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マジックの種は夢の中で  作者: 天河 蒼夏
12/20

番外編〜私と彼のすれ違い〜

「なんだかこうしてると、友達じゃなくて本当にカレカノになったみたい…。ねぇ、これでもまだ僕とは『友達』なの?」

「…うん。まだ一日目だよ?早すぎるよ…。もっと色々一緒に乗り越えてから初めてカレカノになれるんじゃないかな…」

「そっか…」

 ここまでしても、私が星夜くんと付き合わない理由わけ…。それは、私が高校生だった頃の青春時代に理由があった。


 まだ私が高校に入って間もない頃。

 私は、「憧れのドラマのようなJKライフを一刻も早く満喫したい!」そんな思いから、入学二日目に仲良くなった男友達、一輝いつきと付き合っていた。ちょっとだらしない感じではあったけど、当時の私は初めての彼氏が嬉しくて、一緒に出掛けたり、学校帰りに寄り道したり、いつメンといる時もちょっと一輝に近寄ったりと、順風満帆なJKライフを送っていた。

 筈だった。

 そんなある日。いつメンの理依奈からある相談を受けた。

「ねえ。真由。最近、妙に一輝の距離が近いんだけど?」

「えっ…?なんで?」

「そんなの知らないよ〜、やたら言い寄って来るんだよ。何とかしてよ真由〜!」

「なんとかって…。なんて言って来るの?」

「えー?なんか私に自慢話した後に、『理依奈だからこれ言うんだよ』って…。気持ち悪いよぉ〜!」

 嘘…。それって…。

「えっ…それ……私にもしょっちゅう言ってる言葉…」

「え?真由にも?」

「うん…」

 私は、「信じたくない」。ただその一心だった。

 その日の夜は一輝からの電話に妙に胸がソワソワしたけど、堪えながら対応を済ませた。電話が終わった後に、電話口で何度も言われた、「大好き」と言う言葉がどこか薄っぺらく感じて、涙が出た。

 そしてその数日後、事件は起きた。

 その日はゴールデンウィークの最終日で、運良くいつメン四人全員の予定が合ったため、トラスト・アクアに行こうということになった。私は、こういった親なしでの友達だけでのトラストとかが憧れだったから、正直死ぬほど嬉しかった。だから、私も理依奈もテンションはとても高く、それこそ正に「夢の国」だった。

 でもそれが余計に、後の事態を悪化させた。

 私たちがお昼に着いてしまったということもあり、着いてすぐにパークに入園してすぐのレストランに入って食事をした。その途中パレードもやっていたようだが、中にいて気づかず、私たちはあまり見ることが出来なかった。

 その後、理依奈の意見でインディアン・ロードにあるセイロンのスカイ・ラグに行くということになった。でもその道中、奇妙な出来事があった。一輝が理依奈の手を握る、という行動を取ったのだ。

 なんで…?私と付き合ってるのに…?なんで私の隣も歩いてくれないの…?

「あー、浮気現場だ〜」

 隣にいたいつメンの大地は、そんな二人をおちょくるように笑いながら言った。

 …そうだよね。トラストに来たから、つい舞い上がっちゃってこういうことしちゃっただけだよね。

「ねぇ、なんで手繋いでるの?」

 私が笑いながら一輝に尋ねると、一輝は笑いながら答えた。

「え?あぁ、これ?はぐれないようにするため」

 それに対し、理依奈も笑顔で頷く。

 …この時はまだ、私も楽しいって思ってたから良かった。問題はこの後。

 それから、私たちはアトラクションに幾つか乗って、次に深海三千海里に乗ることになった。だが、それまでのアトラクションでも総じて言えることだが、大地はずっと足が痛いらしくアトラクションに乗らずに外で待っていたため、三人で搭乗していた。これだけ聞くと対して問題はないのだが、問題は座席。大体のトラストのアトラクションは(大型アトラクション以外)二人〜三人掛けが多く、私たちがチョイスしたのが殆ど二人掛けのアトラクションだったのだ。そしてその座席が…。

 一輝&理依奈

 と

 私、一人だけ。

 そんな孤独で寂しい座席がずっと続いた。最初は、「理依奈とも楽しみたいのかな?」と思っていたのだが、だんだんと孤独感が増していき、私一人でぼっちトラストを楽しむ、という方向性に変わって行っていた。何せ、いつの間にか二人の手の繋ぎ方は恋人繋ぎに変わっていたのだから…。

 その後も、二人の付き人のようなトラストでの時間は流れ、二人のデートのような光景をずっと見せつけられた。後半の二時間近い待ち時間のアトラクションなんかは勝手に二人で行かせた。

 でも、私と大地の気持ちは半分一緒みたいで。少しお喋りしたら、気持ちが楽になった。

 それでも、二人を許せない気持ちはあったけど。

「…そろそろ帰らないと門限やばいんじゃない?」

「あ、うん。そうかも。じゃあ調べなくちゃね」

 そしていつでも帰れるようにと調べると、大地は電車の乗り換えを調べてくれた。

 それなのに…。

「えー、もう帰るの〜?じゃあさぁ、せめて戻る時くらいあの船乗りたい!」

「あ、俺も!」

 え、時間ないって言ってんじゃん。

「は?待ち時間二十分もあんじゃん!間に合わねーよ!」

「やだー!乗るー!」

「絶対乗る!」

 お前らはガキか!

「もう勝手にして。俺たちは先に行くから。着いたらrin入れて。行こ」

「うん」

 その後二人は結局どのぐらい待って、どんな船旅をしたのか、どんなロマンチックな景色を見たのか、私には想像出来ないけど大地と二人先にメインゲートへと歩いて向かった。

 集合予定地のブルー・アースに着くと、本当は綺麗に見える筈の海外のような街並みの夜景が寂しく見えて、胸からじんわりと熱いものが込み上げてきた。

 辛い、寂しい、苦しい、悲しい。

 本当は全部、吐き出してしまいたい。

 なんでこんなにも素敵な場所でこんな思いをしなくちゃいけないのか。そんな気持ちで溢れていた。

 結局、二人は私と大地無しじゃ土地感ゼロで途中まで迎えに行ってやっと合流できた。その時間、約四十分程。合流してからは、お土産を買ってからトラストを出て、そのまま電車で帰った。そこでもやっぱり、一輝は私に対しての彼氏らしい言動は特に無く、理依奈もスマホをいじりっぱなしで何事もなかったかのような空気感だった。

 そういえば…理依奈も彼氏いたような…?

 電車から降りて門限をかなり過ぎてから自宅に帰ると、少し怒り気味の両親が私を待っていた。…無論、その後静かに叱られたのは言うまでもない。

 最悪だ…。デートになると思った一日が、まさかこんな最悪な一日になるなんて…。彼氏からの裏切り…。いや、前からずっと。今よくよく考えてみればそう。付き合った当初からされてきた自慢話も、どれもこれも嘘ばかり。自分をよく見せる為だけに…。証拠もないのに、それを私は信じて…。

 バカだ…!私はバカだ…!!

 その翌月、やっとタイミングを掴めた私は、休み時間に一輝を生徒会室に呼び出した。

「話って何?」

「あのさ…。私、やっぱりもう我慢できないんだよね。次から次に嘘つかれてさ。そんなのもう無理だから。別れよ」

「えっ…」

「じゃーね」

 一輝の目は、確かに潤んでた。泣けば良かったのに。大泣きして、すがってくれば良かったのに。「ごめんなさい、もうしません。だからやり直して…!」って。そしたら、「しつけーんだよ!」って言ってビンタしてスカッと出来たのに。

 それから、一輝とは殆ど会話を交わさないまま高校を卒業して行った。rinも交際終了後二年の初期辺りに、ブロ削(ブロック削除)したので卒業後は彼とのやりとりは一度もしていない。


 そして、今。彼氏に近いポジションに星夜くんがいる。彼は本当にいい人だと思うし、証拠もちゃんと見せてくれた。だからと言って、ホイホイ付き合う訳には行かない。「大好き」の一言で誘惑されて、痛い目を見た私だからもう二度と同じ思いはしたくない。

 例え彼がそんな人じゃないと分かっていても…。二度と前と同じように傷つきたくないから。

 今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!

 今回は少し重めの真由の過去編でした。

 なぜ、星夜と付き合わないのか…。実はこれが彼女の真相です。

 そんな暗い過去を持った真由を星夜は希望に導けるのか…?これからもご期待ください!

 それでは改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!

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