらカッシーさんの所へ食事を運んだ。そしてカフェ・オ・レとたまごサンドを置いて立ち去ろうとした、その時だった。

「あれ?もしかして、真由さん…?」

「…え、なんで私の名前を?」

 カッシーさんの話によると、あの後大号泣した星夜くんはすぐにでも吐き出す口がほしくて、それでカッシーさんに電話したそう。それでその時に私の話を星夜くんが話しまくるから、その時に私のことを覚えたらしい。

「それにしても、真由さんここで働いてたんですね…。私もここ疲れた時とかよく利用させてもらってるんですよ。お財布にも優しいですし、味も美味しいですし、雰囲気も落ち着いてますし。私、このお店大好きです。これからも応援してますね」

 おぉ、ここまで言ってもらえると嬉しいな。

「ですって!オーナー!」

「んん、嬉しいねぇ。じゃあ嬉しいからちょっとまけてあげるぅ。今回は特別にたまごサンドタダ。今回だけだからねぇ」

 すごっ、オーナー太っ腹じゃん!

「えっ、いいんですか…?」

「うんうん、いいのいいのぉ。真由がお世話になってるみたいだから、少しぐらいはじぃちゃんからも協力させてくれや」

 だからそういう関係じゃないって…。

 するとカッシーさんも疑問に思ったのか、私のことを見上げてきた。「申し訳ないです…思い込みが激しいタイプで…」私はそう思いながら苦笑いするしかない。

「じゃ、じゃあ、冷めない内にお召し上がりください。ごゆっくりどうぞ」

 …ふぅ。それにしてもまさかこんな短時間で、しかもこんな家のすぐ近くでカッシーさんに出会うなんて…。一体行動範囲どれくらい広いんだろう?

「真由ぅ、もう練習はいいのかい?」

「あ、オーナー。ごめんなさい…つい考え事しちゃってて…。今日の練習は…」

 どうしよう。集中力切れちゃってるし、時間ももうお昼過ぎてるし…。

「…やっぱり、今日は終わりにします。ありがとうございました!」

「そうかい。お疲れ様ねぇ。お手伝い、ありがとねぇ。……今度の給料日、こっそり真由の分、今日お手伝いしてくれただけ増やしとくねぇ」

「えっ!?いいですよ!私練習でコーヒーの材料沢山使っちゃいましたし…」

「…実はそれがねぇ、新レシピ思いついたんだよぉ。これも、真由たんのお陰だよぉ。ありがとう」

 えっ、新レシピ…?ラテアートで…?どうするんだろう…。

「あっ、はい…、ありがとうございます…?じゃあ、お先失礼します」

「うん、お疲れ様ねぇ」

「おつー!」

「おつかれです」

 ひとまずはちょっと美的センスも上がった気がするし、これで少しは全体的なセンスを補えるかな。

 すると。

 ピロリン

『真由ちゃん、ちゃんと家着けた?もし時間に余裕があったら、電話ちょうだい』

 あ、やば。rin入れるって言っときながら思いっきり忘れてた…!

『星夜くんごめん(>人<;)家着いたよ!ただ、今外にいるから家戻ったら直ぐ電話するね!』

『わかった!待ってるね!』

 そして、私はスマホをバックにしまうと足早に自宅へと戻った。

 自宅に着くと、早速自室へと入り星夜くんに電話を掛けた。呼び出し音が鳴って直ぐに星夜くんが出る。

「あ、もしもし真由ちゃん?」

「星夜くん!さっきはrin入れ忘れちゃってごめんね…。もう別れた悲しさとか寂しさとかで全部忘れちゃってて…」

「ふふ、大丈夫だよ〜僕もだから。それよりもさ、真由ちゃん今度いつ空いてる?」

 なんだろう、また一緒に会う約束かな?それとも初仕事の約束かな?

「明日空いてるよ」

「わかった。じゃあ明日、カッシー行きつけの喫茶店で来月の定期公演の打ち合わせ、軽くしない?」

「えっ?いいけど…。それって…なんて名前の喫茶店…?」

「えっと…確かふぉれすと…なんとかってとこ。ちょっと癖のある店長さんなんだけど、落ち着いた雰囲気が素敵なんだって」

 それって完全に私の職場じゃないですかーっ!え、何!?なんでカッシーさんそうさせたの!?オーナーに本当の私の彼氏(まだ彼氏じゃないけど)を紹介するため??いやいやいや…。え、でもどうしよう。別の場所にしたら折角のカッシーさんの親切を無下にしちゃうし…。

「そ、そうなんだ。折角カッシーさんが選んでくれたならそこにしよっか…」

「うん!僕も食レポで調べてみたんだけど、結構レビューも高いみたいだし。店員さんたちも個性豊かで面白いんだって」

 それは誰よりも私が知ってる。

「へぇ…。じゃあ、明日楽しみにしてるね。えっと、何か持ってくものとかある?」

「えーと、ノートと筆記用具。これからどんどん新しい知識も増えてくるだろうから、出来れば新しいノートの方がいいかも」

「わかった!」

「それじゃ、僕は明日のことについて色々まとめとくからこれで。わからないこととかあったらまたいつでもrin入れてね!じゃ、バイバイ!」

「うん!また明日〜」

 通話が終わり、電話をそっと切ると何やら後ろから視線を感じた。

「…!理玖都!?」

「ひぇっ!なんでわかったの!?」

 ドアを勢いよく開くと、そこにはおでこを赤くした理玖都がいた。

「ど、どこから聞いてたの!?」

「…ヒヒッ、最初から全部!『星夜くん!さっきはrin入れ忘れちゃってごめんね…』から、『うん!また明日〜』まで!何、明日お姉ちゃんの職場で宮澤さんに会うの?」

 そこまでバレてる!

「り、理玖都には関係ないでしょ!」

「え〜、お姉ちゃん酷いなぁ〜。折角俺がラッフィのマンツァーノ風の洋服の布安くて買ってきたから作ってあげようと思ったのに」

「なっ…!?」

 理玖都の裁縫の上手さはもはやプロレベル…!家政大学附属の高等学校からそのまま持ち上がりでずっと裁縫を勉強していた理玖都はとにかく手先が器用なのだ。そんな理玖都様が作るラッフィの衣装…。絶対再現度は神レベル…!

「うっ…。そうだよ、明日星夜くんと一緒に職場で会うってことになっちゃって…。それが、さっきたまたま職場で星夜くんのマネージャーさんに会っちゃったからそれで気利かせてあそこにしたんだと思う…」

「ふーん。なるほどね。もしかして、お姉ちゃんが気づかなかっただけでマネージャーさん、ちょい常連さんだったんじゃない?」

「どうだろう…」

 常連さんの顔は覚えてるけど…カッシーさんいたっけ…?

「いなかったならいなかったでもいいんだけどさ。俺には関係ないし。そんなことより俺にトラストのお土産ないの?」

「あっ!忘れてた!あるよ!理玖都にはトリュフ。一つは分けてね?」

「おっ、やったー!ありがとー!」

 そうそう。問題の引き金になったトリュフね。まあ、理玖都の為なら少しぐらいはいいんだけど。…でもアレは良くないな…。

「…色々大変だったんだからね?」

「何が?」

「何でもない」

 その後、理玖都と二人でトラスト映画を観ながら午後の時間をゆっくり過ごした。星夜くんとの時間も確かに楽しいけど、理玖都との時間は姉弟していってだけあって久しぶりの穏やかな時間になった。

 今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!

 今回も続々と新キャラ登場しましたね!みんなキャラが濃い!

 因みに、「エスプレッソ」とはコーヒーの種類とは理解されてるとは思いますが、意味を書くとすれば、濃厚なコーヒー、と言う意味なのでお店の名前は「ふぉれすと えすぷれっそ」にしました!(ふぉれすとはオーナーの苗字です)

 今後、どんどん新キャラ登場してきますが脳の回路が混乱しないようお気をつけくださいませ…!

 それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ