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 しかしメテオラにはなんの力もない。

 一人じゃ空も飛べないし、飛べたとしても暴走するし、勉強は好きだけど自分でなにも生み出したこともないし、本も好きだけど読んでばかりいて自分で書いてはいないし、運動神経はないし、おまけに体力も、それから勇気もない。

 メテオラにはなにもなかった。

 つまり、メテオラは無力なのだ。

 それはメテオラが子供だからではない。たとえばこの場にいたのが、メテオラではなくて天才魔法使い、マシューであれば、きっと、少なくともメテオラよりも良い知恵を出しただろうし、それはマシューでなくても、ニコラスなら医学の知識で、アネットならお姫さまとしての覚悟で、デボラならトラップで、アビーなら飛行術で、コロナなら魔法具の知識で、そしてシャルロットならその芯のある心と優しさで、アスファロットを倒すとまでは行かなくても、モリー先生の手助けをできたはずだった。

 でも、メテオラにはなにもできない。

 なにもできない自分がこんなにも歯がゆいと感じたことは、メテオラは生まれてから今までの九年間の間で初めてのことだった。

 こんなことをメテオラが考えている間も、モリー先生はぼろぼろになりながら、アスファロットとの戦闘を続けていた。

 しかも、モリー先生の動きにはメテオラをかばっているような節が見受けられた。

 メテオラの目には涙が溜まっていた。

 自分が空が飛べない落ちこぼれ魔法使いであることは自分自身の責任だと思っていた。でも自分が落ちこぼれであることがこうして、誰かの足を引っ張ることになるとは、メテオラは想像もしていなかったのだ。

 力がなければ、誰かを守れない。

 無力であることは、無責任であるということなのか?

 力が欲しい。

 ……誰かを守れる、モリー先生を守れる力が欲しいとメテオラは強く、本当に強く思った。

 そのとき、メテオラの心の中にまた幻聴が聞こえてきた。でも、それはモリー先生の声じゃない。聞いたことのない、女の人の声だ。

 その声は『……箱』とメテオラに囁いた。

「箱?」

 そのメテオラのつぶやきにアスファロットが反応した。

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