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マリンは長い黒髪と黒い瞳をしている、とてもおとなしそうな女の子だった。デボラとアビーが一緒の教室じゃさぞかし苦労をしているのだろう。アネットと知り合いみたいだけど……、仲のいい友達なのかな?
と、メテオラはそんなことを考えながら、内緒話をしているアネットとマリンの姿を見つめていた。
それから話を聞き終えたアネットがメテオラたちのところまで戻ってきた。マリンはドアのところにいて、こっちの様子をちらちらと遠目に伺っている。
「どうかしたの?」
ニコラスがアネットに聞く。
「えっと、あの子はマリンちゃんっていう私のお友達なんですけど、マリンちゃんが言うことには、どうやら午後の授業は、全教室自習になるみたいなんですよ」
「え? そうなんですか?」
アネットの言葉にメテオラはとても驚いた。魔法学校で授業が自習になることはそれほど珍しいことではないのだけど、全教室が一斉に自習ということは、さすがに今まで一度も聞いたことがない話だったからだ。
「どういうことなの?」ニコラスが聞く。
「理由はわからないんですけど、そういう連絡が太陽組から月組に回ってきたそうです。それで月組のマリンちゃんが私たちの星組の教室にその連絡を伝えに来てくれたということらしいです」アネットはメテオラとニコラスの顔を交互に見ながらそう説明をしてくれた。
「あの、アネットさん。なんでマリンさんはずっとドアのところに隠れているんですか?」
メテオラはマリンのほうを見ながらアネットにそう聞いた。それからニコラスとアネットもマリンに注目する。メテオラたちの視線を受けて、マリンは驚いてその体をドアの後ろに全部隠してしまう。マリンが隠し損なったとんがり帽子の先っぽだけが、そこにマリンがいることを証明していた。
「マリンちゃんは恥ずかしがり屋さんなんです。だからあんまりじろじろ見たりしちゃ、だめですよ」
アネットがメテオラたちにそう言った。




