18
真っ黒なとんがり帽子からちょろっとだけはみ出ているその髪は『黄金色』に輝いていて、まん丸の形をした二つの瞳はとても澄んだ『青色』をしていた。
この特徴を持つ魔法使いは魔法の森の中に数人しか存在していない。
それは魔法使いの中でも特に神聖な一族とされる『黄金の民』と呼ばれる血脈のみが持つことを宿命づけられた特別な血系の証明だった。
メテオラはその生徒の姿を確認してその場に立ち止まると、大きく手を振って、聞こえているという合図をその小柄な生徒に向けて送った。その生徒は足を止めないままメテオラに大きく手を振り返しながらやがてメテオラの目の前までたどり着くと、そこで肩で息をしながら下を向いて荒れた呼吸を少しの間整えていた。
それが落ち着くとその生徒は顔を上げて、メテオラに向かってにっこりと晴れた青空のように爽やかな笑顔で笑いかけた。
「おはよう、メテオラくん。空を飛んでいく姿がちらっと見えたから、思わず走って追いかけてきちゃったよ」
その生徒の正体はメテオラの一番の友達であり、魔法学校の同級生でもあるニコラスだった。二人は幼いころからの友達で、いつも二人で一緒に森の中を遊びまわっているという大の仲良しの関係だった。
メテオラとニコラスはいつも一緒に森の小道を歩いて魔法学校まで登校している。なぜならニコラスもメテオラと同じように、空が飛べない落ちこぼれ魔法使いだったからだ。
それに加えてメテオラはマグお姉ちゃんという天才魔法使いが保護者なのに、そしてニコラスは魔法使いのエリートの家系である黄金の民であったのに、二人は同じように空を飛ぶことができない落ちこぼれだったというよく似た境遇を持っていた。それが二人の仲をより深いものにしてくれた。
二人は魔法学校で毎日ずっと一緒に行動していたし、それは登下校のときも同じだった。
メテオラとニコラスは森の小道の途中にある大きな岩の分かれ道のところで合流して、魔法学校まで一緒に登校しようと約束しているのだけど、今日はその約束の場所をすっ飛ばしてきてしまったので、どこかでニコラスのことを待とうとメテオラは考えていた。だけどどうやらニコラスのほうが先にメテオラを見つけてくれたようだった。




