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二人は混雑している食堂の隅っこに空いている席をようやく見つけて、そこに腰を下ろして食事をした。
森の食堂の食事は、いつものようにとても美味しかった。
食器を返却口に返すと、厨房にいる魔法使いさんにごちそうさまを言ってから、二人は森の食堂をあとにした。
二人は魔法学校一階の長い中央通路を通って、朝来た道を逆方向に歩いて、魔法学校の中庭に出た。
それから中庭を通って、年老いた門を抜けて、いつもの魔法の森の中に移動する。
そこまでは、普段とまったく同じ日常の風景だった。
でも、それからしばらくの間、森の小道を歩いて行くと、いつもとは違う変化が訪れた。メテオラたちの歩く森の小道の先に、空からなにかがすごいスピードで落っこちてきたのだ。
メテオラとニコラスは驚いて動きを止める。
落下の衝撃で起こった砂ぼこりが視界を遮っていたが、それからその砂ぼこりを吹き飛ばすように不自然に強い風が一陣、メテオラたちの周囲を吹き抜けた。
再び二人が目を開けて視界を取り戻すと、そこには一人の魔法使いの姿があった。それはどこからどう見てもマグお姉ちゃんその人だった。
「マ、マグお姉ちゃん?」とメテオラはつぶやく。
「ごめんなさい、メテオラ、ニコラスくん。今、ようやく魔法学校の先生としての仕事が終わったところなの」とマグお姉ちゃんは言った。
「それで今から、二人を家に私が送ってあげる」
そう言ってマグお姉ちゃんは嬉しそうな顔で笑った。
「え? でも……」
と言ってメテオラがそれを断る暇もなかった。
マグお姉ちゃんはメテオラとニコラスの体を抱えるように持つと、二人を杖の前後に乗せて、そのままものすごいスピードで、真上に向かって空を飛んだ。




