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164 モリー

 モリー


 モリー先生の持っているその魔法の杖には青白い光が宿っていた。その杖の先端に膨大な魔力が蓄えられていることは、見習い魔法使いであるメテオラの目にも明らかだった。

「……いつか、こういうひがくると、おもっていました。このつえにはわたしのぜんまほうりょくにくわえてせんにちのつきのまりょくがたくわえられています。

 いまのあなたなら、このつえのちからにたえることはできないはずです。……さようなら。アスファロット。

 一族をすくおうとしてくれたあなたにかんしゃをしていないわけではないのですが、もりとせかいをやいたあなたをわたしはゆるすことができません。

 あなたのふくしゅうにちからをかしたあわれな銀の民のいちぞくのいきのこりとして、……一族の罪をすこしでもつぐなうために、このモリーがアスファロット、あなたをうちます!」

 モリー先生はアスファロットを睨みつける。

 視力を取り戻したアスファロットは目を開けて、そんなモリー先生の顔を笑って見返している。

 次の瞬間、モリー先生が床を蹴って駆け出した。

 本来、あれだけの魔法力があれば、杖の先から青白い光の魔力を稲妻のようにして放出することも、可能だとメテオラは推測した。

 でも、モリー先生はそんな風に遠距離からアスファロットに攻撃をしないで、自分の体ごとアスファロットに向かって突進して行った。

 それはそうして、杖を直接アスファロットにつきたてることで、魔力をより多く、アスファロットの体の中に叩き込むということをしないと、アスファロットが倒せないとモリー先生が判断したのかもしれないし、もしかしたら、自分の手でアスファロットを倒したという感覚をモリー先生が求めていたのかもしれないし、アスファロットが消えてしまうときに、すこしでもアスファロットの近くに居たいとモリー先生が思ったのかもしれないし、あるいはアスファロットと銀の民の一族が犯した過去の罪を、たった一人生き残ったモリー先生がこれからも背負っていくという覚悟のせいなのかもしれなかった。

 とにかくモリー先生は怖い魔法使いであるアスファロットに突っ込んだ。

 迷いはない。

 きっと、この瞬間を、モリー先生は古き森をたった一人の銀の民の純血種としてい生き延びてから、待ち望んできたのだろう……。

 迷いのないモリー先生の覚悟を決めた目を見て、メテオラはそのモリー先生の突き刺さるような思いを確かに感じ取っていた。

 それほど強烈に、モリー先生の思いをメテオラが感じることができたのは、あるいはメテオラの背後にある魔法樹の枝木に残った力のせいだったのかもしれない。

 魔法樹の力の一つには、魔法使いの心をつなげる力があることを、メテオラは魔法書で読んで知っていた。

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