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 アスファロットが魔力と引き換えに授かったその才能と知識と技術は、魔法が使えない、という逆境の中で、アスファロットの異常なまでの信念によって磨き抜かれ、魔法の概念そのものに一石を投じるような『魔力がないものでも魔法のような力が扱えるようになる』魔法具の発明に成功する、という高みまで彼を成長させたのである。

 森はアスファロットの発明した魔道具によって歴史上類を見ないほどの繁栄を享受し、北の王国と呼ばれる人間の王国との正式な交流が許されるまでに魔法使いたちの地位は向上した。

 森の長老アサツユは大魔法使いを引退し、自分の弟子でもある天才魔法使い、アスファロットにその地位を譲った。

 魔法が使えない大魔法使いが誕生した瞬間である。このとき、アスファロットはまさに森の英雄だった。

 その英雄が大魔法使いに就任して、初めてくだした命令。

 それは自分が生まれ育った森を、空を、すべて焼き尽くすことだった……。

 アスファロットの純粋で繊細な心は、自分を差別し、軽蔑する、魔法使いたちの眼差しによって、擦り切れて、跡形も無くなってしまっていたのである。

 そのことに気がついている者は誰もいなかった。

 彼の両親も、魔法の先生である森の長老アサツユも、……そして、アスファロットの弟子であったソマリお兄ちゃんも、まったく気がついていなかったのだ……。

 アスファロットは自分と同じく森の魔法使いたちから差別の眼差しを受けて、奴隷のように黄金の民にこき使われていた銀の民に目をつけ、彼らとともに蜂起し、森を焼き、空を焼き、人間の王国を焼き、世界を焼いた。

 それからいくつもの戦いが起こり、ソマリお兄ちゃんが新たな森の英雄としてアスファロットを倒したときには、世界は燃え尽きて、大地も、空も、そのすべてが灰に包まれてしまっていた。

 森の長老アサツユも、当時の指導層だった大多数の黄金の民も、アスファロットに協力して蜂起した銀の民も、アスファロットも両親も、ソマリお兄ちゃんの両親も、マグお姉ちゃんの両親も……、そしてメテオラの両親も、みんな、みんなこのときに僕たちとは違う世界に旅立ってしまったのだ。

 すべては根元の海に還っていった。

 古き森を支えていた大樹である魔法樹も、このとき完全に燃え尽きてしまった。

 生き残った魔法使いはソマリお兄ちゃんを新しい大魔法使いとして決死の覚悟で空渡りを決行し、汚れた北の土地を捨てて、この南の名もなき森にやってきた。

 そして現在の新しき魔法の森の歴史へとつながるのである。

 ……以上が、古き魔法の森に伝わる大魔法使いアスファロットの伝説の概要である。

 では、それを踏まえて、これよりアスファロットの生みだした魔法具についての説明を……。

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