39 空渡りの日
空渡りの日
大きな月がある。
薄暗い夜がある。
広大な空がある。
そんな空の中を魔法使いたちが集団となって飛んで行く。
年齢の様々な魔法使いたちが寄り集まって、まるで巨大な一匹の魚のように、空の中を優雅に泳いでいる。
魔法使いたちの数は百に近い。
これほどの数の魔法使いたちが一斉に空を飛ぶことは、本当に稀なことであった。
ときどき、空の中にぱちぱちという高速のオレンジ色の光の点滅があらわれる。
それは魔法使いたちの言葉の代わり。
オイルランプの明かりをつけたり消したりすることで、お互いの意思の疎通をしているのだ。
時折、とても強い風が吹いた。
その度に群れは大きく揺さぶられ、光は増して、やがて夜の闇の中に沈黙した。
次第に雨が降り出した。
とても強い雨だ。
遠くの暗闇に嵐の影が見えた。魔法使いたちは隊列を組み直して、その嵐の中を直進した。
雷がなって、魔法使いたちの悲鳴があがった。
それでも飛行術に長けた数人の魔法使いの活躍によって、集団はばらばらに崩れたりすることはなかった。
少しだけ集団の先を飛んでいる見張り役の魔法使いが集団の先頭を飛ぶ、大魔法使いのところに戻ってきた。
大魔法使いはその魔法使いから報告を受けると、集団の飛ぶ空の高度をさらに上昇させた。




