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大きな正門をくぐり魔法学校の中に入ると、その空間には外とは違いとても冷たい空気が充満していた。高い天井には大きなシャンデリアがありその淡い光が薄暗い構内をぼんやりと月明かりのように照らし出している。本館の中は天井も壁も床も真っ黒だった。
それは魔法学校が黒色をした不思議な『黒曜石』と呼ばれている石で造られていたからだった。黒曜石は魔法使いの知っている石の中でもっとも硬い石であり、この建物を作った名前を知らない先人たちは、きっとその硬さをを理由に黒曜石を建築素材として選んだのだろう。
黒曜石と魔法使いの関係はまだとても新しくて『古き森の時代』には存在せずに、この『新しき森』にやってきて初めて目にしたものだった。しかも魔法の森の北西の山に作られた鉱山でしか発掘することができないとても希少な石でもあり、今では黒曜石は数ある魔法使いの研究の中でも、もっとも大切なものの一つとして数えられていた。
そんな薄暗い夜のような魔法学校の一階には正門からまっすぐ伸びる大きな中央通路があって、そこには魔法学校の生徒たちがたくさんいる。その魔法使いたちはみな、ざわざわとした雑音とともにそれぞれの教室に向けて足早に移動をしている最中だった。
メテオラたちはそんな生徒たちの間をかき分けて中央通路を通り魔法学校の中心にある吹き抜け構造部分までやってきた。そこにはとても長いぐるぐると蛇のようにとぐろを巻いた螺旋階段があり、それは魔法学校の最上階まで続いていた。
メテオラたちはそんな螺旋階段を上って六階までたどり着くと、そこから円環状の通路を歩いて自分たちの教室まで移動した。その教室の表札には『特別教室』の文字があり、その隣には『星のマーク』が描かれていた。
特別教室、星組。
それはマグお姉ちゃんから事前に聞かされていた通りの、間違いのないメテオラたちのためだけに用意された新しい教室だった。
メテオラとニコラスはそのドアの前で一度お互いの顔を見合わせてから覚悟を決めて頷きあうと、それからとんとんとドアをノックして、教室の中に入っていった。




