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184 大きいね。世界ってさ。

 大きいね。世界ってさ。


 時間が過ぎるのって、なんだかあっという間ですね。


「ほぁ~。……よく寝ました」

 十六歳になったメテオラは長老の木のてっぺんで居眠りをしていた。

 メテオラはその眠りの中で、ずいぶんと懐かしい夢を見ていた。自分が、もっと小さくて、もっと無邪気だったころの夢。

 ……それは今のメテオラが、昔のメテオラを思い出して、自分のあるべき原点を探るような、そんな不思議な夢だった。

 目覚めたメテオラは長老の木に触って、なんとなくその大きさを確かめてみる。

 背も伸びて、長身になったメテオラだったけど、それでも長老の木の大きさは以前とあんまり変わらなかった。

「……うーん」

 と言ってメテオラが寝起きの背伸びをしているとき「メテオラくん!」と空から声をかけられた。

 マリンの声だ。

 声のしたほうをみると、そこには魔法の杖に乗って空を飛んでいる、メテオラと同じく十六歳になったマリンがいた。

「やあ、マリンさん。どうかしたんですか?」メテオラは言う。

 長い黒髪の夏の風の中に泳がせている成長したマリンは、本当に美しかった。

「これからみんなで同窓会をやらないかって話になっているんです。言い出したのはマシューくんで……、ほら、メテオラくん。あの魔法学校の幽霊騒ぎのときの、私たちが見習い魔法使い卒業試験を受けたときの同窓会ですよ。なんでも急に、そんなことをやりたい気持ちになったっていうんです。相変わらず変わってますよね、マシューくんは」

 そこまで言って、マリンはふふっと風の中で笑った。

「ええ。もちろん覚えてますよ。今もちょうど、そのころの夢を見ていたところです」メテオラは言う。

 メテオラの傍らにはべべさんが書いた『魔法樹の輝きの中で』というタイトルの魔法書がある。その魔法書を読みながら、ついうとうとと居眠りをしてしまったから、そんな懐かしい夢を見てしまったのかもしれない。

 メテオラは自分の魔法の杖の上に両足を乗せると、そのままの姿勢で器用に空の中にふわりと浮き上がった。

「場所はどこですか?」メテオラが聞く。

「魔法学校の八階の会議室です」マリンが言う。

「昔と同じ場所ですね」

 メテオラがそう言うと、マリンは「そうですね」と言って嬉しそうに微笑んだ。

「マリンさん。魔法学校まで競争しましょうか?」とメテオラが言う。

「競争ですか? ……いいですよ! でも勝負なら絶対にメテオラくんには負けません!」

 魔法の杖の上で、すでにスタートダッシュの姿勢に入っているマリンが言う。

 そんな負けん気の強いマリンの顔を見て、メテオラは微笑む。

「メテオラ! どこにいるの?」

 下からマグお姉ちゃんの声が聞こえる。

「今からちょっと出かけてきます! 夜には帰ってきますよ!」とメテオラはマグお姉ちゃんに大声で返事をしてから、空の中を高速で飛び始める。

 メテオラの速度は、風よりも速かった。

「行ってきます!」

 そんなメテオラのあとを、マグお姉ちゃんにそう言ったあとで、マリンが高速で追いかけて行った。

 マグお姉ちゃんはそんな二人の飛び去っていった夏の青色の空を見つめて、「まったくもう。いくつになっても、相変わらず子供のままなんだから……」と、なぜかちょっとだけ嬉しそうな声で、三歳になる一人娘の眠っている女の子を抱っこしながら、そう言った。


 メテオラの魔法ノート


(……古いノートの隅っこのほうにある記述)


 空を飛ぶために大切なこと


 目の良さ。

 バランス感覚。

 浮力の魔法と、勇気。

 ……そして、出力。


 君は愛されているよ。だから、大丈夫。(燃える森の中で、赤ちゃんのメテオラを抱っこしながら)


 小さな魔法使いメテオラととっても怖い幽霊さんと大好きなマグお姉ちゃん 終わり

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