プロローグ〜年パス〜
私は、いよいよ念願叶って社会人ニ年目にしてトラスト・アクア・ランドの年パスを購入し、ここ、通称トラスト・アクアへと三日間の休暇を取り遊びに来ていた。
流れる陽気な音楽、漂う甘い香り、そして私の視界に入る全ての人の雰囲気は、幸せそうなオーラを醸し出していた。
そんな時。
トンッ、ドサッ
「あっ、ごめんね!大丈夫?怪我、ない?」
私は周りの空気感に圧倒され、前方から走ってきていた小さな子供に気づかず、その子は私にぶつかって転んでしまった。
「うわぁぁーん!!」
あー…。やっぱ案の定泣いちゃった…。そうだなぁ。こうなったら…!
先程立ち寄った売店の袋を弄り、中から買ったばかりのぬいぐるみのマペットを取り出す。そして、
「大丈夫だよ〜、落ち着いて〜。僕が来たからもう安心。僕と、このお姉ちゃんで君を助けるよ。さあ、立って。痛い所を見せてごらん」
私はパークの人気キャラクターのマペットを使い、声真似をした。
「わぁ!ラッフィ!どうして?なんで!?すごい!んとね、僕、今ここが痛いの…」
患部を見せてもらうと大した怪我にはなっておらず、擦り傷程度だった。
よかった。ともかく、傷の方は簡単に処置を済ませたが、問題はこの子の親がどこに居るのか。近くにいるならそろそろ呼びに来てもいいはず。遅すぎる。とりあえずは、パークのキャストさんの所に連れて行くことにした。
「ねぇ、お姉ちゃん。僕、お腹すいた〜。ポップコーン食べたい!」
「うん、いいよ!じゃあ今並んでるから私たちも少し並んで待ってよっか」
そして数分後無事ポップコーンを買い、キャストさんに迷子、と伝えたのだが…。
およそ三十分が経過しただろうか。未だに親らしき人物の姿は見えない。でも、それも仕方ないのかもしれない。何せこのパークは端から端までの移動で空いてても三、四十分ぐらいかかるのだから。するとやはり、だんだん不安になってきたのか、子供の顔にも不安が広がっていく。
「大丈夫だよ、きっとそろそろ来るから」
そう励ますも、中々来ない。そんな。まさかこんな、ホーム・ア◯ーン的な事がトラストランドで起きるなんて。
そして再びすすり泣きしてしまう子供。
もう、手段なんて見つからない。どうしたものか…。解決の糸口を見失っていた私に、一人の救世主が現れた。
これは後の第3章まで言えることですが、『このマジックの種は夢の中で』は裏物語の『マジックの種は夢の中で in 僕の一日日記』と二次創作で進めて行くつもりです。
第3章を投稿後、次の投稿の時に裏物語の『プロローグ〜年パス』を投稿させて頂こうと思ってます。
宜しければ是非、そちらも併せてお読みください!