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 しかし、そんなメテオラを尻目にニコラスとアネットは何事もなかったかのように、扇型のテーブルの一番前の席に腰を下ろしてメテオラを見る。

「どうかしたの、メテオラくん?」

 メテオラはニコラスの声を聞いて、歩き出す。ニコラスとアネットはメテオラのために真ん中の席を空けてくれていたので、メテオラはニコラスに一度席を立ってもらって、その席まで移動した。

「さっきの魔法使いさんは、どこにいってしまったんでしょう?」メテオラは授業の用意をしているニコラスとアネットにそう聞いてみた。

「さっきの魔法使いさんって?」

 ニコラスはきょとんとした表情でメテオラに言う。反対側にいるアネットも、首をひねってニコラスと同じような表情をしていた。

「黒くて長い髪をした背の高い男性の魔法使いさんのことです。あの辺りに立っていました」

 メテオラはそう言って窓際のあたりを指差した。

「そんな人、いませんでしたよ」とアネットが言う。ニコラスを見ると、うんうんと頷いて「いなかった」とアネットと同じ意見を言った。

「おかしいですね……。確かにいたんですけど……」

 メテオラは首をかしげる。

「あ、わかった。メテオラくん。もしかしてあれを魔法使いと勘違いしたんじゃないの?」

 ニコラスがそう言いながら指差しているあれとは大きな窓にかかっている黒くて長いカーテンのことだった。誰かが窓を閉め忘れたのか、確かにメテオラが魔法使いさんを見た場所の近くにある窓だけ少し隙間が空いていて、そこから吹き込む風に黒いカーテンがかすかに揺れている。

 教室の中は薄暗く、ぱっと見ただけでは、それを確かに背の高い魔法使いさんだと勘違いしてもおかしくないような気もする。

 ……でも、じゃあ、あのとき、僕が聞いた声はなんだったんだろう? あれも僕の勘違いだったということなのだろうか? 

「きっと試験勉強で疲れてたんですよ。ふふ。もしかしたら寝ぼけていたのかもしれません。メテオラくん、いつも寝癖がついてますもんね」

 帽子を取ったメテオラの頭には確かに寝癖が付いていた。

 アネットはそれを見て笑うと、席を立って隙間のある窓を閉め、それからカーテンの位置を調整して再び自分の席に着席した。

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